天台宗延暦寺 十三
※この物語はフィクションです。実在の人物や団体、寺社仏閣などとは関係ありません。
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「善鸞の状況を確認してまいります。皆様はごゆっくりお寛ぎください。もし動かれる場合は、部屋の前に一名門下の僧を立たせておりますのでお声をおかけください」
行澄が、善鸞の宗務総長への報告の状況を確認するために、頭を下げて部屋を出ていく。
ふぅ、ようやく一息つけるな。ずっと正座をしていたので足を崩して胡座を組む。
卓の上に用意されてある、包装に包まれた菓子に手をつける。
「しっかし、そんな事があったんですね。爺さん、そういう大きな出来事は教えておいてくださいよ。私が恥をかくので。でも、よく夜叉二体相手に死者なしで対処できましたね。延暦寺の代表を喰らっているようなもんだから、霊相も相当だったでしょう?」
菓子で乾いた喉を、出されていた茶を一口飲んで潤して、湯呑みを卓に置いた。
高位の僧のみを喰らう夜叉、おそらく相当霊相も溜め込んでいたはずだ。
高位の祓い屋が集団で対処したとはいえ、死者を出さなかったのは快挙といえるだろう。
「まぁな、だがあの夜叉は、元々は一体の双頭夜叉が分かれた亜種にすぎない存在だったからな。二体の夜叉の連携さえ阻止してそれぞれ離してしまえば、一体一体の対処は、そこまで苦労することではなかったがな。それと静夜殿、以前にも散々言ったが、資料室の資料には目を通しておけと言っただろう?」
なるほどな、確かに元々は一体の夜叉だった訳だから、分かれてしまえば実力も半分か。
まぁそんな簡単な話ではないのだろうが、戦力を分散してしまえば、対応は容易ってことか。
鬼霊対策室ができる前から、大社はこうやって地道に鬼に対して対処してたんやな。
てか、あんな膨大な資料、目通せる訳ないでしょ。一々読んでたら数ヶ月はかかる。
「しかし、こちらも驚いたぞ。まさか、すでに崩玉術式の作成者の特定が終わっていたとわな。さすがは静夜殿だ」
天鳳の爺さんが、上機嫌に私の背中をバシバシと叩いてくる。いたいいたい。
あなた老齢のくせに、なまじ体格いいし衰えていないから普通に痛いんよ。
孫の五木もそうだったが、天鳳家の男は体格がとても恵まれているようだ。
「たまたまですよ。偶然配膳時に、彼女の指が私に触れて、霊相を感知することができただけです」
「それでもすごいですよ統括室長。顕一学舎へ確実に近づいています」
千草の言葉に「そうですね」と頷いて答える。確かに顕一学舎へは確実に近づいている。
だが、これも相手の掌で転がされているのではないかと邪推していまい、素直に喜ぶことができない。
考えすぎだと己の中では理解できているのだが、過去の失敗がフラッシュバックして萎縮してしまう。
「で、その竜胆という女性は、まだ茶屋で働いているのか?」
爺さんが、竜胆の現在について私に確認する。現在は、宮本さんが監視・尾行しているはずだ。
電話で現状を確認したいところだが、それにより尾行を妨害してしまう可能性もある。
なので、向こうから連絡があるまで待機することにしていた。
「いや、もう時間的に茶屋は閉店しているでしょう。今は宮本さんに監視と尾行をしてもらっています。おそらくそろそろ動く頃だと思うので、何らかの連絡があると思います」
腕時計を確認すると、時刻は十五時半を差している。
十六時には延暦寺は拝観終了となるので、我々がここにいれる時間も本来であれば残り少ない。
だが、行澄さんの配慮により、宿坊として現在の部屋を取ってもらっている。
──その時だった。私のスマホに一通のメッセージが届いた。メッセージを確認する。
「彼女も動き始めたようで。どうやら横川エリアへ向かっているようです。我々もタクシーで横川エリアへ向かいましょう。このまま顕一学舎の学員と、接触してくれるといいいんですけどね。一網打尽にしてやりましょう」
この度は、当作品をお読み頂きありがとうございます。花月夜と申します。
当作品は、初めての執筆作品となります。
当方執筆に関して、完全な素人な為、至らない点が数多くあると思います。
ですが、書き始めたからには、皆様に読んでよかったと思って頂けるような作品にして行きたいです。
これからも、随時更新して参りますので応援いただけると幸いです。
ありがとうございました。今後とも応援よろしくお願い致します。




