天台宗延暦寺 十六
※この物語はフィクションです。実在の人物や団体、寺社仏閣などとは関係ありません。
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「はははっ!! えらい動ける運転手やな。 これが今流行りの多様性ってやつやな。まぁ対人専用に用意された傭兵ってとこか? 宮本さん言うたっけ? 栄神静夜はどこにいるんや? もしかして彼も学ランなんか? 爆笑もんやでそれ」
最初にお堂から出てきた袈裟姿の僧が、愉快そうに声を掛けてきた。
私は、彼の質問には答えず、その場にいる僧達の特徴を記憶することに務めていた。
さらに顕一学舎の学員と見られる数名の男性が、お堂の裏口から出てきた。
袈裟姿の僧と、作務衣姿の僧が警戒するように、こちらを睨んだ。
「なんや無視かいな。けったいやなぁ。もうワイは逃げも隠れもせぇへんよ。しっかし思ってたより来るの早かったな。さすがは新生鬼霊対策室ってことなんやろな。素直に称賛するで、どうやって竜胆見つけたん?」
彼は懲りずに、さらに質問を投げかけてくるが、私は答えずに状況の把握に努めtいた。
既に、統括室長へは現在のGPS情報を送信してある。もう数分もすれば、こちらへ到着するだろう。
一人で全員を捕らえるのは難しいだろう。時間を稼ぐべきだろうか。
「逃げも隠れもしないとはどういう意味だ? このまま投降するということか?」
私の言葉に、彼は首を横に振った。
「あほなこと言いな。ちゃんとサヨナラの挨拶して、ここ延暦寺を去るだけや。もう少ししたら栄神静夜くんねやろ? ついさっき対祓い屋の結界にも反応があったからな。だから今は待ってるんやで? でもまぁ、もうお前らは先に学舎へ帰り、いつもの場所で集合や」
彼がそういうと、僧の姿をした学員たちが、「了解」と返事をして、各々に散らばった。
四方に散らばり、追うことができない。彼らの背中を目で追った。
「取り乱さんあたりさすがやな。相当場数を踏んでるやろ。体格もええし、もしかして元陸自レンジャーとか?」
彼の観察眼の鋭さに、思わず動揺してしまいそうになるが、決して表には出さない。
「まぁそれはどうでもええわ。竜胆、お前はどうするんや? 正学員ではないとはいえ、自分は優秀な研究者や。ワイはお前を認めてる。これからも顕一学舎はお前を歓迎するで。ただ、もう祓い屋への復讐が済んだと考えているんなら、素直に罪を償うのも一つやと思う。最終的な判断は竜胆、お前が決めろ」
「……厳生……」
厳生と呼ばれた男に、これからどうするか尋ねられた竜胆は、俯き悩んでいるようだった。
すると、厳生が少し離れた山道に目を向けた。
「来たか」
私も、厳生と同じ方向に目を向ける。
そこには一人の老僧を先頭に、早足でこちらへ向かってくる対策室の一同の姿が見えた。
厳生と竜胆を挟むように、我々と顕一学舎の学員が対峙した。
「竜胆……。それに厳生まで……、まさかあなたが、顕一学舎の学員なのですか?」
老僧が、震えながら二人を見ている。
「行澄様……申し訳ございません」
竜胆が、顔を崩して深く頭を下げた。
「行澄殿、お久しぶりでございます。はい、その通りです。私は顕一学舎の正学員であり、研究主査として研究活動に従事しております。今まで貴方様方を欺くこととなってしまい、誠に申し訳ございません。非常に残念ですが、どうやら今日が潮時のようです。行澄殿、今まで大変お世話にまりました。この御恩は決して忘れることはないでしょう」
厳生の口調が急に変わり、行澄に向けて手を合わせて丁寧に深く頭を下げる。
腐っても坊主なのだろうか。目上の僧に対しては、決して礼儀は欠かさないようだ。
「竜胆……。こちらへ来なさい。こちらへ来て罪を償いましょう。これ以上罪を重ねてはいけません。わかりますね?」
行澄の言葉に、涙を流す竜胆だが、決して動くことはなかった。
厳生と、行動をともにするつもりなのだろうか。
ただ、相手は二人だ、この人数なら二人共捕らえられる。
「竜胆……何故なのですか……」
行澄の悲しみ咽ぶ声が、林に響いた。
「はぁ~、ほな一段落ついたし、本題に入ろうか」
先程までの深々とした態度が一変し、再び横柄な関西弁に戻る。
「栄神静夜、はじめましてやな。ワイは顕一学舎、東ノ六言の一人、武田理人や」
この度は、当作品をお読み頂きありがとうございます。花月夜と申します。
当作品は、初めての執筆作品となります。
当方執筆に関して、完全な素人な為、至らない点が数多くあると思います。
ですが、書き始めたからには、皆様に読んでよかったと思って頂けるような作品にして行きたいです。
これからも、随時更新して参りますので応援いただけると幸いです。
ありがとうございました。今後とも応援よろしくお願い致します。




