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宇野大納言 二

※この物語はフィクションです。実在の人物や団体、寺社仏閣などとは関係ありません。

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 ──はい? 不老不死?


 なんですか、そのなんともうらやましいような、恐ろしい体質は。

 そして童子の呪い? てか童子ってほんまにおったんやな。なんか、頭が痛くなってきた。

 老いることも死ぬこともできない。一体どんな感覚なのだろう。


 とても信じられない話ではあるが、隣で神様が座って茶をすすってるからなぁ。

 これも他の人から見たら、常識の外れた光景やもんな。

 人間、一旦受け入れてしまえばどうということは無いのだが、それがなかなか難しい。


「不老不死? そんなことあり得るんで……いや……まぁあり得るんでしょうね。それが童子の呪いなんですか?」

 宇野浄階が頷き、簡潔にこれまでの経緯を説明してくれた。


 平安時代、当時の都である平安京に襲来した童子の呪いによって、彼女は望まぬ不老不死となった。

 彼女は当時、都で「大納言」という高位の官職であった。現代でいう内閣の閣僚のようなものだ。

 しかし、童子から受けた呪いにより、彼女は呪人として周りの貴族はおろか、親族からすらも忌み嫌われた。


 それでも、大納言としての非常に優れた学識。

 神道への見識も非常に高かったこともあり、憐れんだ帝の恩恵により、愛宕日ノ舞大社の神職者となった。

 不老不死であった彼女は、さらに神道への研鑽に努め、約百五十年をかけて浄階にまで階位を上げていった。


 それからは、現在に至るまで、大社の唯一の浄階を彼女は務め続けているとのことだった。

 なるほどな、どおりで話の辻褄が合わなかったわけだ。


 もう千年以上も大社の最高責任者を努めてるって、それはもうほとんど神じゃないのか?

 奉られる立場じゃないのか? 宇野浄階から後光がさしているように見えた。


 当時の、京都には今よりも高位の鬼が多かったのは先代の爺さんから聞いていた。

 だが、それは童子も例外では無かったようだ。

 現代では、羅刹すらかなり珍しいからな。私もまだ見たことがない。


「しかし、なぜ宇野浄階が呪いは受けたのですか? 他には同じ様に不老不死なった人間は?」

 その疑問に彼女は「私だけだと聞いています」と答えた。


 ──何故、宇野浄階だけが呪いを受けたんや?


「それが、本日の本題にも繋がるのでしょ? 宇野」

 咲耶が尋ねる。ん? どういう事や?


「そうですね……」

 目を伏せて、浄階は話を続ける。


「童子が私を呪ったのは、私がまだ大納言ではなく、太宰府にいた時に、そこに現れた羅刹を封印したからです」


 ──へ? 今なんて言った? 羅刹を封印? 宇野浄階が? 一人で?


「え? お一人でですか?」

「いえ、上位の祓い屋達が十数人で対処しましたが、封印後に生き残っていたのは、わたくしだけでした」


 なるほど、確かに宇野浄階は相当に強いお方だとは思っていたけれど。

 まさか羅刹を封印してしまうとは、この人とんでもないな。化物じみている。

 下手したら、日本で一番優れている祓い屋って宇野浄階なんじゃないか?


「では、宇野浄階は元は祓い屋だったんですか?」


 聞くまでもないが、念のために聞いておく。

 おそらく当時の祓い屋の中でも、化物クラスの祓い屋だったに違いない。

 宇野浄階は、頷き「太宰府の官職との兼業でしたけどね」と答える。働き屋さんですね。


「封印した羅刹は、私へ呪いを掛けた童子が生み出した側近だった様で、その仇討で私を探していた様でした」


 仇討ちって、童子って感情が人間くさいのか? なんか意外やな……。

 夜叉は己の理想のために思考し行動する。だが、誰かを思いやるような感情はないはずだ。

 高位の鬼になるほど、知性や感情も豊かになっていくのだろうか?


「それで、本題との関係というのは、どういう事ですか?」


 いまいち関連性がわからない。羅刹? 太宰府? あれ? そういえば大宰府といえば──

 私の言葉に、咲耶が溜息をついて扇子でパンパンと頭を叩いてきた。


「昨日、襲撃があった小室家は、その封印を施した祠の守護を代々担ってきた、祓い屋一族の一つなのです」

「なっ……それって」


 咲耶の言葉に、背筋に冷たいものが走るのがわかる。

 宇野浄階が頷いて、祠の守護について説明してくれた。


 現在の祠の守護は、封印した当時から守護についた小室家と早川家。

 そして、封印から数年後に宇野家が帝からの勅命により、平安京に居を移すにあたって。

 宇野家に代わり、祠の結界の守護に就いた久井家。


 この三氏族の守護が破られてしまえば、羅刹を封印している結界が容易に解けてしまうそうだ。

 ということは、小室家は現在壊滅状態であり、守護の力は失われたということか。

 じゃあ、否応なく次に狙われるのは──


「それって、功徳室長は知ってるんですか?」

 もし、まだ功徳の爺さんがその情報を知らないのであれば、今すぐにでも伝えなければならない。


「いえ、あの方はまだご存知ないでしょう。極秘の機密事項ですから。ですので、至急静夜殿から早川家と久井家の警護の指示をお願いします。それぞれの氏家にはすでに大社から警護を送る旨を使者が密書にて伝えています」


「わかりました。しかし、襲撃者は何故羅刹の封印を解くつもりなのでしょうか?」

 宇野浄階は、静かに首を振り「まだ正確な目的は、不明です。ですが恐らくは……」と顔が曇る。



「封印から開放した羅刹の、術式による使役化が目的でしょう」




この度は、当作品をお読み頂きありがとうございます。花月夜と申します。

当作品は、初めての執筆作品となります。

当方執筆に関して、完全な素人な為、至らない点が数多くあると思います。

ですが、書き始めたからには、皆様に読んでよかったと思って頂けるような作品にして行きたいです。

これからも、随時更新して参りますので応援いただけると幸いです。

ありがとうございました。今後とも応援よろしくお願い致します。


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