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天台宗延暦寺 十五

※この物語はフィクションです。実在の人物や団体、寺社仏閣などとは関係ありません。

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「鬼霊対策室……」


 私の言葉に、厳生が頷いた。


「そや、以前までは警察組織内の特殊機関として動いていたけど、今後は改めて大社が主導となって、防衛省とかと連携を取って活動することになるらしい。まぁそうさせている原因を作ったのは、わいらやねんけどな。そして、もう一つ。栄神静夜が帰ってくる」


 警察機関の特殊機関だけでも大層だったのに、今度は防衛省との連携ですか。

 祓い屋風情が、贅沢な待遇ですね。でもまぁ自衛隊にできることなんて、限られるでしょうけど。

 ところで、栄神静夜とは誰なのでしょうか? 有名な祓い屋なのでしょうか?


「栄神静夜とは、どなたなのですか? 有名な祓い屋なのですか?」


 厳生は頷くと、お堂に隠してある酒瓶を取り出してグビッっと瓶を傾ける。

 相変わらずこの人は、酒をお堂に持ち込んで……。バレたらどうなると思っているのか。


「栄神静夜はな、二十七年前に一度失踪した平安時代から続く祓い屋の一族や。式神を使役している珍しい一族でな。一度研究してみたいと思ってたんや。けれど栄神家がすごいのはそこじゃない」


「では、なにがすごいのですか?」


 私の言葉に、厳生は二カッと笑い答える。


「栄神家はな、神と契約してるんや」


 ──神との契約?


 あまりにも荒唐無稽な話に、只々呆れることしかできなかった。

 式神を扱うというのは、まだなんとなく理解はできるのですが、神は別です。

 そんなことができてしまえば、世界が激変してしまうでしょう。


「神との契約? 厳生ふざけているのですか? 神は悪魔とは違うのですよ?」


 私の若干苛立ちと怒りが混ざった声に、厳生は片手を振って「いやいや」と笑う。


「これはマジや。大社の資料室で確認したからな」

「!?」


 ──大社の資料室?


 あなた、そんなところにまで忍び込んでいるのですか?

 いくら研究の資料のためとはいえ、やることが一々桁外れですね。

 これが、顕一学舎の理念に染まったマッドサイエンティストですか。


「まぁ、それは今はどうでもええねん。それより竜胆には、自分が研究している崩玉術式で爆裂崩玉を作成してほしいねん。崩玉と詳細な設計書はこっちで用意するさかい」


 ──爆裂崩玉術式?


 確かにそれは、私が研究している術式の一つですが。

 再び、鬼が延暦寺を襲撃してきた場合に備えて研究していた術式です。

 ただ、崩玉というのはとても貴重な物なので、そうそう作れるものでもない。


「一体何に使用するつもりですか? それに崩玉なんてそう簡単に手に入るものではないでしょう?」


 私のそんな言葉に、厳生は再びニカッっと笑い酒を煽る。


「まぁ、新生鬼霊対策室への発足祝いってとこやろな。竜胆は崩玉を作成してくれるだけでええ。あとはこっちですべて手筈を整える。祓い屋ども、発足初日からてんてこまいになると思うで。あー楽しみやわぁ」


 明らかに良からぬことを考えているのは、一目瞭然だ。

 だが、祓い屋共に一泡吹かせることができるのならばと、悩んでしまう。

 私は、そのために術式の研究を始めたのだから。それを思い出し、決意を決める。


「わかりました。詳しい話を聞かせてください」



 ◆◇◆◇


「ふぅー」


 山道を進んで十数分ほど歩くと、見慣れたお堂が見えてきた。

 完全に暗くなる前に到着したかったので、少し急いだため、息が上がる。

 お堂の裏口に回ると、同じ顕一学舎の準学員である若い僧が立って警戒していた。


「竜胆殿、お疲れ様です。厳生様はすでに中でお待ちですよ」

「ええ、あなたも警戒は怠らないようにね」


 そう声を掛けて、裏口からお堂の中に入ろうとした時だった。

 厳生が裏口から出てきた。袈裟姿の厳生は、私の横をすり抜けて、周りを見渡して声を上げた。


「対策室。おんねやろぉ? 出ておいでぇ。いくら霊相と気配を消そうとも、すでに竜胆のあとをつけているって情報は、他の学員から連絡が来てるんや。あと笑ってもうたけど、学ランってどういう趣味なんや?」


 そう声を上げる厳生の言葉に、顔がこわばるのがわかった。

 やはり、つけられていた? でも、霊相や気配は全く感じられなかった。

 あちらもプロであるということを、改めて認識させられる。


「落ち着き竜胆、情報では尾行してた相手はひとりや。それに予定よりは早いが、想定内や」


 それから数秒後、お堂から三十メートルほど離れた林から一人に男性が姿を現した。

 やはり、昼間に茶屋にお客として訪れた、学ラン姿の男性だった。

 栄神静夜と思われる眼鏡を掛けた男性の姿は見えない。


「おおやっと姿現したか。大した潜伏能力やな。まったくわからんかったわ。祓い屋専用の結界を張っていたんやけど、それにも全く反応が無かった。あんさん何者や? 自分祓い屋ちゃうやろ?」


 その言葉に、彼は私達の眼前の五メートルまで近づくと立ち止まり、口を開いた。



「私は、統括鬼霊対策室・室長専属運転手の宮本だ」




この度は、当作品をお読み頂きありがとうございます。花月夜と申します。

当作品は、初めての執筆作品となります。

当方執筆に関して、完全な素人な為、至らない点が数多くあると思います。

ですが、書き始めたからには、皆様に読んでよかったと思って頂けるような作品にして行きたいです。

これからも、随時更新して参りますので応援いただけると幸いです。

ありがとうございました。今後とも応援よろしくお願い致します。


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