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鬼混殭屍 二

※この物語はフィクションです。実在の人物や団体、寺社仏閣などとは関係ありません。

もし、面白いと感じて頂ければ、ページ下部にある《投票!!》のクリックへのご協力お願いいたします。



「では、福岡県太宰府市で発生した小室家襲撃事件についての対策会議を始めます。蓮葉」

「はい」と答えた蓮葉が、今回発生した事件の概要を改めて説明した。


「蓮華補佐、最新の状況の報告をお願いします」

蓮葉の言葉に、蓮華が最新の状況を報告する。


「はい、先ほど消防、及び警察による全ての屋敷内の探索を終了しました。今後は火災原因などの調査に移る予定です。最終的な遺体の収容数は、事前の情報にあった七名と一致しています」

やはり、逃げる事ができたのは次男だけだったようだ。歯を食いしばる。


「遺体の損傷が激しく、身元の確認はまだ完了していませんが、恐らくは──」

蓮華が、被害者と思しき屋敷の住民の名を読み上げる。


 小室家当主である小室正道、その妻である美世、正道の祖父母である道元と世瀨。

長男の道永、長女の綺世、三男の空道。計七名との事だった。


「丑二番部隊・部隊長の小室道永。それを補佐する隊長補佐の小室綺世の両名は、我々九州沖縄方面鬼霊対策室のかけがえのない隊員です……」


 蓮華が大粒の涙をこぼし、声を震わせた。

その言葉に、皆が目を伏せた。涙を拭い、蓮華が報告を続ける。


「現在、通報した次男の小室道決は、太宰府警察署内で対策室の職員を同席させて事情聴取を受けています」


 これは非常に難しい問題だ。

一介の警察に「獄鬼」と説明しても理解ができない。むしろ逆に放火の犯人と疑われても不思議じゃない。

その為、対策室の職員が間に入り説明し、認識の差異をできる限り無くす必要があった。


「統括室長の天網の探索結果通り、昨日の事件以降は、同様の事件及び獄鬼の目撃例は確認されていません。以上です」

蓮葉が私を見る。頷いて私は功徳室長へ尋ねた。


「功徳室長は、今回の件をどのように見ますか? 現場に残った霊相など、どんな些細な事でも構いません」

功徳室長が、顎髭を撫でながら目を伏せた。


「そうですなぁ、これは儂の推測ではございますが、獄鬼の仕業ではありませんな」

「!? 功徳室長それはどういう事ですか? 報告では数体の獄鬼と聞いていますが」


 獄鬼の仕業じゃない? それはどういうことなのだろう?

