鬼霊技術研究所 一
※この物語はフィクションです。実在の人物や団体、寺社仏閣などとは関係ありません。
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鬼霊技術研究所 一
「蓮葉。鬼霊技術研究所の柊姉妹へ連絡して、今日の午後五時にアポイントを取っておいてください」
本日二度目の対策会議の終了後。
すぐに蓮葉へ、名古屋にある鬼霊技術研究所の柊姉妹に協力の約束をとりつけるように指示をだす。
あちらもある程度は、現在の状況は把握しているはずだ。こちらからの要請を拒否することはないだろう。
「承知いたしました。研究所へは、どのようにむかわれますか?」
「車で向かいます。なので宮本さんにも伝えておいてください」
一度自分のデスクにもどり、椅子に腰を下ろす。
PCで顕一学舎について調べてみるが、該当するような情報は出てくる事はなかった。
まぁそんな簡単じゃないわな。わかってた。
「静夜様。車の準備が整いました」
蓮葉の声に立ちあがると、彼女には継続して統括室長代理を務めるよう指示する。
燐と千草の二名の補佐に同行を指示し、私達は統括対策室を退室した。
今から名古屋に向かうとなると、到着するのは夕方になる。それに、こちらにすぐに戻れるかもわからない。
「今日は何時に帰宅できるかわかりません。名古屋で一泊する可能性もあります。一度シェアルームに寄りますので、早急にそれぞれ準備を整えてください」
承知しました──燐と千草が敬礼で応える。
地下ロータリーのエントランスで待機していた車へ乗りこむ。
ゆっくりと走り出した車は、一度シェアハウスを経由してから名古屋へとむかう。
途中サービスエリアで、遅めの昼食をとる。
皆で早々に食事を済ませて、名古屋へと急ぐ。
そのおかげで、午後四時前には名古屋市内へはいることができた。
鬼霊技術研究所がある、陸上自衛隊・守山駐屯地へはあと三十分の予定だ。
高速が混んでいなくて本当によかった。もし渋滞していたら、約束の時間に間に合わなかったかもしれない。
こちらからアポイントをとっておきながら、遅刻とか洒落にならないからな。
約束の時間である十七時の三十分前に守山駐屯地の前に到着する。
駐屯地の入り口で手続きを済ませて、敷地内へはいる。
指定された駐車場に車を止め、敷地内にある鬼霊技術研究所へむかう。
鬼霊技術研究所は、地上三階建ての建物だった。天網が発明制作された場所。
はぁ……なかなか立派な建物やなぁ──建屋を見上げて眺めていると、一人の女性がエントランスから出てくる。
ちょうど所長補佐である柊花絵が、建物から出てくるところだった。
「統括室長、お待ちしておりました」
所長である柊栞の双子の妹である柊花繪が、ゆっくりと頭をさげた。
こちらも、敬礼でそれに応える。
「急な申し出に応えていただきありがとうございます。本日はよろしくお願いします」
「では会議室へご案内いたします。こちらへどうぞ」
花絵の案内で、鬼霊技術研究所の中へはいる。
受付のロビーを含む一階のエリアは、とても明るく洗練され、高級ホテルのようだった。
だが、カードキーが必要なエレベーターに乗り、研究フロアへ入ると、真っ白な無機質な廊下がつづく。
「現在技術研究員はどれぐらい在籍しているのですか?」
蓮葉が花絵へたずねる。同じ技術者として興味があるのだろう。
そういえば、ここには鬼戸神依の人間はいないのかな?
同じ技術者同士情報交換……、いや鬼戸家は情報は表には出さないか。
「現在は、全員で三十五名ほどですが、今出勤しているのはおそらく七.八名だとおもいます。フレックスタイム制を採用しているので。鬼戸神依の方も、一名こちらに在籍されていますよ」
──フレックスタイム制、なにそれなんかカッコイイ。
って、鬼戸神依の人おるんかいっ。情報の秘匿はどうした。
「はい、知っています。こちらに属している鬼戸雪華は私の双子の弟です。弟がいつもお世話になっています。結構意固地な性格しているので、少し心配していたんです。ご迷惑おかけしていませんか?」
花絵の言葉に、蓮葉が少し恥ずかしそうに笑いながら答える。
──まじか、ここで働いてる鬼戸神依って雪華君かよ。
「いえいえ、彼は非常に優秀な技術者です。さすがは鬼戸家の本家の血筋としか言いようがありません。こちらがお世話になりっぱなしですよ」
花絵がにこりと微笑みながら、雪華君を大きく評価した。
それを聞いた蓮葉は、安心したのか少し息をついた。
「そうですか、よかったです。ありがとうございます。意固地で扱いにくいと思いますが。これからも弟をよろしくお願いします」
蓮葉が一度立ち止まり、花絵へと頭を下げた。
「もちろんです」
花絵も立ち止まり、蓮葉の言葉に頷き、同じく頭を下げた。
《Conference Room》と書かれた部屋へはいる。どうやら会議室の意味らしい。
こちらで少々お待ちください──花絵が頭を下げて部屋をでてゆく。
研究所の職員の方が、部屋をおとずれてお茶を用意してくれる。
そのお茶を啜りながらしばらく待つと、柊栞と柊花絵が部屋へ入ってきた。
「統括室長。大変おまたせしました。なかなか緊急の内容のようですね。どうされましたか?」
栞と花絵が、会議室の席に腰を下ろす。
今回私達が急遽こちらへ訪れた理由を、彼女は既にある程度は把握しているはずなのに。
「どうされましたか?」──とは、実に研究者らしい態度だった。
「柊所長。急なことで本当に申しわけないです。これを見てくれますか?」
懐から布に包んだ崩玉をテーブルへ置くと、栞がそれを受け取り布を開いた。
「ほぅ……これが件の崩玉ですか。うんうん、非常によくできていますね。すばらしい」
頬を若干紅潮させた栞が、様々な角度からつまんだ崩玉を舐めまわすように観賞している。
しばらくすると、ようやく満足したのか、崩玉を布の上においた。
それを、無言で隣に座る花絵へと預けた。
「統括室長の目的としては、[この崩玉の作成者を知りたい]──ということでよろしかったですか?」
栞が、ようやく今回私達が鬼霊技術研究所を訪れた理由を確認する。
「そうですね。微かにですが、まだ崩玉には作成者の霊相を感じることができます。この霊相を追うことができればと考えています」
私の言葉に、栞が「承知しました」と頷く。栞と花絵が一緒に立ち上がる。
「では私の研究室へ向かいましょう。ちょうどいい検証になりそうです」
この度は、当作品をお読み頂きありがとうございます。花月夜と申します。
当作品は、初めての執筆作品となります。
当方執筆に関して、完全な素人な為、至らない点が数多くあると思います。
ですが、書き始めたからには、皆様に読んでよかったと思って頂けるような作品にして行きたいです。
これからも、随時更新して参りますので応援いただけると幸いです。
ありがとうございました。今後とも応援よろしくお願い致します。




