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天鳳千草 一

※この物語はフィクションです。実在の人物や団体、寺社仏閣などとは関係ありません。

もし、面白いと感じて頂ければ、ページ下部にある《投票!!》のクリックへのご協力お願いいたします。



  ズキッ──左腕に走る鈍い痛みと共に目を覚ます。

天井を見上げると、消灯しているLEDの電灯が見える。

全く見覚えのない部屋である事はすぐに理解できた。


「ん゙ん? ここどこや……」


 私はしくじった後、体の左上半身ををふっとばされてしまい、咲耶のお陰で一命を得た。

修復してもらったまでの記憶はあるが、それ以降の記憶がない。

おそらく、とうとう痛みと疲労に我慢ができずに落ちたのだろう。


 まだ再生された細胞組織が、完全には体に馴染んでいないのか、ズキズキと痛む。

上半身をゆっくりと起こし、ベットの右手にある窓を見る。

カーテン越しに高層ビル街と、大きな公園が見える。ここは堂上家の病院か?


 室内を見渡すと、部屋のソファで燐の寝ている姿が見える。

どうやら蓮葉と千草は先に帰ったのか、姿は見えない。


 私は、どれぐらい寝ていたのだろう。てか今何時や?

再度窓を見ると、丁度ビル街の間から朝日が登ろうとしているのがわかる。

という事は、今は早朝か。


 痛む体に顔を顰めながら、ベッドから降りてカーテンを開く。

登る朝日を見ている私の隣に、神妙な面持ちの龍姉妹が現れる。


「静夜様……」「静兄ぃ……」


 白は、申し訳なさそうに伏し目がちに、下を向いている。

紅は、とめどなく流れてくる涙を拭いながら泣いていた。


「ははっ……白、紅。二人共ホンマにありがとうな。お前らおらんかったら死んでたわ。ホンマありがとう」

二人に近づき、白と紅をぎゅっと抱きしめる。


「静夜様……。そのお言葉はあの方に……」

「うぅ……静兄ぃ……。ほんとによかったよぉ……うぅ……」


 その白の指し示すベッドの反対側には、咲耶と控えるように水が立っていた。


「咲耶……水……」

早足でベットの反対側へ移り、咲耶と水へ近づき、二人を抱きしめる。


「ほんまにごめんな……。ありがとう」

二人を強く抱きしめて、精一杯の謝意を伝える。


「もぅ……ほんとこの子は……」


 水が目に涙で貯めて、子どもをあやすように頭を撫でてくる。

ほんと水は、いつまでも経っても子ども扱いやな。


「静夜。これを……」


 抱きしめていた咲耶から──「はいはい」と言うように、パンパンと背中を叩かれる。

咲耶を正面に見据えると、咲耶が緑色の石を手渡してくる。

それは、ビー玉大の勾玉の様な形状をしていた。


「これは……?」

私は二人を交互に見て、この緑の石の正体を尋ねる。


「それは、静夜が夜叉を喰った際に、同時に腕に取り込まれた崩玉よ」

水が前に出て、説明してくれる。自分の左腕を見つめて、水を見る。


「たしか崩玉というのは、仏道で言えば穢物(けがれもの)の祓いで使用するものやんな?」

私は、今の知っている崩玉の知識を述べる。


「その認識は間違っていないわ。ですが、これは明らかな故意の誘導で、静夜に崩玉を喰らうようにしむけられていた。明確的にあなたを殺すつもりで仕掛けられた罠です」

咲耶が、静かな怒りを含んだ目で私を見つめる。


「…………でも水、なんで崩玉が夜叉の中で残る事ができたんや? 本来は夜叉の中で効果を発動して石に戻るやろ?」

私の言葉に、水が少し頭を捻り答えてくれる。


「あくまで推測なのですけれど、崩玉の上に更に栄神特有の霊相でしか解けない、時限爆弾のような結界を張っていたのでしょうね」


 栄神の霊相にのみ反応するって──どんな技術力やねん。そもそもそんな事可能なのか?

てか、どうやってウチの霊相の情報なんて調べたんや? もしかして対策室に敵の仲間がいるんか?