確かに報告書では──「数体の獄鬼」と報告が上がってきていた。

会議に参加する皆が驚く中、功徳室長が話を続ける。


「確かに残留していた霊相は、獄鬼の霊相に酷似しておりました。小室の次男坊は恐らく、鬼の姿は見ておらず、霊相だけで判断したのでしょう」


 熟練の祓い屋の人間であれば、霊相だけで鬼を判別することは、さほど難しい事ではない。

なるほど、実際には鬼は見ていなかった可能性があるのか。盲点だった。

霊相が獄鬼に酷似しているのであれば、急な襲撃で焦り、勘違いしてしまうのも無理はない状況だ。


「しかし、あれは全くの別物ですな。どちらかといえば殭屍(じゃんすぅいー)に近い性質の何かだと感じました。それでも別物ですがな」


──ジャンスゥイー? あ……キョンシーか。


「もしかしてそれって殭屍(きょんしー)ですか?」

私の質問に、功徳室長が頷いた。


「本土や、書籍などではそう呼ばれることが多いですな。墓場より作り出した人工の鬼、それが殭屍です」


 殭屍って……ほんまに存在するんや。まぁそりゃそうか、存在しなけりゃ歴史にも残らない。

そういえば、まだ幼かった頃に殭屍が出てくる映画があったな。

『霊幻道士』 という香港映画のビデオで、友だちの家でよく見ていたことを思い出した。


「では、今回の事件は、殭屍達が、何者かに操られて屋敷を襲ったというのか?」

天鳳の爺さんが、真剣な顔で尋ねる。それに対して功徳室長が答えた。


「先程も申し上げましたが、近しいのですが別物ですな」

「では何者なんだ」──天鳳の爺さんが先を促した。


「これも推測ですが、強制的に鬼を合わせて、使役できるようにした、出来損ないの夜叉でしょうな」


 強制的に鬼を合わせる……タイムリーすぎる話題に全身が凍りついた。

画面上の睡蓮を見ると、目を閉じ唇を噛んでいるように見えた。

しかも、出来損ないとはいえ使役できる夜叉って……一体どうなっているんや。


「…………」


 皆が一斉に黙り込み、それぞれ考え込んでいる。

私も頭をフル回転して、現在の状況を整理しようと努めていた。


「しかし、そんな事が可能なのか? 合成した夜叉を使役だと? あまりにもふざけているぞ」

静寂の中、天鳳の爺さんが口を開くが、どうしても声が荒くなる。


「天鳳室長。過去の長い世界の歴史では、殭屍然り、鬼や悪魔を使役していたという書物は数多く存在します。決して現実離れしている話ではないと思います」

月季がそう言うと、「月季、しかしやな……」と天鳳の爺さんの言葉が詰まる。


「何らかの禁忌の術式で、複数の鬼を強制的に合成し、それを東方由来の術式で殭屍化して使役した。要は日本式の殭屍といえますね」


 禁忌の術式か、やはり鬼混窮が悪用されているのだろうか?

禁書の原本が鬼戸家から持ち出されたのは、もう数百年も前の話だ。

なぜ今更になって表舞台に出てきたのだろうか。


「ふむ、儂も月季殿の意見が一番しっくりくるのぉ。鬼混殭屍(きこんきょんしー)と言ったところですかな」

鬼混殭屍──上手いこと名付けるものやなと少し失笑してしまう。


 睡蓮を見ると、少し目を伏せて何かを考え込んでいるようだった。

昨日の今日で、再び一族の禁忌である鬼混窮と似た術式が使用されたかもしれない状況だ、無理もない。


「睡蓮、今は事件の解決が優先です。鬼混窮のことは、私から各室長に共有しておきます」

「……承知しました。申し訳ございません」睡蓮が頭を下げる。


「では、これからの対策についての話をしましょう」

現状、犯人の犯行の動機がわからない為、迂闊に動くこともできない。


 話し合いの結果、九州沖縄方面対策室は引き続き、福岡県を中心に祓い屋一家の屋敷を警護する。

関西方面鬼霊対策室から、天鳳五木が二部隊を率いて、応援に向かう事になった。

緊急の対策会議が終了し一息つくと、天鳳の爺さんが、五木を先に帰して近づいてくる。


「静夜殿、先程のキコンキュウとは何だ? 鬼混殭屍と関係があるのか?」

天鳳の爺さんに、鬼火村での一連の出来事を説明する。


「そうか……睡蓮がえらいおとなしいと思ったらそういう事か。無理もないな……」


 そう言うと、天鳳の爺さんは、頭をガシガシと掻きながら会議室を出ていく。

それと入れ違う様に、一人の通信士が「失礼しますっ」と駆け込んでくる。私の耳元に手を添えt呟く。


「統括室長……愛宕日丿舞大社宇野大納言浄階様からの暗号通信です」

その言葉に、ガタッと乱暴に立ち上がる。


「内容はっ!?」

職員が周りを見渡してから、小声で読み上げる。



「機密報告アリ。栄神静夜殿、至急大社ヘ参ラレタシ」





この度は、当作品をお読み頂きありがとうございます。花月夜と申します。

当作品は、初めての執筆作品となります。

当方執筆に関して、完全な素人な為、至らない点が数多くあると思います。

ですが、書き始めたからには、皆様に読んでよかったと思って頂けるような作品にして行きたいです。

これからも、随時更新して参りますので応援いただけると幸いです。

ありがとうございました。今後とも応援よろしくお願い致します。


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