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鬼火村 三

※この物語はフィクションです。実在の人物や団体、寺社仏閣などとは関係ありません。

もし、面白いと感じて頂ければ、ページ下部にある《投票!!》のクリックへのご協力お願いいたします。



 私と、室長補佐である燐と千草が、出迎えてくれた皆に頭を下げる。

頭を上げるが、まだ鬼火村の皆は、まだ頭を垂れたままだ。


「皆さん、頭を上げてください。こちらの都合で急遽押しかけてしまい、誠に申し訳ありません。しばらくの間、お世話になります」


 その言葉に、鬼戸一門の人々がようやく頭を上げる。

睡蓮と、老齢の男性が立ち上がり、男性が、杖を突いて一歩前に出る。


「栄神静夜様。お初にお目にかかります。鬼戸家先代当主、現在は鬼火村の村長を務めております。鬼戸厳然(きどげんぜん)と申します。この目で当代の栄神静夜様にお会いする事ができ、至極光栄でございます」

厳然と名乗る先代の当主が、ゆっくりと頭を下げる。こちらは敬礼を行い、それに応える。


「はじめまして、栄神静夜です。こちらこそ宜しくお願いします。では、あなたが当代の睡蓮のお父上ですか?」

「いえ、私は叔父にあたります。当代の雪子の父親であり、私の実兄である先々代の睡蓮は、三十年前に病で……」


 厳然が、少し肩を落として目を伏せる。

ああ、またやってしまったわ。余計なこと聞かんでええのに。

なんか話を広げようとしてミスするの多いよな、コミュ力なさすぎやろ。


「そうでしたか、大変失礼な事をお聞きしました。申し訳ありません」

厳然と睡蓮へ、頭を下げる。厳然が首を振り、話を続ける。


「いえいえ、とんでもございません。我が一族は、情報を部外に出すのを極度に嫌うのです」

それは、盛岡駅のロータリーでも蓮葉が言っていた言葉だ。


「その故、静夜様が知らずで当然なのです。大社でも我々の事は極秘機密の扱いです。どうかお気になさらぬよう」


 鬼戸家の多くの情報が極秘機密とされていることは、天鳳の爺さんから聞いていた。

鬼戸家の過去、鬼戸神依の技術、そして長い歴史に裏打ちされた特異な術式など──


 そうした情報が流出するのを恐れた大社の判断かと思っていたが。

実際はすべて鬼戸家自身の意思で、厳重に秘匿しているように思える。


「その通りでございます、静夜様。もう日も落ち、冷えてまいりました。お部屋へご案内いたします。こちらへ」


 睡蓮の案内で、屋敷内へ入る。高級旅館を思わせる玄関で靴を脱ぎ、スリッパに履き替える。

ここは迎賓館との事だった。一般の方は泊まる事はできないそうだ。贅沢なこって。


 一人では、持て余す大きな部屋へ案内される。女性陣は、近くの別室に案内されたようだった。

睡蓮が、お茶を入れて、炒った豆を使った和菓子を用意してくれる。


「静夜様。本日は、入浴後に鬼戸一門をあげての歓迎の宴をご用意させていただいております。ぜひ、お楽しみください。郷土料理ばかりですが、お口に合えば幸いです」

睡蓮がにこやかに話す。


「歓迎の宴って……そんな大層な事しなくていいのに……」

私の複雑な表情に、睡蓮が静かに笑う。


「鬼戸家として賓客を迎える事なんて滅多にある事ではありません。しかし、栄神家であられるあなた様は別でございます。むしろこのように静夜様を再び鬼火村へ迎える事ができ、我が一族にとって至極光栄なのです」


 さいですか──。

ひとまずは納得する事にした。


 何故、睡蓮がここまで栄神家に対して敬意を示すのか。

それには一応、筋の通った歴史上の背景がある。


 爺さんから聞いただけで、詳しくは知らないのだが──

戦国時代、当時の鬼火村周辺の大名たちによって鬼戸家殲滅の議が決まり、大軍による襲撃を受けた。

対抗するも滅亡寸前まで追い込まれた鬼戸家を、我が家の先祖が救ったのだという。


 爺さん本人も詳しくはないみたいで、一緒に隣で酒を飲んでいた当人の咲耶に聞いてみる。

だが、「もう忘れました」の一言で片付けられる。

一応、水にも聞いてみたが、顔を曇らせ「ごめんね……」と目を伏せられてしまった。


 彼女がこんな顔になるって事は、想像以上に過酷で壮絶な状況だったのだろう。

のちに、別の酒の席で少し水から詳しく聞くことになったが。

それがトラウマとなり、水を式として呼べなくなってしまった原因である。


 鬼戸家の人間である蓮葉にも聞いてみた事もあったが、大体爺さんから聞いた内容と大差なかった。

それ故に、蓮葉曰く鬼戸家は、栄神家への敬意を決して欠かさないと決めているのだという。

でも、そんな仰々しい対応はいらないんやけどな。私自身が救った訳でもないし。


──ちなみに、例の禁書に関しては、明日の朝食後に本家屋敷へ移動後、敷地内の蔵へ案内してくれるとの事だった。


 睡蓮に勧められるがままに、そそくさと浴衣へ着替えて大浴場へ向かう。

どこの超高級旅館やねんっ!!──突っ込まざるをえない大きく綺麗な檜風呂だった。

風呂に面する大きな丸窓からは、まるで絵画のようなライトアップされた雅な日本庭園が望める。


「またブルジョワか……鹿威しとか初めて見たわ。やっぱり祓い屋ってそんなに儲かるんか?」


 疑問を懐きつつ体を隈なく洗い、一人では広すぎる湯船に浸かる。

「あぁぁ……」と声が漏れる。シェアハウスの大浴場も悪くないが、やっぱり綺麗な景色を眺めての風呂は格別だ。


 風呂を上がり部屋へと戻る。卓にあるお茶を飲んみながらくつろいでいると、扉をノックされる。

立ち上がり扉を開くと、浴衣姿の女性陣三人と雪華が立っていた。


「静夜様。歓迎の宴の準備が整いましたので、大広間へご案内致します。こちらへどうぞ」


 雪華の案内で、大広間のの宴会場へ案内されて室内へ入る。

上座に睡蓮と厳然、下座に到着時に後ろで控えていた十数名の一門の技術者が座っている。


 雪華の案内で私は上座へ誘導され、睡蓮と厳然の間へ座る。

女性陣は、鬼戸神依の技術者たちと同じ、二列に配置した長卓の座布団へ座る。

卓には、見事な郷土料理の数々がぎっしりと並べられていた。


「皆さぁん、各自飲み物の準備をお願いしまぁす」


 雪華がそう言いながら、自分も席に座る。

皆の飲み物が準備できたのを確認したのか、睡蓮が立ち上がる。


「では皆さんグラスを、栄神のご加護に感謝を、そして鬼戸一門に永続の研鑽を──乾杯っ!!」




この度は、当作品をお読み頂きありがとうございます。花月夜と申します。

当作品は、初めての執筆作品となります。

当方執筆に関して、完全な素人な為、至らない点が数多くあると思います。

ですが、書き始めたからには、皆様に読んでよかったと思って頂けるような作品にして行きたいです。

これからも、随時更新して参りますので応援いただけると幸いです。

ありがとうございました。今後とも応援よろしくお願い致します。


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