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犬側の主張

 朝起きると思い出す。

(えっ、私って人間で言うと約40歳くらいなのに、こんなメイド服みたいなの着せられてるの!?)と……



 仲のいい初老の夫婦の家で飼われている私・リイは、トイプードルとウェスティのミックス犬で、自分で言うのもなんだが、賢い方だと思っている。


 だから、他の犬達や飼い主達が当たり前のようにしている行動に疑問を覚え、ふと文句などを言いたくなるのだ。


 ───────


 そして今日の朝、飼い主が起床するのと同じタイミングで、隣に寝ていた私も起床。


「リイちゃんおはようー」


 飼い主であるパパの方が、猫なで声で私を撫でてくる。触るのはいいが、その雑に触るのやめろよ!と毎回思うのだが、嬉しくてつい尻尾を振ってしまう。



 そして日課である早朝の散歩。朝はパパが担当だ。

 玄関前に大きな鏡があるのだが、そこで自分を見て絶望する。


 私の年齢は6歳。しかし、人間で言うと約40歳……簡単に言うと"ババア"なのである。


 そんなババアが黒のメイド服みたいなのを着て外に出る……犬だから許されるが、これを人間に置き換えて考えてみてほしい。とんでもない事だろう。



 そんな中、派手な色したハーネスを装着させられ散歩へ。



 ◇


 散歩は楽しい……最初は。


 ただ、毎日同じ道を歩かされる身にもなって欲しい。


 確かに他の奴らの匂いを上書きするため、マーキング作業を実施するという大事な行為があるとはいえ、なーんにもない道をただ歩くだけなど楽しい訳がない。


 こんなのは散歩ではない、これはもう"徘徊"だ。



 そんな事を考えながら、ハゲた飼い主と"徘徊"していると、向こうから仲のいい黒い柴犬のオス・コタちゃんがやってきた。


 まずは匂いを嗅ぎあって挨拶をしていると、飼い主達も挨拶して、クソつまらん会話を始めている。


 それに引き換え、私達は中身のある会話をする。

 犬達同士でしか伝わらない、一種のテレパシーみたいなモノで会話するのだ。



『うぃ~っす、朝から暑いっすね~』


 私が彼を嗅ぎながら、テレパシーでも挨拶する。


『うっす。まじそれな、朝あっつー思って起きてな。んで、飼い主が「散歩行こー」言うから、仕方なく散歩行くんだよなー』


『あーわかります。えっ、この気温で散歩行くんすか!?みたいな時ありますよね~。んで拒否すると、飼い主が私達の方が悪い!みたいに見てくるんすよね!』


『それな、まじそれな。お前らと体温違うんだぞ!って感じな……ってか、話変わるけどお前の服装wババアが何着とるねんw』


『やめてくださいよ~!これ、飼い主が安売りしてる奴買ってきて、それ無理やり着せて「かわいい~」とか言ってくるんすよ!?最悪っすよ~』



 そんな中身のある会話をして、彼と別れて散歩が再開されるのであった。



 ◇


 散歩の後はママが起きており、朝ごはんを作ってくれているのでそれを食す。


 最近、何かの数値が高いとかで、それまではササミなどドッグフードに乗せられていたが、それも今はブロッコリーが乗せられるだけの飯になってしまった。


 ……まぁ、美味しいから食べるのだが……



 飯を食った後はお腹が空く。まだ食べたくて、飼い主をジッと見つめる……


「何?遊んで欲しいの?」


 違う!テーブルの上にある"おやつ"が欲しいのだ!



 このババアは何もわかってはいない……犬の気持ちは何でもわかってますよ!みたいな、したり顔に腹が立つし、今はおもちゃで遊ぶ気では……


「よーし、とってこーい!」


 ロープのようなおもちゃを飼い主が投げると、私はそれを元気良く追って、咥えて戻ってきてしまう。


 楽しい……!色々考えていても、結局は遊んでしまうのだ。



 そして、ひとしきり遊んだ後は昼寝。

 何かを忘れているような気がするがいいか……



 ◇


 日も落ちた頃、外は涼しくなったので夜の散歩へ。夜はママが散歩へ連れていってくれる。


 しばらくすると、向こうから最近知り合ったメスのダックス・レナちゃんが散歩していたので挨拶する。



 飼い主達も顔を合わせると「最近は米が~」とか、「近所の誰々が~」など、この会話が長いし中身がないのだ。


 パパはすぐ話を終わらせてくれるのに、女と来たら……そんな事を考えながら、私達は中身のある会話をするのだった。



『こんばんは。夜でも暑いですわね』


 レナちゃんが私の匂いを嗅いで挨拶してきた。


『そうですねー。日落ちてこれとか……ダックスって体と地面近いからヤバくないっすか?』


『凄いですわよ。それに私、毛の色が黒ですから地獄ですわ』


『うわー、クリーム色で良かったー!朝、コタさんに会いましたけど、彼も黒ですからねー。あ、そういえば、最近あの子見ました?あの白の……』


『ああ、白い柴のマサさんですか?あの方引っ越しましたよ』


『ええー!マジですか!?あーでも、飼い主金持ちそうでしたからねー。羨ましー……あー、肉食いてー』


『最近はブロッコリーばかりらしいですわね。私は最近、ご飯に砂肝を混ぜてもらってますわ』


『うわー、最高ですね。いいなー』


『そちらは大変ですわねー……そういえば、話変わりますけど、あなたの服装w』


『やめてくださいよ~!これ、飼い主が安売りしてる奴買ってきて、それ無理やり着せて「かわいい~」とか言ってくるんすよ!?最悪っすよ~』


 まぁ、私達も飼い主と同じくらい長話してしまうのだが……



 ◇


 散歩が終わり、飼い主と共に就寝。そして翌日……


「おはようリイちゃん!お着替えしましょうねー」


 朝からテンションの高いママが、着替えとして出してきた服は、ピンク色でデカデカと【Love!】と書かれている服であった。


 それを見て絶望する。

(今日も散歩中いじられる!)と……


[完]

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― 新着の感想 ―
中身がある会話って言いながら雑談してるのすこw ワンちゃんにもワンちゃんたちの世界があるのよねぇ… こんな会話してたら面白いฅ•ω•ฅ
犬に服を着せるのはよくないですなぁ 体温調節苦手な犬種ならいざ知らず。 やはり、人も犬も、本質的な部分に寄り添わないとですな!
確かに犬の年齢を考えるとハデハデな服はキツいかもですね笑 オウカさんがほんわかしたお話を書いているイメージがなかったのですが、寝る前にニコニコさせていただきました。ありがとうございました。
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