表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/48

岩手ノ渡 九

※この物語はフィクションです。実在の人物や団体、寺社仏閣などとは関係ありません。

もし、面白いと感じて頂ければ、ページ下部にある《投票!!》のクリックへのご協力お願いいたします。


岩手ノ渡 九



-関東方面鬼霊対策室-


 天網のモニターには、千里眼からの映像が映し出されている。

まさに今──人間と夜叉の、熾烈な戦闘の火蓋が切られようとしていた。

画面上では、夜叉と五名の祓い屋が対峙している。


 自らの名を、黒蜘蛛のマルディラと名乗る高位の夜叉。

その夜叉と対峙する睡蓮と、支援部隊の部隊長四名。

相手の力量によっては、部隊長どころか睡蓮自身でさえも、有効打を与える事ができるのか、不安が残る。


 そもそも、睡蓮は戦闘向きの術者ではない。

先行及び支援部隊の、全体的な術式でのサポートを行い。

相手の戦力を、無力化することを得意としている。


 支援部隊長達も、防御障壁や補助術式には長けてはいるが、攻撃性能は先行部隊長には及ばない。

攻撃部隊がいない今、圧倒的に分が悪い状況だが、モニターから見える睡蓮は落ち着いているように見える。


 戦闘が開始される。部隊長の四名が四方へ散り、睡蓮が己の呪刀を抜刀し、術式を展開して構える。


「母様……」蓮葉が、不安そうにモニターを見つめている。


「蓮葉さん大丈夫です。あの方は、あなたのお母様であり、歴史ある鬼戸家の当主」

燐が蓮葉の隣に立ち、背中に手を添える。


「必ずやこの状況を好転してくださいますよ。だから信じましょう」

燐がにこりと微笑む。


 蓮葉は、その言葉に顔を引き締めてモニター見つめたまま「当然です」と強く答える。

自分の母親が、生死の危険を伴った戦闘に挑もうとしているのだ、不安にならない訳がない。


「あの……統括室長、進言よろしいでしょうか?」

千草が私の横に立ち、進言を求める。私は頷き返して、千草へ先を促す。


「この天玉を使ってください。統括室長、今のままではあなたが危険です」

千草が、私の傍まで近づき、手の内に生成した天玉をこちらへ差し出してくる。


 私はそれを手で抑えて、首を横に振る。

「いえ、それはまだ使いません。待機していてください」


 千草の生成した天玉は、いざと言う時に使用するつもりだ。まだ今ではない。

私は比較的霊相の回復は早い方なので、できるだけ自力で回復しようとしていた。

スイを呼べば──と頭をよぎるが、どうしても使う気にはなれない。トラウマなのだ。


「いけません。確かに統括室長の霊相は、時間と共に少しずつ回復しています……」


 千草が正面に回り、私の顔を覗き込む。そして熱を計るように、私の額に手を添える。

そんなまじまじ顔を見られるのは、慣れてないから恥ずかしいんやけど……。


「ですが、統括室長は霊相欠乏症れいそうけつぼうしょうの症状が出てしまっています」


 霊相欠乏症とは、急激に大量の霊相の消費してしまうことで発生すつ症状だ。

発生すると呼吸困難、意識の混濁、手足の痙攣が発生し、意識を失うことが多い。


 本来は、脳がリミッターをかけているので、欠乏の症状が出る事はない。

だが、予期せぬ霊相の消耗に対しては、脳が対処できない為、症状が発症する。


 現に、今の私は満身創痍で、視界はぼやけ手足は細かく震えている。

丙が早池峰で動けなくなってしまった原因も、おそらく霊相欠乏症が発症したからと考えられる。


「まだ、これから霊相を使用されると言うのであれば、なおさら使用してください。欠乏の症状がこれ以上ひどくなると、霊相の回復すらできなくなります。私の天玉には症状緩和の効果がありますから」


 燐と蓮葉が、振り返り不安そうに私を見る。

さすがは天鳳家。霊相の扱いに関しては随一の一族だ。的確に診断結果を突きつけられて反論ができない。

温存しておきたかったが、素直に応じる事にする。やはり千草には同伴してもらって正解だったようだ。


「わかりました。ありがたく頂きます」

「進言をお聞き頂きありがとうございます。こちらの天玉に手を添えてください。どちらの手でもかまいません」

千草が差し出す天玉に、震える手で添える。


「ぎっ!? ぐぁっ!?」

「!? 静夜様っ!?」燐が振り返る。


「四輝院補佐、大丈夫です。急激な霊相補給への反応です。数秒で治まります」

千草が、あわてる燐へ事情を説明する。


 急激な大量の霊相補給で、脳神経が過敏に反応し、全身に激痛が走る。

だが、痛みは数秒ですぐに収まり、欠乏の症状も消える。とんでもない効果や。

二割を切っていた霊相が、六割近くまで回復している。


「すごい……これが天玉の効果ですか。予想以上です……」


 素直に感動して千草を見る。これやばいですね。

千草は安心したように、私を見つめて微笑んでいる。


 私の四割以上の霊相を、千草は自身の三割の霊相で譲渡回復したのだ。

とんでもない霊相貯蔵量なのだろう。只々驚愕してしまう。


 でも、なんでやろ──なんで千草から譲渡された霊相が、スイと同じ霊相なんや?

全く同じではないが、ほぼ同一と言ってもいい。スイと千草は関係ないやろ? いやまさかな。


「千草さん、ありがとうございます。これなら短時間やけど、白だけでもあそこまで送れるかもしれん」

私が、お礼を述べて天網のモニターに目を移そうとすると



「……統括室長、もう一つ提案したいことがあります」

千草が、極めて真剣な表情で、私の前に立つ。


「千草さん?」


この度は、当作品をお読み頂きありがとうございます。花月夜と申します。

当作品は、初めての執筆作品となります。

当方執筆に関して、完全な素人な為、至らない点が数多くあると思います。

ですが、書き始めたからには、皆様に読んでよかったと思って頂けるような作品にして行きたいです。

これからも、随時更新して参りますので応援いただけると幸いです。

ありがとうございました。今後とも応援よろしくお願い致します。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