結界師 一
※この物語はフィクションです。実在の人物や団体、寺社仏閣などとは関係ありません。
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「わかりました。では早急に人選を進め、明日太宰府市へ向かいます。このあと会議がありますので、本日はこれで失礼します。お昼ごちそうさまでした」
私が立ち上がると、咲耶がスッと姿を消す。
浄階が、「よろしくお願いします」と真剣な表情で私を見つめる。
それに対して頷いてから、私は部屋を出た。
巫女の案内で、もう見慣れた関係者専用駐車場への道を進む。
車へと乗り込み、統括鬼霊対策室へと戻る。
帰路につく中、私はスマホを取り出して天鳳の爺さんに電話をかけた。
「ん? どうした静夜殿、会議は一七時やろ? 緊急か?」
爺さんに、結界師について聞いてみる。
本題は白井さんやけど、爺さん位の人間なら、ある程度の情報は持っているだろう。
私はなまじ知識がないのだ、また資料室へ行けと怒られそうだが、仕方がない。
「爺さん、結界師について詳しいですか? 優秀な結界師が必要になりそうなんですけど」
「結界師? あぁ、太宰府の結界の件か。そうやな、やっぱり関西で結界師いうたら、帝の御所の守護結界を管理してた、白井家、西院家、東陣家の三氏家やろうな」
ほうほう。結界師って珍しいと思っていたけど、結構すぐに手配できるかもしれない。
白井さんはもとより、西院家と東陣家か。聞いたことがある程度しか知らないな。
「結界師って、すごい珍しい存在だと思っていたんですけど、案外そうでもないんですか?」
「いや、普通に珍しくて稀有な存在や。もう東陣家は、跡継ぎの問題で血が途絶える一歩手前やしな。白井と西院はまだまだ健在やけど、人数は正直かなり少ない。それに西院家は大社直属の近衛家やから、対策室にはおらへんしな」
まじか。やっぱりかなり貴重な存在やねんな結界師。
そうなると、やっぱり頼れるのは白井さんぐらいになってくるのか。
「となると、今対策室に属する結界師って白井家だけなんですか?」
「まぁ、関西ではそうなるな。私から白井に声掛けとくから、帰りにこっち寄ってくれ」
「わかりました、ではのちほど」とスマホの通話を切る。
話を聞いていたのか、隣に座る燐が口を開いた。
「結界師ですか、確かに今ではものすごく貴重な存在ですね。白井さんに同行を指示されるのですか? 白井さん、今五木補佐の代わりに関西方面鬼霊対策室の補佐代理をしているので忙しそうですが、大丈夫でしょうか?」
──あ、そうや忘れとった。白井さん今補佐代理やん。
「そのつもりではいたのですが、なかなか難しそうですね。うーん、誰か他にいい人いないですかね」
私が、首を捻り唸っていると、燐が再び口を開いた。
「あっ、それなら──霞ちゃんがいますよっ!」
「霞ちゃん?」
◇◆◇◆
地下ロータリーのエントランスへ到着し車を降りる。
私は関西方面鬼霊対策室に寄ってから戻る旨を伝え、燐には先に戻ってもらう。
廊下を歩き、普段は向かうことの少ない関西方面鬼霊対策室へ向かった。
対策室に入ると、それに気づいた爺さんと白井さんが立ち上がり、会議室へと移動する。
私もそれに続き、会議室に入ると席に腰を下ろした。
「白井さん、急にお呼び立てしてすみません。こうやってお話するのも久しぶりですね。発足式以来ですかね」
「いえいえとんでもない。お久しぶりですね統括室長。まだあなたをお迎えにあがったあの時から、そこまで日は経ってないのに、随分風格が出てきましたね」
ニコニコとした白井さんが、私を持ち上げてくれるが、それを「いやいや」と手と首を横に振って謙遜する。
ある程度の内容は、天鳳の爺さんから聞いているのか、白井さんは早速本題の話を切り出した。
「統括室長、早速ですが話を進めましょう。現在、九州へ同行できる結界師をお探しとのことですが、間違いありませんか?」
ニコニコしていた白井さんの表情が真剣な表情に変わり、指を組んで、質問してくる。
なんだか、貫禄に押されて、私が面接を受けているような気分になってきた。
「はい、そのとおりです。その為天鳳室長に相談したところ、現在対策室に属している結界師は白井家だけだとか」
私の言葉に、白井さんは頷いて答えた。
「ええ、そうですね。統括室長、あなたの指示とあらば、もちろん私は喜んでご同行させて頂きます。ですが、私は現在五木殿に代わって補佐代理を任じられています。人事変更も可能だとは思いますが、一度私の提案を聞いていただけないでしょうか?」
白井さんが真剣な表情のまま、提案を申し出た。
「もちろんです、是非聞かせてください」
「ありがとうございます。今連れてまいりますね」
──ん? 連れて来る?
そう言うと、白井さんが会議室から退室した。
すぐに彼は戻ってきたが、後ろに一人の女性を伴っていた。
濃紫色の長髪を、青いシュシュを使ってゆったりとしたサイドテールに纏めている。
年齢はかなり若く見える。十代後半でも全然通用しそうだ。
「さぁ、ご挨拶しなさい」
白井さんが隣に立つ女性に、声を掛ける。
「はい、父さん。統括室長、はじめまして。私、白井霞と申します。この度の対策室の再編成を機に、関西方面鬼霊対策室に配属されました。お会いできて光栄です。宜しくお願い致します」
霞と名乗った女性が、敬礼し自己紹介する。
おお、彼女が燐が言っていた白井さんの愛娘であり、跡継ぎの子か。
燐曰く、親譲りの相当な結界師の実力を持っているらしい。
「あなたが、白井霞さんですか。四輝院さんからお話は聞いていますよ。なんでも若いのに結界師として相当な実力者だとか。こちらこそよろしくお願いします。白井さんが二人いると呼びにくいですね。白井さん流名なんでしたっけ?」
「朧です」「霞で──」
親子が同時に答える。少し沈黙が流れたが、朧がニコニコした表情に戻り言葉を続けた。
「統括室長も霞をご存知でしたか。それは大変光栄です。では話が早いですね。我が娘を今回の九州遠征へ連れて行ってくれませんか? 結界師としての実力はまだまだ半人前ですが、きっとお役に立てると思います」
この度は、当作品をお読み頂きありがとうございます。花月夜と申します。
当作品は、初めての執筆作品となります。
当方執筆に関して、完全な素人な為、至らない点が数多くあると思います。
ですが、書き始めたからには、皆様に読んでよかったと思って頂けるような作品にして行きたいです。
これからも、随時更新して参りますので応援いただけると幸いです。
ありがとうございました。今後とも応援よろしくお願い致します。




