鬼霊技術研究所 二
※この物語はフィクションです。実在の人物や団体、寺社仏閣などとは関係ありません。
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先を歩く栞と花絵の後ろへ続いて、無機質な廊下を進む。
今のところ、ほかの研究技術者の姿は、まだ一度もみていない。
現在は、七.八名しか出勤していないとのことだったので、まぁこんなもんかと納得する。
栞がとある部屋の前で立ち止まると、カードキーを使用してロックを解除する。
扉を開けた途端、部屋の中からものすごい冷気が廊下へ吹き出してきた。
「どうぞ」
栞が、私達を研究室の中へいれてくれた。
中には、見たことのない数多くの精密機器が、隙間なく並んでいる。
そして、酷く部屋が寒い──なんや、ここ冷蔵庫か?
「柊所長、ここものすごく寒くないですか?」
私の言葉に、柊室著が「あぁ」とこたえる。
いたって当然といった反応だ。
「機器を動かし始めると、放熱でこれでも暑いくらいになりますよ」
「…………」
これでも暑くなるって──どんだけ電力使ってんだ?
大きな機器の前で、栞が立ち止まり振り返る。
機器には大きな画面と、天網と同じような黒い水晶玉が、機器に埋めこまれている。
「これ天網ですか?」少し小さいけど。
「ええ、プロトタイプの検証機ですけどね」ほうほう
「まずは、検証内容の説明をしましょう」
花絵がホワイトボードを用意する。
検証内容としては、まず専用の機器で件の崩玉の構造解析をおこなう。
その作業だけでも、十数時間は要するらしい。
そして、崩玉に残された霊相のパターンコードを解析する。
その結果をデータ化し、目の前にある検証機で、天網の拡張予定であった機能──
人間の霊相から、相手の位置を探索する機能の検証をおこなうとのことだった。
しかし、現段階では被探索者の霊相のパターンコードがわかっていないと、探索はできないそうだ。
まぁそうやわな、絞り込みせな霊相の消費が、途轍もないことになるもんな。
「こちらの検証機の天網は、現在運用中の天網と比較してアンテナの出力が低いため、西は大阪から東は東京までが限界です」
「もし、それ以外に対象者がいる場合は?」
私の質問に、栞は淡々とした口調でこたえる。
「天網の本番機がある関西か関東でおこなう必要があります。しかし、本番機はまだアップデート前なのです。実装は急いでも二ヶ月はかかるかと」
「…………」
二ヶ月か、なまじシステム開発に見識があるので、大型のシステムアップデートの大変さは理解できる。
本番環境でのテストや、デバッグの辛さは尚更だ。
「わかりました。天網での探索は、何時ぐらいになりそうですか?」
私の言葉に、栞と花絵がボソボソと、なにか話しあっているようだった。
「今から始めた場合、早ければ明日の午前九時。遅くても昼十二時には解析は完了するでしょう」
「わかりました。では解析の方よろしくお願いします」
-翌日-
昨夜は、名古屋市内のビジネスホテルに部屋を取り、宿泊することとなった。
夕食に、近くの居酒屋で食べた味噌煮込みおでんと、名古屋コーチンの焼き鳥はかなり美味かった。
午前十時に、昨日と同じように守山駐屯地の入り口で、手続きをすませてから研究所へむかう。
研究所のロビーにはいると、受付の女性が花絵をよんでくれた。
「統括室長、おはようございます」
「おはようございます。花絵助手。解析の進捗は?」
私の質問に、彼女は腕時計を確認して答える。
「大きなトラブルは発生しておりませんが、解析の完了は十一時前後かと思います」
「わかりました。では少し待たせてもらいます」
花絵の案内で、研究所内の休憩室へ通される。
自販機でコーヒーを入れ、ソファ席に腰を下ろす。
テレビをつけると、太宰府の火災の件が、放火魔の犯行である可能性が高いと報じられていた。
しばらくすると、解析が完了したのか花絵が迎えに来てくれた。
研究室へ到着すると、花絵がカードキーでロックを開き皆が研究室へはいる。
機器をフル稼働させていた影響か、室内は少し蒸し暑かった。
ほんまに暑いくらいになっとる。一体どんだけ放熱してるんだよ。
「統括室長お待たせしました」
栞がコーヒーを飲みながらこちらを振り返る。
天網での検証が楽しみなのか、若干興奮しているようにみえる。
「いえいえ、じゃあ早速はじめましょう。霊相を流すのは、わたしでいいんですよね?」
「そうですね。統括室長におこなってもらうのが、一番確実ですから」
花絵が天網の端末を操作して、モニターに大阪から東京までの衛星画像を表示させる。
今日は蓮葉がいないため、探索できてもすぐに姿が確認できないのが悔やまれる。
「どうぞ」
準備が整ったのか、花絵が端末からはなれる。
私は天網に近づき、黒水晶に手を添える。
霊相の消費は、あまり感じなかった。
画面を見ても、何も変化は見られない。
ああ、やっぱり範囲外かぁ──うつむき肩を落とした時だった。
ピーッと、天網から音が発せられる。あわててモニターをみる。
そこには、一点のマーカーが表示されていた。
「成功ですね。さすがは栄神の霊相ですね。花絵拡大して」
花絵がマーカーが出現した地点を拡大する。
「ここは……」補佐達が青ざめる。
私は、唇を噛んでモニターを見つめてつぶやいた。
「比叡山かよ」
この度は、当作品をお読み頂きありがとうございます。花月夜と申します。
当作品は、初めての執筆作品となります。
当方執筆に関して、完全な素人な為、至らない点が数多くあると思います。
ですが、書き始めたからには、皆様に読んでよかったと思って頂けるような作品にして行きたいです。
これからも、随時更新して参りますので応援いただけると幸いです。
ありがとうございました。今後とも応援よろしくお願い致します。




