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鬼火村 二

※この物語はフィクションです。実在の人物や団体、寺社仏閣などとは関係ありません。

もし、面白いと感じて頂ければ、ページ下部にある《投票!!》のクリックへのご協力お願いいたします。



 北上する新幹線の中、先程東京駅構内の駅弁センターで購入した仙台の牛タン弁当を美味しく頂く。

茶を啜りながら車窓を眺め、岩手県のJR盛岡駅を目指す。


「蓮葉、盛岡に到着してからの手筈はどうなっていますか?」

隣に座る蓮葉に、盛岡に到着してからの予定を確認する。


「はい、盛岡駅に我が村の者が迎えにくる手筈になっています」

蓮葉が、私の問い掛けに対して即座に答える。


「そうですか、わかりました。鬼火村、どんな所なのか楽しみです」

車窓から流れる田園風景を眺めながら呟く。


「ありがとうございます。良い所ですよ。ですが、とても田舎の集落ですから、静夜様にご満足いただけるといいのですが……」

彼女が少し眉を下げながら、苦笑する。


 東北新幹線がJR盛岡駅に到着したのは、一五時に迫る頃だった。

改札を出て観光客で混雑する構内を、蓮葉が先導して進む。

駅前のロータリーに出ると、蓮葉が何かに気づいたように「あちらです」と指さす。


 その方向には、旅館の送迎に使用するような大型ハイルーフのハイエースが停車している。

その前に、二十代と思しき黒髪の男性が立っている。蓮葉にとてもよく似ていた。

蓮葉は早足で彼に近づき、話しかける。


雪華(せっか)、久しぶり。出迎えありがとう」

雪華と呼ばれた男性は、じっくり蓮葉を眺めて頷いた。


「久しぶりだね、姉っちゃん。見違えるほど強くなったねぇ」


 その言葉に、「ふふんっ当然ですっ」と得意げに胸を張る。

そんな蓮葉を横目に、雪華が私たちの方へ向き直り、頭を下げる。


「はじめまして、鬼戸蓮葉の双子の弟の鬼戸雪華ど申します。遠い所、よぐおでんした」


 なるほど。さすが双子だけあってよく似ている。蓮葉をイケメンにしたらこうなんのか。

ん? おでんした? こちらの方言やろうか? どういう意味なんやろ?


「ちょっと雪華、わかりにくい方言は控えなさい」

蓮葉が肘で彼をつつく。やっぱり方言か。「よくいらっしゃいました」的な意味かな?


「あっ、失礼しました。皆様、遠路はるばるようこそお越しくださいました。鬼火村まではここからさらに二時間ほどかかります。長旅になりますが、どうかご容赦ください」

雪華が丁寧に頭を下げる。


「はぁー、蓮葉さんって双子だったんですか? 知りませんでした」

驚く燐の言葉に、千草もうんうんと頷いている。


「当家の者は、あまり情報を表に出さないので……」

蓮葉が少し気まずそうに笑う。


「雪華さん、わざわざ出迎えてもらいありがとうございます。短い期間ですが、お世話になります」


 雪華に荷物を預けて、車にそれぞれ乗り込む。蓮葉は助手席に座った。

燐と千草が中央部の座席に座り、私は後部座席に腰を掛ける。


 車が動き出すと、しばらくは発展した市街地が続いたが、すぐに住宅街となり田園風景へと変化する。

一時間半ほど走ると、日が暮れ始めて、森林に包まれていることもあり、あたりが薄暗くなる。


 しばらくすると、完全に日が落ちて、あたりが真っ暗になる。怖いな。

車は一車線の酷道を進み続ける。道の電灯は所々で見られるが、集落らしきものは見当たらない。

しかし、一〇分程走ると、左側の景色が開けて眼下にぽつりぽつりと家の明かりが見えてくる。


「もうすぐ到着します」

蓮葉が助手席から振り返り、到着が近いことを教えてくれる。


 道が片側一車線の道へと変わり、車が鬼火村の鬼戸集落内へ入る。

このあたりは集落の中心地なのか村役場、郵便局や商店。

コンビニこそ見当たらないが、居酒屋や喫茶店などの飲食店や、民宿なども数件確認する事ができた。


 思っていたより全然田舎じゃないな──というのが正直な感想だった。

「何もない山奥の田舎の村」──という先入観があったせいか、意外と充実していて驚いてしまう。

そもそも、田舎の定義ってなんなのだろうか?


「蓮葉。思っていたより、充実した村みたいですね。飲食店もけっこうあるみたいですし。民宿とかあるし」

素直な感想を、助手席に座る蓮葉へ伝える。


「いえいえ、十分田舎ですよ。ここは村の中心ですからまだ多少お店が並んでいますが。少し離れるとなにもありません。学校も村にひとつしかありませんし」


 彼女は少し恥ずかしそうに笑う。

たしかに数分も走ると、畑と住宅だけの風景に変わっていった。


 それから車が、さらに集落内を一〇分程進むと、大きな敷地内に入ってゆく。

敷地内には、睡蓮と老齢の男性。そして後ろに控えるように十数名の男女が立っていた。

睡蓮の隣の男性は誰やろ? もしかして先代? 後ろに並んでいるのが、鬼戸神依の技術者か?


 皆の前に、車がゆっくりと停車まると、控えていた女性の一人がワゴンのドアをひらく。

蓮葉と雪華が車を降りる。燐と千草も車を降りて、ドアの左右に別れて控える。

なんだか仰々しい出迎えに、若干緊張しつつ車内から出る。


 私が車を降りると、蓮葉と雪華が睡蓮の隣に並び、鬼戸一門の皆が跪く。

睡蓮が、頭を垂れたまま、歓迎の口上を述べる。



「お待ちしておりました。遠路はるばるご足労頂き、心より感謝致します。栄神静夜様」




この度は、当作品をお読み頂きありがとうございます。花月夜と申します。

当作品は、初めての執筆作品となります。

当方執筆に関して、完全な素人な為、至らない点が数多くあると思います。

ですが、書き始めたからには、皆様に読んでよかったと思って頂けるような作品にして行きたいです。

これからも、随時更新して参りますので応援いただけると幸いです。

ありがとうございました。今後とも応援よろしくお願い致します。


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