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第二章   あちらとこちら


さて、いきなりでなんですが、

今日もあたしは夢の中。


実は夢の中であたしは、日本ではない西洋風の世界の中に住んでいる。

(誓って言おう! 絶対あたしの趣味じゃない!)


「こらー! ユーリ!! さぼんじゃねーぞー!!」

「は、はい……!!」


上役方の乗馬の世話もあたしの仕事。

いつも、訓練後の(うまや)は大忙し。

あたしもくるくる走り回ることになる。



はい。

あらためまして、こんにちは。

現在あたしの本体はお休み中なので、

本当は「こんばんは」が正しいのかも知れませんが。


こちらの世界は昼なので、一応「こんにちは」と言わせていただきます。


初めまして。あたしはユーリ。

ユーリ・コールターと言います――この世界では。

日本での本名は、またおいおい出てくると思うので、

今は、ユーリと覚えてやってくださいませ。


今、あたしが見ているこの世界は、間違いなく夢の中。

ですがこの夢、妙にディテールにこだわってらっしゃるみたいなので、

説明をさせていただこうかと思います。

少しの間、お付き合いください。


ここは、アランドア大陸の西に位置する、ソレニア国の首都シュロス。

中心にそびえるのは尖塔を頂くサン・シュロス城。

城というよりは王宮に近い感じ。

広大な敷地の中の、北西の城門横に配置されているのが第一騎士団。

石で造られた強固な隊舎の中、

あたしは騎士見習いとして一年ほど前から住み込んで暮らしている。


この国には、国を守る騎士団が全部で十二ある。

第一騎士団はその中でも別格。

他の騎士団と違って隊舎が王宮内にある事でもわかるように、

この隊は王の直轄であり、近衛も兼ねる精鋭だ。


あたしは本当に入ったばかりの新米だけど、

五十人余りからなる団員は、他の団なら団長クラスと囁かれる逸材ぞろい――

と、これは、朝昼晩のご飯を世話してくれるおばちゃん方からの情報だ。


そして、その精鋭の中でも凄いのが――


「ユーリ」

「だ、団長…!」

「隊に不安などはないか? 備品などに不備は?

 ここの馬は気性が荒いものが多い。

 くれぐれも、気を付けて事に当たれ」


そう言って微笑む人。

第一騎士団団長、アレクシーズ・ユノ・コルフィー。


これが、あたしの報われない初恋の相手、そのひと。


185センチはあろうかという長身に、日に透ける銀の髪。

吸い込まれそうな紫の瞳。

人間離れした端正な顔立ちには、女々しさなんて存在しない。

性格は清冽にして高潔。

この国の宰相を代々務めあげ、

王家との婚姻も一回や二回じゃありませんと豪語出来る、

国内一の血統を誇るコルフィー公爵家の嫡男。


先の王が、王太子の近習として登用しようと色々画策をしたらしいが、

その要請をやんわりと、しかしきっぱりとはね付けて、

国土を守る騎士として生きる事を選んだと言う硬骨漢。


剣の腕は言わずもがな、

十代で、もっとも重要と言われる第一騎士団の団長を拝命。

そして、現在に至る――


本当に、こんな出来過ぎ君がいるのかよって感じだけど。


兎にも角にも、

凄い美形でカッコ良くて、

初めて会ったその日に、

一目で惚れこんでしまったあたしに、決して罪は無い。


――無いと、思う。


「今は雑用ばかりだろうが、何事も全ては大事に繋がる。

 日々の鍛錬も怠るな」

「はい!」


笑みを少しだけ深めて告げられれば、もう良い子のお返事をしてしまう。

「お手!」って言われたら、してしまいそう…


本来なら雲の上、どころかもう一つ上の天上人。

ここに来なかったら、一生お目にかかる事もないはずだった。

有名人で名前だけは聞いた事があったとしても、

この世界にはテレビもラジオも無い。

情報は全て人を介して伝わっていく。


同じ国内とは言え、

東の隣国アシュラークとの国境近く、

辺境出身の一貧乏男爵家の息子風情が、

こんなに近くで、この人を見あげる事ができるなんて

今まで夢にも思っていなかった。


――いや、夢なんだけど。


「ユーリは、いくつだったか?」

「今年で十二であります。団長!」

「……そうか。これからが伸びる時期だ。楽しみにしている」

「は、はい!」


もう――もう!

あこがれの団長から声を掛けられて、

舞い上がっちゃう自分が押さえきれないじゃない!


「では、また」


励め――と、手を上げて踵を返す後姿も麗しい…



ずっと、ずーっと、見ていたい…



もう少し、もうすこし…



ずっと… ずっと………






ジリリリリリリリリリリリ!!!!!!


その時、無粋なベルがあたしの意識を切り裂いた。




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