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鬼火村 四

※この物語はフィクションです。実在の人物や団体、寺社仏閣などとは関係ありません。

もし、面白いと感じて頂ければ、ページ下部にある《投票!!》のクリックへのご協力お願いいたします。



「乾杯っ!!」


 睡蓮の乾杯の音頭に、皆が高くグラスを掲げる。私も掲げて、一気にビールを飲み干す。

一斉に拍手が巻きおこり、ワイワイと宴会場に喧騒が広がり始める。


「静夜様、どうぞお召し上がりください。お口に合えばいいのですが」


 睡蓮がビール瓶を持ち、次の杯を注ごうと構えている。ありがたく注いでもらう。

それも一気に飲み干して、目の前に並ぶ地元の郷土料理に舌鼓を打つ。

その間にも、睡蓮がグラスにビールを注いでくれる。


「静夜様は、酒は結構いける口ですかな?」

隣に座る厳然の爺さんが尋ねてくる。


「いえ、いつも缶チューハイ一本程度です。普段家ではそこまで飲まないのですが、外ではそこそこ呑みますね」

「ほぅ、そうですか、では後ほど地産の良い地酒がございますので、是非ご賞味くだされ」


 ありがとうございますと答えて、補佐たちの様子を見る。

皆それぞれ楽しそうに、周りの一門の人間と、食事を楽しんでいるようだった。

しばらく、料理と酒に舌鼓を打ってから、気になる事を睡蓮へ尋ねる。


「睡蓮さん、ここにいる人達が現在の鬼戸神依の技術者の全員になるんですか?」

現在参加しているのが、鬼戸神威の技術者の全てと言うには、人数が少ない様に感じたのだ。


「静夜様、睡蓮とお呼びください」

あ……すみません……。彼女は、少し笑って理由を説明してくれる。


「私や蓮葉の様に、祓い屋兼技術者の人間も多くいます。そういった者は、大半が対策室へ属しています」

ああそうか。なるほど、納得のいく話だ。


「なるほどぉ。あ、そういえば、睡蓮の旦那さんはどちらに?」


 あ……やってしまったっ!? またやってしまった。

お酒の勢いで気持ちが緩んで、つい聞いてしまった。またなんか空気読めない人間になってしまう……。


「はい? とっちゃんですか? あちらにいますよ」

睡蓮が示す先では、蓮葉と雪華が一人の男性と笑顔で談笑している。


鬼戸朔間(きどさくま)。現在は、鬼戸神依の頭領を務めています」


 ほうほうと頷いていると、私達の目線に気づいたのか、朔間が酒瓶を持ってこちらへ近づいてくる。

酒瓶を横に置いて、私の正面に正座をすると、深々と頭を下げる。


──え? 何ですか?


「栄神静夜様、ご挨拶が遅れ申し訳ありません。私、鬼戸神依の頭領を務めております鬼戸朔間と申します。この度は睡蓮……いえ雪子の命を悪しき夜叉からお救い頂き、誠に有難うございました」

ああ……そういう事か。大切な嫁の命を救った人間として感謝しているのだろう。


「いえ、私は皆を死なせない為に、今の鬼霊対策室に入りました。ですから今回の件も、己の信念を貫いたままで、当然のことをしたに過ぎないと思っています」

真剣な顔で、朔間の口上に応える。


「寛大なお言葉、深く感謝致します。静夜様、是非私からの一杯をお受けください」


 朔間が、酒瓶を高々と頭上に掲げる。

有難うございますと、日本酒のグラスを受け取り注いてもらう。


「静夜様、それが先程お話した鬼火村で醸造した【鬼酔(おによい)】です」


 厳然が銘柄を教えてくれる。鬼酔か、睡蓮が使用する呪具の酒夢を思い出す。

飲んでみると、非常にスッキリとした呑口だが、中間に芳醇な香りが広がり、後口にキりっと締めてくれる。


「これはとても美味しいですねっ!──すごい好みの味です」

私のリアクションに、厳然と朔間が二ッと笑う。


「それはよかったです。数本シェアハウスへお送りしておきますね」

睡蓮が、上機嫌に微笑んでいる。


「母様……それでは多分、咲耶様と水様が、根こそぎ呑んでしまわれるかと……」

蓮葉がつぶやく。


「あら、では咲耶姫様にも数本送っておきましょう」

なんかすいません……。


 その後も宴は続き、日が変わる前に終了した。

翌日は、六時に起床し風呂に入る。朝食は、七時から私の部屋で、睡蓮と補佐達皆で頂く事になっている。

部屋へ戻ると、寝具は片付けられて、朝食の準備が進んでいた。


「静夜様、おはようございます」

鬼戸一門の女性が明るく挨拶してくれる。


 おはようございますと返して、準備が整うまで窓際の椅子に座り、外を眺める。

準備が整い、補佐達と睡蓮が部屋へ入り、朝食が始まる。


 朝食も、どこの高級旅館やねんとツッコミたくなるほど、とても豪勢だった。

炊きたてのご飯と鯛のお吸い物。漆塗りの木製の箱の中にいくつもの小鉢が並べられている。


 どれも郷土の料理なのだそうだが、ごはんが進むものばかりだった。

東北地方では保存食の文化が強い影響もあるのか、うまみの濃い味の料理が多い印象を受ける。


 朝食を終えて、そのまま本日のスケジュールについて打ち合わせを行う。

八時半にこちらを出発して、同集落内にある鬼戸家の本家屋敷へ向かう。


 そして屋敷内の蔵にある、所蔵されている禁書類を見せてもらう予定だ。

その後は、来た時と逆の行程で京都への帰路につく予定になっている。


 八時半を迎えて、皆が玄関を出る。正面には、既に昨日のハイエースが止まっている。

皆が揃っているのを確認して、車に乗り込む。



「さて、楽しい東北旅行だけでは終わられへんからな」





この度は、当作品をお読み頂きありがとうございます。花月夜と申します。

当作品は、初めての執筆作品となります。

当方執筆に関して、完全な素人な為、至らない点が数多くあると思います。

ですが、書き始めたからには、皆様に読んでよかったと思って頂けるような作品にして行きたいです。

これからも、随時更新して参りますので応援いただけると幸いです。

ありがとうございました。今後とも応援よろしくお願い致します。


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