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顕一学者 二

※この物語はフィクションです。実在の人物や団体、寺社仏閣などとは関係ありません。

もし、面白いと感じて頂ければ、ページ下部にある《投票!!》のクリックへのご協力お願いいたします。



「…………」


 顕一学舎が研究の為に、鬼を見境なく増生させているというのは、間違いない。

そして、増生させた鬼を合成して、獄鬼や鬼混殭屍を生成したのだろうか?

いくら研究の為とはいえ、やっていいことと悪いことがあるだろう。常軌を逸している。


「じゃあ、今回の小室家の襲撃は羅刹を開放し、羅刹を使役するか、それが無理でも研究素材にする為という事ですよね? そのために多数の死者を出したという事ですか? これ殺人ですよ?」


 私の疑問に、宇野浄階は「おそらくは……」と答える。

鬼のために人を殺める? ふざけている。完全にいかれている。

腸が煮えくり返り、怒りで震える肩に、咲耶が手を添える。


「静夜、落ち着きなさい。まずは、早急に早川家と久井家の警護を指示しなさい」

落ち着いた咲耶の言葉に、深呼吸をしてから「そうやな」と返す。


「電話失礼します」と言って電話を取り出す。すると宇野浄階がそれを止めた。

疑問の顔を浮かべる私に、彼女が理由を説明してくれる。


「ここからの公共の電波通信は、術式で盗聴されている恐れがあります。今回お伝えできる内容は以上です。今日は対策室へ戻り、これからの各室長への連絡は、なるべく独自の秘匿通信で指示を出してください」


 術式による盗聴? そんな術式まで存在するのか? プライバシーもくそもないな。

だが、蓮葉の千里眼のことを考えると、それほどめずらしくも感じなくなるから不思議だ。 

あれも使い方次第では、いくらでも悪用できてしまうから扱いには注意しなければならない。


 わかりました──私が答えて立ち上がると、咲耶もスッと姿を消した。

巫女の案内で廊下に出ると、既に燐ともう一人の巫女が扉の前で待機していた。


 ん? どうして私が出てくるのがわかったのだろう? 

宇野浄階の隣に座っていた巫女は、部屋からは一歩も出ていなかった。

インカムか何か付けてるの? そうは見えなかったけど。


「え? どうして私が出てくるタイミングわかったんですか?」

「え? いえ、こちらの巫女の方が、静夜様がお戻りになると教えてくださって……」


 燐を別室へ案内した巫女がにっこり微笑んでいる。

私の隣に立つ巫女も同じく微笑んでいた。

巫女さんたち、もしかして双子のテレパシーみたいなの使ってる?


 今日ならなんでも信じれる。龍や虎を扱う私が言うのもなんだが。

荒唐無稽な現象が当たり前のように発生していて、頭が麻痺しかけていた。


「まぁええわ、急いで対策室へ戻ります」

「わかりましたっ」


 巫女の案内で関係者専用駐車場へ戻る。

宮本さんの運転するセンチュリーに乗り込み、急いで対策室へ戻る。


「静夜様、どういったお話だったのですか? 補佐として差し支えのない程度で共有していただければ」

燐が、帰りの車中で話の内容が気になったのか、尋ねてきた。


 内容を説明したくても、あまりにも内容がぶっ飛んでいるため、うまく説明できそうになかった。

内容が内容だけに、一度をきちんと整理した上で説明したほうがいいと判断した。


「うーん、そうですね。なんかめちゃくちゃな話で、私もまだまとめきれていないので、戻ったらまとめて説明するので、戻ったら再度緊急会議を招集してください」

「承知しました」


 数十分ほど車を走らせ、地下ロータリーのエントランスへ到着した。

統括対策室へ戻り、私は蓮葉へ状況を確認する。


「現在は、大きな変化はありません。会議の招集は、現在準備中です」

「わかりました」そう言い、私は天網へ向かう。


 やはり、天網には大きな変化は見られない。

むしろ福岡県にいる鬼が減っている気がした。

祓い屋が払った可能性もあるが、嫌な予感がする。


「蓮葉、ここ数回の捜索での鬼の数の差異はわかりますか?」

「お待ち下さい」


 蓮葉が、端末を操作して、福岡県の鬼の数の線グラフを表示する。

私が鬼火村から帰ってきてからの探索毎のデータには、明らかな異変が起きていた。

鬼の数がゆるやかではあるが、確実に数を減らしている。


「あぁ……やっぱり明らかに減っとるな」

「そうですね。やはり鬼混殭屍の合成でしょうか?」


 普通に考えれば、それを疑うのが一番筋が通っている。

だが、合成させたのであれば、大鬼の数が増えるはずだ。

だが、線グラフの大鬼の数には大きな変化が見られない。


「わかりません。少し様子を見ましょう」

「承知しました」


 三十分後、再度緊急会議が始まり、大社からの内容を出席者へ簡潔に共有する。

私を襲った崩玉の件、太宰府市で発生した小室家襲撃の原因。

そして、小室家が守護していた羅刹の封印の件と、今回の首謀者とみられる顕一学者について。


「功徳室長と蓮華補佐は、まず警護の配置転換を急いてください」

説明後、私は急ぎ早川家と久井家の警護にあたるように指示を出す。


「承知致しました。蓮華君、至急対応お願いします」

「承知しましたっ」蓮華が通信を終了した。


「私も動きます。失礼します」

応援部隊を指揮している、関西方面鬼霊対策室の室長補佐である、天鳳五木の通信も終了した。


「顕一学舎ですか、懐かしいですね。確か当家は一度だげ学員と接触した事があります」


 顎に手をあてて、何かを思い出すように月季が呟く。

月季が小黒を見ると、小黒がため息をつきながら頷いた。


「そうですな、もう二十数年前になりますが、過去にその様な名を語る不届き者が、当家の分家に紛れておりましたな。もちろん追放し、その分家にも相応たる処罰を行いました」


 術式に関する組織なら、祓い屋に紛れ込んでいても不思議ではない。

しかし、まさか堂上家にまで潜んでいたとは……。いくら分家とはいえ大事だ。

再び頭が痛くなるのを抑えて、会議を進める。


「ひとまずは、九州沖縄方面と、関西の五木補佐の部隊以外は、通常業務と並び、顕一学舎の調査を進めてください。どんな些細な事でも構いません。まずは情報を集めてください」


「はっ!!」皆が敬礼で応える。


「それと、私は今から名古屋の鬼霊技術研究所へ向かいます」

「何用ですか?」月季が尋ねる。


 懐から件の崩玉を取り出して皆に見せる。


「この崩玉には、まだ作成者の霊相が繋がっているように感じます。なんとか逆探知できないかと思いまして」

「なるほど。確かに、柊姉妹、彼女達なら可能かもしれませんね」月季と小黒が納得する。

「ええ、だからそれに賭けて、行ってみようと思います」



「まずは、崩玉の作成者を捕らえます」




この度は、当作品をお読み頂きありがとうございます。花月夜と申します。

当作品は、初めての執筆作品となります。

当方執筆に関して、完全な素人な為、至らない点が数多くあると思います。

ですが、書き始めたからには、皆様に読んでよかったと思って頂けるような作品にして行きたいです。

これからも、随時更新して参りますので応援いただけると幸いです。

ありがとうございました。今後とも応援よろしくお願い致します。


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