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天台宗延暦寺 七

※この物語はフィクションです。実在の人物や団体、寺社仏閣などとは関係ありません。

もし、面白いと感じて頂ければ、ページ下部にある《投票!!》のクリックへのご協力お願いいたします。



「わかりました。今からそちらへ向かいます」


 私は休憩していた茶屋を出る前に、もう一度店員の女性を見た。

 彼女が、私の視線に気づき、気まずそうに目を逸らすのがわかる。


 やはり、彼女が崩玉の作成者なのだろうか?

 とてもそんなことができそうな女性には見えないのだが。


 人は見た目によらないとは言うが、まさにこういうことなのだろうか?

 宮本さんがお会計を済ませて、私達は店を後にした。


「統括室長。あの女性が、どうかしたのですか? とても気にされているようでしたが」


 釈迦堂の前へでる階段を下っている時に、宮本さんが尋ねてきた。

 私が、彼女をずっと見ていることに、気づいていたのだろう。


 まぁ、結構あからさまに観察してたからな。

 端からみたら、怪しさ全開やったかもな。

 怪しい学ラン姿のおっさんに凝視されるとか、恐怖でしかない。


「おそらくなのですが、彼女本人か、もしくはその関係者が、崩玉の作成者ですね。配膳時に、たまたま彼女の指に触れてわかったんですけど、霊相が崩玉にわずかに残っていた霊相と酷似していました」

「では、あの女性が統括室長を? とても信じ難いですね……ごく普通の女性に見えましたが」


 宮本さんが、驚きを隠せない表情で私を見る。

「そうですね」──と頷いてかえす。いまだに私も半信半疑だ。

 釈迦堂の前をとおり、すこし急ぎ足で西塔エリアの駐車場へ戻る。


「しかし、まさか延暦寺から直々に支援の依頼とは、一体どういった依頼なのでしょうか?」

「いやほんとさっぱりですね。私達嫌われていると聞いていたのですがね。とりあえず詳しいことは、あちらで聞くとしましょう」


 その後、私達は西塔エリアの駐車場に到着し、すぐに車へ乗り込んだ。

 そこから延暦寺の東塔エリアへ向かうため、車を走らせる。


「はぁ……あっちでも、この学ランはきついなぁ。もっと人多そうやし……てか、もう変装の意味なしてないような」

「そうですね……。統括室長、がんばってください」

「はい……宮本さんも、彼女の監視をお願いします」


 宮本さんには、私を東塔エリアへ送ったあと、すぐに西塔エリアへ戻ってもらう。

 引き続き、茶屋の女性の監視を続けてもらうためだ。

 彼女のあの動揺っぷりは、逃亡の危険性があると判断した。


 もし、彼女が逃亡を図ったとしても、相手は特殊作戦のプロだ。

 元陸自レンジャーである宮本さんから逃げるのは、不可能といっていい。

 まぁ協力者まで動きだしたら、その先は未知数になってしまうけど。


 車が東塔エリアの駐車場へ到着した。車から降りると、千草の姿が見える。

 東塔エリアの入場口付近で待機していたのか、セーラー服姿の彼女が、車へ駆け寄ってくる。

 本当によう似合ってるなぁ。全く違和感がない。童顔って訳でもないんやけどな。


「統括室長、お疲れ様ですっ。延暦寺の方々がお待ちの部屋へご案内します」

「わかりました。お願いします。宮本さんは、先程の指示通りに動いてください」

「承知しました」


 私を下ろした車が、再び走り出し、西塔エリアへ戻ってゆく。


「西塔エリアでも、何かありましたか?」

「そうですね。詳しくはあちらで話します」


 そこから千草の案内で、関係者専用の出入り口から、東塔エリアへ入った。

 やはり周りの観光客から、稀有な視線を浴びる事となりうんざりする。


 よく考えたらもう変装する必要ないんだから、帽子と上着脱いでくればよかった……。

 しばらく歩いて、延暦寺会館へ入る。

 宿坊エリアの、エレベーターに乗り込んで、会館の最上階まで移動すると、二名の僧が出迎えてくれた。


「お待ちしておりました。天鳳殿、こちらのお方が……?」

「はい、この方が、統括鬼霊対策室の室長であり、栄神家当主であられます。栄神静夜様です」


 学ラン姿の私を見て、少しばかり沈黙が訪れたが、出迎えた僧達が頭を下げる。


「さようございますか、栄神静夜様。お忙しい所ご足労いただき、まことにありがとうございます」

「ど……どうも……」

「わたくし、天台宗延暦寺東塔の宝蔵司を任じられております。善鸞と申します。こちらへどうぞ」


 善鸞と名乗る僧の案内に従い、廊下を進む。とある一室の前で止まる。

 引き戸を開くと「どうぞ、お入りください」、とにこにこと微笑む善鸞に入室を促される。


「失礼します」


 私と千草が中へ入ると、天鳳の爺さんが「おう」と手をあげる。

 部屋には、爺さんとその正面に、高齢の僧の姿が見える。おそらく、この寺を代表するような高位の僧なのだろう。


 爺さんの隣の座布団に座り、そしてその隣に千草が座った。

 先程から静かに座っていた僧の隣に、善鸞がゆっくりと腰を下ろした。


 高尚な袈裟姿の二人が、ゆっくりと頭を下げる。

 こちらも、それに応えるように頭を下げた。

 お互いに顔をあげると、善鸞の隣に座っていた僧が、口をひらく。


「おはつにお目にかかります。私、天台宗延暦寺東塔の大執行を任じられております。行澄と申します。栄神殿、そして天鳳殿……この度は、前もった断りもなく、このような場にお呼びだてし、誠に申し訳ありません」




この度は、当作品をお読み頂きありがとうございます。花月夜と申します。

当作品は、初めての執筆作品となります。

当方執筆に関して、完全な素人な為、至らない点が数多くあると思います。

ですが、書き始めたからには、皆様に読んでよかったと思って頂けるような作品にして行きたいです。

これからも、随時更新して参りますので応援いただけると幸いです。

ありがとうございました。今後とも応援よろしくお願い致します。


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