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岩手ノ渡 六

※この物語はフィクションです。実在の人物や団体、寺社仏閣などとは関係ありません。

もし、面白いと感じて頂ければ、ページ下部にある《投票!!》のクリックへのご協力お願いいたします。



「では、いきますっ」鉄の簪を地面へと突き刺す。


 酒夢が発動し、早池峰の頂上一帯の鬼の行動を制限する。

ぐらりと酩酊したように動きを止めた大鬼へ、各部隊が部隊長の指示に従い攻撃を仕掛ける。


 丙は、そんな動きの止めた大鬼達の間を、すり抜けて岩の壁を走り、迅速に不審な杭を目指す。

後方から、改めて木像の杭を見る。その瞬間、びりびりとものすごい悪寒を感じる。


 何ですか、この醜悪な禍々しさは、あれは……あの杭は鬼を呼び寄せているだけではない? まさか罠?

その間にも、丙の存在に気づいた獄鬼達が、丙へ一斉に襲いかかる。

酒夢で動きが制限されているため、丙は余裕を待ってそれを次々と躱しながら、杭へ辿り着く。


「丙っ!! 一度杭の破壊は中止してく」「よっしゃー!」


 罠であると判断し、慌てて丙を一度止めようとする。しかし、間に合わず丙が杭を両断する。

その時、両断された杭から禍々しい呪怨が発生し、周りが闇に包まれる。

あまりにも禍々しい呪怨に、体が震えるのがわかる。


「!? 丙っ! 状況を教えてくださいっ!」真っ暗で何も見えない状況で、丙に状況を確認する。


「見……せん」丙もやはり何も見えない様だった。丙の返答の様子がおかしい。

更に時間が経過するにつれ、禍々しさが空間を満たしてゆく……。


「丙、無事でいて」



-関東方面鬼霊対策室-


「くそっ! やられた……」


 真っ暗になった天網の画面を見て、慌てて椅子から立ち上がる。

蓮葉へ指示を出し、千里眼を早池峰から遠ざける。高圧電線沿いに数キロ移動すると、視界の闇が晴れる。


「これは……早池峰の上層部分が闇に包まれています」

燐が、画面を見つめてつぶやく。


通信機からは、混乱している隊員達の通信だけが入ってくる。

「隊長、何も見えませんっ。ライトもつきません」

「室長、室長はどこですかっ!」


「全隊員、落ち着くんや。無闇に動かずに、少しでも周りの状況を確認するんや」

通信機で呼びかけるが、通信異常が発生しているのか、隊員達のか反応は無い。


「睡蓮室長、聞こえますか? 応答してくださいっ! 睡蓮室長っ!」

何度も通信機へ呼びかけるが、やはり反応がない。


「統括室長っ! こちらからの信号が届いていませんっ! おそらくですが、あの黒い闇が信号を阻害していますっ!」

通信士が、慌てた様子で報告する。


「くそったれ……」


 やられた。あの杭は破壊するべきではなかった。恐らく状況が、ここから一気に変わる。

天網に近づこうとすると、燐に「ダメですっ」と再び静止される。


「あかんっ、非常時やっ! 千草さん、天玉を自分の霊相の三割で一つ作ってください」千草に指示を出す。

千草は、「はいっ」と立ち上がり、天玉作成の準備に入る。

天網に手を添える。再びごっそりと霊相をもって行かれる。前のめりに倒れる。


「静夜様っ! いけませんっ!」燐が倒れる私の肩を支える。なんとか堪えながら画面を見やる。

画面には、早池峰にいた大量の鬼達のマーカーの殆どが画面から消え失せている。


「くぅ、やっぱり罠か……、くそっ……」椅子に倒れ込み、顔を顰める。もっと慎重になるべきやった。

杭が刺さっていた付近に、黒い丸の周りに紫で縁取られた大きなマーカーがあることがわかる。


「あのマーカー……まさか夜叉ですか? 本当に生まれるなんて」蓮葉が呟く。

「しかも、ただの夜叉やない。あれはおそらく……」


 その時、早池峰を覆っていた闇が、一瞬にして杭があった場所に収束する。

「蓮葉っ、杭の場所へ」蓮葉に指示を出して、急いで杭の場所に戻る。


 そこには、二体の獄鬼が丙を捉えて持ち上げている。

そして、一体の見覚えのある夜叉が、それを微笑み見上げて立っていた。



-早池峰山頂-


「丙っ!」「室長補佐!」「丙さんっ!」


 闇が晴れ、月明かりが二体の獄鬼に持ち上げられている丙を照らす。

私達の呼びかけにも、丙の反応はかすかに動く程度だった。

どうやら、杭の近くにいた丙は、杭を両断した時に、根こそぎ霊相を持って行かれてしまっているようだった。


 霊相欠乏症、急激に大量の霊相を失うことによって、意識が混沌し動くことができなくなる。

あれでは、当分は話すことすらできない。

視線をこちらへ向ける事はできているので、意識はあるようだ。


「くっ!」数枚の赤い札を袖から取り出し、三体の鬼達へ目掛けて飛ばす。


 赤い札が対象に触れる瞬間、割れた杭の周辺に轟音と共に巨大な複数の紫雷が落ちる。

獄鬼が触れれば、一撃で殲滅できる威力ではあったが。

夜叉の生成した防御結界によって、紫雷はすべて阻まれてしまう。


「!?」赤札を楽々と防ぎますか、ただの夜叉ではないですね。


 唇を噛む。夜叉がゆっくりとこちらを振り向き、ニコリと笑顔でこちらへ頭を下げる。

その所作は、まるで貴族の紳士のようである。

ゆっくりと頭を上げた夜叉は、微笑みを崩さずに口を開く。



「ああ、これは大変失礼致しました。あまりにも皆弱々しかったので気がつきませんでした。皆様はじめまして。ありがたくこの贄はいただきますね」





この度は、当作品をお読み頂きありがとうございます。花月夜と申します。

当作品は、初めての執筆作品となります。

当方執筆に関して、完全な素人な為、至らない点が数多くあると思います。

ですが、書き始めたからには、皆様に読んでよかったと思って頂けるような作品にして行きたいです。

これからも、随時更新して参りますので応援いただけると幸いです。

ありがとうございました。今後とも応援よろしくお願い致します。


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