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顕一学舎 一

※この物語はフィクションです。実在の人物や団体、寺社仏閣などとは関係ありません。

もし、面白いと感じて頂ければ、ページ下部にある《投票!!》のクリックへのご協力お願いいたします。



「羅刹の使役化ですか? それは何か根拠はあるんですか?」


 あまりにも荒唐無稽(こうとうむけい)な話に、また頭が痛み始めた。

呪いによる不老不死もそうだが、あまりに現実味がなさすぎる。


 羅刹を使役する? そもそも、そんなことが可能なのだろうか?

高位の鬼が多かった時代でさえ、高位の祓い屋が十数人で対処しても、宇野浄階を残し壊滅状態となった。

それも、羅刹を殲滅することはできず、祠に封印するのが限界だった。


 あまりにも実力に差が大きい対象をどのように使役するというのだろう。

殭屍を生成するのは、あくまで死人を墓から呼び起こす術のはずだ。

呼び起こした者を主として使役すると功徳の爺さんが言っていた。


 だが、羅刹は死人ではない、童子に次ぐ最も高位の鬼だ。

そんな鬼を、どのように従えるつもりなのだろうか? まさか術式で?

いや、ありえない。従えるにしても術者と羅刹の霊相に差が大きすぎて、とても通じるとは思えない。


 ただ、昨日の鬼混殭屍による福岡県太宰府市の襲撃事件の件がある。

この現実味のない奇想天外な話を、深く掘り下げざるを得なかった。

東方由来の、鬼の使役化の術式の知識が、あまりに少なすぎる事が原因やなと唇を噛む。


「これは考えられる仮説の一つに過ぎませんが、完全に否定する事ができる話ではありません」


 宇野浄階が、真剣な眼差しで私と、咲耶を見る。

咲耶が、湯呑を卓に置き、宇野浄階へ尋ねる。


「宇野、あなたは先日の崩玉の件も含め、犯行の首謀者はある程度絞れているのでしょ?」


──えっ!? そうなん?


 流石は宇野浄階。すごい頼りになるな。再び彼女に後光がさす。

だが彼女は、ゆっくりと首を横に振り、それを否定する。


「首謀者と言うよりは、組織ですね」


 組織? やはりクズな新興宗教の団体や、仏道の異端派の集団とか、そういった部類なのだろうか?

だが岩手の渡りで現れた夜叉は、僧帽に召喚されたと言っていたから、やはり仏道関係が一番濃厚だろう。

どっちにしても厄介だ。宇野浄階が、話を続ける。


「静夜殿は、「顕一学舎(けんいつがくしゃ)」という団体をご存知でしょうか?」


──顕一学舎? 聞いたことがない。


 隣に座る咲耶を見るが、咲耶も心当たりは無いようで、横に首を振るだけだった。

宇野浄階が、懐から布の包を取り出すと、卓へ置き広げる。それは、件の崩玉だった。

淡い緑色の勾玉の形状をした石。これが私の半身を吹き飛ばしたと思うと背筋が凍る。


「この崩玉も、今はただの器ですが、静夜殿を害する術を施したのは、おそらく顕一学舎の学員でしょう」


──学員? 


 顕一学舎と言うからには相手は学校なのだろうか?

その学員が、何故私に崩玉を喰わせる必要が合ったのだろうか?

私に何か恨みがあった? そんな恨まれるようなことした覚えはないんやけどな。


「あの、その顕一学舎というのは、どういった組織なんですか? 仏道に関係があるんでしょうか? あと何故私を狙ったんですか?」


 私の疑問に、浄階は湯呑を卓に置いて、少し困った顔をして思考し黙り込む。

正直まだ宇野浄階も、そこまで詳しくは情報を掴めていないのだろう。

だが少しでも情報がほしいので、黙って彼女が口を開くのを待つ。


「静夜殿の命を狙った理由は、新生鬼霊対策室への業務の妨害や、組織としての宣戦布告の類とぐらいしか考えつきません」


──妨害? 宣戦布告? 


 何の為にそんな事をする必要があるのか、まったく理解ができない。

鬼を増やす事を、目的としているから? それを、滅している我々が、邪魔だからか?

宇野浄階が話を続ける。


「ただ気になるのは、相手はあなたが栄神家の人間であり、喰龍の式神の存在も把握しています。もちろん鬼喰の儀礼も。そこまでの情報を有しているのであれば、もちろん姫様の存在も把握しているでしょう。もし、姫様も今回の件に関係してくるとなると、かなり複雑な話となってくるでしょう。正直、国を揺るがしかねない事態です


「…………」


 咲耶が関係している? 確かに相手は崩玉を使用して私を殺そうとした。

だがそれは、相手に咲耶の存在を把握されていたから?

私を瀕死状態に陥れたとしても、治療することができることを知っていたから?


 辻褄が合ってしまい、改めて背筋が冷たくなるのがわかる。

まさかとは思うけど、咲耶まで使役しようとか考えてるんと違うよな? ありえんよな?


 神を使役とか、それこそ荒唐無稽な話だ。完全に世の理の道理に反している。

栄神家は咲耶に守護してもらう事はできる。だが、これはあくまでも契約だ。

頭痛がさらにひどくなっていくのを感じながら、宇野浄階の話を聞く。


「顕一学舎の学員は、様々な国の宗教組織や、術式を行使することができる組織に潜んでいます。彼らは、霊相術式の学術研究を目的とした、機密研究組織です」


 彼女によると、顕一学舎は宗教団体ではなく。

神道、仏道など世界中の様々な国の宗教を融合し、独自解釈した考えを礎とした術式研究機関だそうだ。


 なんじゃそりゃ、術式を研究する機関というのは理解できるが、様々な国や宗教って。

術式ならなんでもありって事か? じゃあ、今回はたまたま仏道だったと……。

そういえば、殭屍は中国を起源とした道教か。これも辻褄が合う。


「そいつらの最終的な目的は何なんですか?」

これだけの事をしているだから、何らかの目的はあるはずだ。


「正直わかりません。私もまだ、詳しくは存じないのです。ただ、昨今の鬼の急増は、彼らの仕業で在る事は明らかです」


この度は、当作品をお読み頂きありがとうございます。花月夜と申します。

当作品は、初めての執筆作品となります。

当方執筆に関して、完全な素人な為、至らない点が数多くあると思います。

ですが、書き始めたからには、皆様に読んでよかったと思って頂けるような作品にして行きたいです。

これからも、随時更新して参りますので応援いただけると幸いです。

ありがとうございました。今後とも応援よろしくお願い致します。


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