「なんやねんそれ……。かなり頭がいかれとんな……」

苛立ちベットに腰掛けて膝を叩く、そんな私の両頬を抓って水が怒った顔で私を睨む。


「静夜っ!──これからは私も、シェアハウス? ってとこで一緒に暮らしますからねっ」

「はぁ? なんで?」


 水が、突拍子もなくいきなり訳のわからない事を言いだした。

最近は、咲耶もリビングに入り浸ってるし、これ以上うるさい人間が増えるのはあまり好ましくないんやけど。


「だって……。静夜が心配だから……」

「心配って……水さん? 私をいくつやと思ってんねや……もう四十やで? さすがに子供扱いがすぎるやろ」


 いいんですぅ。もう決めたんだからっ!──と頬を膨らませる水と、呆れたようにため息をつく咲耶。

そんな会話の騒がしさに、燐が目を覚ます。


「静夜様?」

燐が、ソファから上体を起こして、皆がいるこちらを見る。


「燐さん、おはようございます。昨日は大変ご迷惑をお掛けしました」

燐へ、今回の謝罪の意を伝えて、深く頭を下げる。


 燐が、咲耶と式達がいることに気づき、ソファから立ち上がると、涙を浮かべて跪く。


「木花咲耶姫様、そして偉大なる栄神の式神様方──この度は、静夜様をお救い頂き本当にありがとうございました。本当に……ありがとうございましたっ!」

そんな低頭の燐に、咲耶が近づき閉じた扇子で燐の頭をポンと叩く。


「燐、あなたも早く白か紅と、対等に勝負できるぐらいにはなりなさい」

燐が白と? さすがに無理やろ? もしできたとしても、それはまだまだ先の話やろ?


「えっ?」


 燐自身も、明らかに無茶な指示に戸惑い、キョロキョロ周りを見渡す。

ただ咲耶は強気に微笑み、さらに扇子でポンポンポンポンと燐の頭を叩く


「素質は十分にあります。あなたが霊相の底を今の数倍に上げて、その腕の霊具を自由に使いこなせるようになれば、それぐらいは十分可能です。精進してください。これからもしごいてあげますから」


 咲耶の言葉に燐は、腕にはめている明翠燐光を見つめる。

今の数倍の霊相か──血反吐を吐くような、途方もない修練が必要になるやろうな。

まぁ、燐が咲耶のしごきに耐える事ができれば、決して不可能ではないのかもしれない。


「はいっ!! 精進致しますっ!! 今後ともご指導宜しくお願い致しますっ!!」

燐が立ち上がり、瞳に大きく緑光の炎を灯す。


 咲耶はそれに頷くと、振り返り「では、私達は帰りましょう」と告げて姿を消す。

「静夜、また京都でね」と、水が頭を撫でてから姿を消す。

そして続くように、白が微笑んで頭を下げて、紅が笑顔で手を振って姿を消した。


 咲耶に渡された崩玉だった石を眺める。

一見は、ただの博物館などで見られるような勾玉に見える。

だが、これに霊相を込めて、経文術式を施すと崩玉になる。


「静夜様……それは?」

燐が近づき、私と同じく興味深くその石を見つめる。


「私の左上半身をふっとばした石ですよ。見ます?」

燐が、石をつまんで全体を確認する。急に燐の顔が強張る。


「あの……もしかしてこれ崩玉ですかっ!? では犯人は仏道の人間──」

慌てた様子で、顔を蒼白させて私を見る。


「まだわかりません。燐さん、とりあえずそれを大至急で、大社の宇野浄階へ送ってください」

承知しましたっ!──燐が急ぎ部屋を出ていく。


 ベットから立ち上がり、朝日が昇りきった窓の前に立つ。

鬼達の急増、秋葉原の夜叉、岩手の渡り、全てが同一の集団による所業なのか?

犯人を突き止めたいのはやまやまだが、その前にやるべき事があった。


 天網による、急激な霊相の消費。

反応する鬼が大量であったり強力なほど、消費する霊相も急激に増える。

今回の件を通して、どうしてもやらなければいけない事を確信する。



「天鳳千草、天網には彼女が必要や」


この度は、当作品をお読み頂きありがとうございます。花月夜と申します。

当作品は、初めての執筆作品となります。

当方執筆に関して、完全な素人な為、至らない点が数多くあると思います。

ですが、書き始めたからには、皆様に読んでよかったと思って頂けるような作品にして行きたいです。

これからも、随時更新して参りますので応援いただけると幸いです。

ありがとうございました。今後とも応援よろしくお願い致します。


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