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太宰ノ祠

※この物語はフィクションです。実在の人物や団体、寺社仏閣などとは関係ありません。

もし、面白いと感じて頂ければ、ページ下部にある《投票!!》のクリックへのご協力お願いいたします。


   ●



 私は、食事を進めながら、延暦寺での出来事を報告した。

 最終的に逃がすことになってしまったところまで話す。

 すると、隣で咲耶がため息をついてジトリと私を睨んだ。


「はぁ、情けない。あなたはいつも締まりませんね。反省しなさい」

「面目ない……」


 素直に謝罪する。咲耶の言う通りだからだ。

 本当に情けなさすぎて、この歳にもなって泣きたくなった。


 ただ、相手が自分よりも、対応が何枚も上手だったのも事実だった。

 相手のホームに無策で飛び込んだとはいえ、もう少し結果は残したかった。


「まぁまぁ、姫様。逃がしたとはいえ、延暦寺から顕一学舎を追放できた訳ですから。結果はきっちりと残してくれたと思います。それに太宰府の件も顕一学舎の仕業だと確定した訳ですし、それだけでも十分な成果です」


 浄階がなだめるように、咲耶のもつおちょこに酌をして答える。

 咲耶はその言葉に、「宇野は甘すぎます」とツンっと視線を逸らした。


 その後、これからは問題が解決するまで、延暦寺との協力関係を継続する旨を伝えた。

 その一環として、すぐに情報を共有する為に、対策室から数名の通信士と通信技師を出向させる。

 そして、宿坊にも対策室専用として数部屋用意してくれるという、宗務総長の意思を浄階に報告した。


「わかりました。延暦寺さんも今はしがらみどうこう言ってられませんからね。妥当な判断でしょう。通信士等の人選はお任せしますが、現場の人員が足りなくなるようなことがないよう気をつけてください。こちらから数名お出ししても構いません」


「わかりました。検討させて頂きます」


 私の言葉に、浄階は静かに頷くと、ちびりと酒を口に含んだ。

 私も、茶をすすり一息ついて、隣に座る咲耶を見た。

 彼女は、変わらずちびりちびりと酒を煽っていた。


「しかし、東ノ六言、西ノ六言ですか。武田理人という人物は東ノ六言の一人であり、顕一学舎の研究主査と言っていたのですよね? となると、おそらくその六言という肩書をもつ人物は、プロジェクトリーダーという事になりますね。それぞれの方角に六名ずついるのであれば、計二十四名のプロジェクトリーダーが存在することになります。ですが、いささか数が多い気もするので、東と西のみ存在すると考えたほうが自然ですね」


 それでも、理人みたいな危険人物があと十一名もいるということになる。

 西ノ六言に属する李範鬼という人物も、容赦なく小室家を襲撃し、大勢の命を奪った。

 皆が皆、あの様な危険な思想を持っているのかどうかは不明だが、警戒するに越したことはない。


「太宰府の方は、なにか動きはありましたか?」

「いえ、現在大きな動きは見られないようです。防犯カメラの設置は完了しています」


 浄階は頷くと、咲耶を見た。視線に気づいた咲耶がおちょこを卓に置いた。

 意見を求められているとすぐに気づいた咲耶は、こほんと咳をついて答える。


「まずは、一度祠を確認する必要があります。小室家が壊滅して明らかに結界は弱まっているはずです。急ぎ結界を補強することを優先して動くべきでしょうね。ですから、九州の優秀な結界師を──」


「あら、それは姫様が直接出向いて、祠を確認して頂けるのですか? なんて心強い。是非お願いしますっ!」


「え?」咲耶が私を見る。

「え?」私が浄階を見る。

「え?」浄階が私を見た。


 しばらく空気が固まったが、咲耶が再度咳をひとつしてから口を開いた。


「……私は結界師を派遣しろと言いたかっただけなのですが、はぁ……まぁいいです。大宰府も久しいですからね。今回は宇野の顔を立ててあげても構いません。今回だけですからね」


 その言葉に浄階は笑顔になり、ニコニコと咲耶へお酌をしている。

 浄階に頼られてまんざらでもないのか、咲耶はドヤ顔で酒を煽っている。

 この人、咲耶の扱い方がうまいな。チョロ神になってるじゃねぇか。


 いつの間にか、私の意向は一切関係なく、九州行きの出張が決定した。

 まぁ祠の結界の補強は重要な事だから、無論反対するつもりもないし、素直に応じるつもりだ。

 だが、私を蔑ろにして話を進めるのは、どうかと思います。ミスしたあとだから?


「そういう事だから、静夜。明日は太宰府へ向かいます。伴うものを人選しておきなさい。結界師がいるならつれてきなさい」


 咲耶がそう言ってされに酒を煽っている。飲み過ぎちゃうか?

 てか、結界師ってそうそうおらへんで。俺が知ってる結界師って関西方面鬼霊対策室の白井さんくらいか。

 戻ったら天鳳の爺さんを通じて同行可能か聞いてみよう。


「ところで、その祠ってどこにあるんですか? 太宰府市内ということはわかりますが、まだ正確な場所教えてもらってないですよね? 最重要の機密事項ですから仕方がないのでしょうけど」


 私の言葉に、浄階は頷いて答えた。


「そうですね。静夜殿にはお伝えしておかなければなりませんね。あくまで同行者以外には口外しないようにお願いいします。私が封印した羅刹が眠る祠は──」


 私はその言葉に戦慄することとなった。聞かなければよかったと後悔した。



「現在の太宰府天満宮が建つ地が、羅刹を封印した祠になっています。亡き菅原道真の呪怨と共に──」



 第一章 完



この度は、当作品をお読み頂きありがとうございます。花月夜と申します。

当作品は、初めての執筆作品となります。

当方執筆に関して、完全な素人な為、至らない点が数多くあると思います。

ですが、書き始めたからには、皆様に読んでよかったと思って頂けるような作品にして行きたいです。

これからも、随時更新して参りますので応援いただけると幸いです。

ありがとうございました。今後とも応援よろしくお願い致します。


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