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比叡山 二

※この物語はフィクションです。実在の人物や団体、寺社仏閣などとは関係ありません。

もし、面白いと感じて頂ければ、ページ下部にある《投票!!》のクリックへのご協力お願いいたします。



「お付きの方はこちらへ」


 昨日と同じく、燐は別室へ通され、私は宇野浄階が待つ部屋へ入る。

 ボスンッと座布団に座ると、隣に咲耶が姿を現す。


 最近、すごいタイミングがいいけど、常に見張られてたりしないよね?

 正面に座る宇野浄階が、湯呑みを卓に置き話を切り出す。


「では、早速ですが話を聞きましょう。昨日の今日で重大な報告とは。流石、静夜殿ですね」


 彼女はなんだか嬉しそうだ。まぁ頼もしく感じてもらえているなら何よりだ。

 そんな宇野浄階へ、鬼霊技術研究所での一連の出来事を報告する。

 宇野浄階もさすがに驚いたのか、顔を強張らせている。


「……比叡山ですか。よりにもよって天台宗の総本山とは、不届き極まりないですね……」


 彼女の驚きで強張った顔が、みるみる苦虫を噛んだような顔へ変わった。

 なにか考え事をしているのか、彼女はじっと卓上の湯呑みを見つめてまま黙り込んでいる。


「この状況、やはり宇野浄階も顕一学舎が天台宗に潜伏しているとお考えですか?」


 私の言葉に彼女は茶をすすり、卓へ置いてから一息ついてから頷いて答える。

 先程までの苦々しい表情ではなく、凛とした表情へと戻っていた。


「これは、間違いなく顕一学舎の輩が、比叡山の天台宗に潜伏していると考えていいでしょう。至急、比叡山へ向かい調べる必要があります」


 その時、隣で黙って話を聞いていた咲耶が、口を開いた。


「で、そちらへ向かってどうするつもりなのですか? 他の宗教であれ、天台宗が神道の者を拒むことはないと思います。けれど、祓い屋は別でしょう?」


「…………」


 咲耶の言葉に、宇野浄階が再び黙り込んでしまう。

 そういえば、天台宗は昔から祓い屋が嫌いという話は、今までに何度も聞いたことがあった。


 なぜ祓い屋が嫌いなのかは、昔に爺さんから聞いたことがあったが、長い歴史上の確執だったはずだ。

 だが、なんだか内容が複雑で難しく、詳しい内容は忘れてしまった。


「しかし、ある程度犯人の居所が、掴めているのです。突き止めるべきではありませんか?」


 宇野浄階が、咲耶の言葉に食い下がった。

 それから、しばらく宇野浄階と咲耶の押し問答が続いた。

 しかし、このままでは埒が明かないので、私から切り出すことにした。


「あの……すみません。とりあえず一旦観光ってことで、延暦寺に行ってきますね」


「「…………」」


 浄階と咲耶が黙り、それぞれ目を逸らす。


「こほんっ……ではお願います。しかし、くれぐれも霊相は抑えてください」


 宇野浄階が、いくつか注意すべき点を話してくれた。

 いくら霊相を抑えた状態であっても、目立つ行動は避け、なるべく大人数での行動は控えること。

 そして、逆に決して一人では、寺の堂内には入らないこと。


 ──ん? 一人で堂内に入らないって何だ?


「一人で、堂内に入ってはいけないのですか?」

「これは、あくまで念のためです。学舎の輩によって、堂に結界を張られて、閉じ込められる可能性もありますから」

「なるほど……」物騒やなぁ……。


 その後も、現場へ向かわせる人選等で話し合いは続いた。

 明日は、私と運転手である宮本さん、そして天鳳の爺さんと千草の四人で、向かうこととなった。

 それぞれ身元がばれないように、変装をして比叡山へ向かうことで決定した。


「え? 変装っているんですか? 観光するだけですよね?」

「「いります」」なんなん、そのハモリ……


 仕方なくそれを渋々了承した私は、燐と共に車に乗り込み帰路についた。

 って、変装ってどないしよ……変装道具とかそんなの持ってないんやけどな。

 統括対策室に到着すると、千草に声をかける。


「千草さん、爺さん呼んできてもらえますか?」


 私の言葉に、「わかりましたっ」と千草が部屋を出ていく。

 椅子に腰を下ろし、蓮葉が入れてくれた茶を啜る。


「蓮葉、変装ってどうしたらいいですか?」


 私の突拍子もない質問に、蓮葉はキョトンと首をかしげる。


「変装ですか? 周りの環境や条件によってかなり変わってくると思いますが、静夜様はどのような環境なのでしょうか?」


 蓮葉に大社での話と、明日の予定を伝える。

 彼女は、「少し考えさせてください」と言い、自分のデスクのPCへ向かった。


 それからしばらく待っていると、千草が天鳳の爺さんを連れて戻ってきた。

 何も話を聞かされていない爺さんは、なんだか不機嫌そうな顔をしている。

 はは……さすがに勘がいいな。なまじ長く生きていない。


「静夜殿、何の用だ? 無性に嫌な予感がするのだが?」


 爺さんが、ぼやきながらも千草がすすめた椅子に座る。

 爺さんと千草に、今回の大社での話と、明日の予定を伝える。

 私の話を聞いて、案の定顔をしかめる爺さん。


「静夜殿……変装って儂いくつやと思ってるんや?」確かに……。

「ですが、浄階と咲耶が話し合って決定したことです」どや。

「そうは言ってもなぁ……ううん……」


 千草は、特に抵抗がないのかニコニコしている。

 なんか楽しそうやね。爺さんと一緒に仕事できるのが嬉しいのかな?

 そのとき、先程までPCに向かっていた蓮葉が戻ってきた。


 蓮葉は、「渾身作ですっ!」と言わんばかりのドヤ顔だ。

 あ……これあかんやつや。急激に嫌な予感が膨れ上がった。

 四人用に作成された、変装イメージのデザインのラフ画を、私の机にバサリと広げる。


「「…………」」私と爺さんが絶句する。

「うわぁ……かわいいっ!!」千草が喜んでいる。



「ふふふ……明日は、これでいきましょう」



この度は、当作品をお読み頂きありがとうございます。花月夜と申します。

当作品は、初めての執筆作品となります。

当方執筆に関して、完全な素人な為、至らない点が数多くあると思います。

ですが、書き始めたからには、皆様に読んでよかったと思って頂けるような作品にして行きたいです。

これからも、随時更新して参りますので応援いただけると幸いです。

ありがとうございました。今後とも応援よろしくお願い致します。


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