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咲耶 四

※この物語はフィクションです。実在の人物や団体、寺社仏閣などとは関係ありません。

もし、面白いと感じて頂ければ、ページ下部にある《投票!!》のクリックへのご協力お願いいたします。



 ぴたりと、サクヤの動きが止まり、顔から微笑みが消える。

「……これは重力柱ですか? おもしろいですね」

 サクヤが、蓮葉へ視線を移す。


 蓮葉は、未だに黙ってサクヤを凝視していた。

 どうやらサクヤは、重力柱の札によって、相当な重力を受けて、動けなくなっているようだ。


 それは、燐も瞬時に理解したようで、急遽構えを突きへと変更する。

 そんな殺気を感じ取ったのか、サクヤが蓮葉から燐へ視線を戻した。


 ダンッ!! と一気に距離を詰めた燐は、すでにサクヤの目の前にまで迫っていた。

「ふふっ」とサクヤが再び微笑む。


 燐の渾身の一突きが、重力柱で身動きができないサクヤへと放たれる。

 しかし、それをサクヤは、平然と左手を前へかざして神晶防壁を生成する。


「嘘でしょ!?」


 ガキンっと大きな音と共に刀が弾かれて、燐は後ろへ転がるように倒れこむ。

 蓮葉も予想外の事態に、さすがに動揺しているようだ。


 この神晶防壁は、守りを得意とする祓い屋が使用する防御障壁結界の上位の術式である。

(式が防御障壁? でも、ハクって式の少女も人払いの結界を作っていたし、不思議じゃないですね)


 燐が困惑する中、サクヤは右手を振るって、ガシャン!!と重力柱を破壊してしまう。

 あっさりと重力柱を破壊され、それに焦った蓮葉は、急いで次の行動へ移る。


 既にサクヤの頭上に放っていたもう一枚の札を発動し、三本の紫炎の槍を落とす。

 それをサクヤは、余裕を持って後ろへ跳んで躱してしまう。


 しかし、サクヤが跳んだ先に設置していた、罠型の札が起動する。

 大きな轟音と共に、爆発が起こりあたりに紫煙が吹き荒れる。

 うわ、これ整地せなあかんのちゃうん? あ、バーサクヒーラーができるか。


「当たった?」燐が、目を凝らして成果を確認する。

 だが、サクヤは傷ひとつなく、爆発地点のさらに大きく後方に立っていた。


「え? 一飛であの距離まで跳んだの?」燐が驚愕する。

 双方、一旦距離を取って、相手をみやる。


「「…………」」


 サクヤが、ゆっくり二人へと近づき、口を開く。


「そうですね。あなた達は、まだ強者との戦いの実戦経験が、あまりにも少なすぎるのでしょうね」

 そう言いながらサクヤが、ふたりへとさらに歩みよる。ふたりをみやり、諭すように話す。


「まずは、あなた」燐を見やる。

「はい」燐が答える。


「極めて根本的な問題が、あなたにはふたつあります。まず、相手をよく見るようにしなさい。どんな相手かも知らずに勝てるなんて思わないように。うぬぼれすぎすです。反省しなさい」


 サクヤのいう通りだ。決起勇ましく特攻するのは美徳で悪くはないが、まずは相手のことを知るべきだと思う。

 相手の間合いや息遣い、そして行動のパターンを把握することによって、状況は必然的に大きく変わってくる。

 燐が突っ込んだ後も、蓮葉がずっと黙ってサクヤを凝視していたのは、相手を分析していたのだろう。

 そういった利己的な行動を取ることができるのは、蓮葉の方が、優れているのかもしれない。


「それと、あなたはその霊具、全く使いこなせていませんね。それじゃただのなまくら刀と変わりません。もっと己の霊相の底を上げなさい。とてもいい刀なのに、宝の持ち腐れです」


 ああ、やっぱり言うと思ったわ。


 燐の明翠燐光は、霊具の中では名刀中の名刀なのだが、霊相によって引き出せる性能が、大きく変わる。

 燐は決して霊相が低い訳ではない、決して弱くもない。

 ただ、己に貯めておける容量と、霊具に注げる量が少ないのだ。


 それゆえに、霊相を管理しながら戦う上で、どうしても注げる霊相に限度が生じてしまう。

 いくら本人が、全力で霊相を注いでいるつもりでも、脳が本能的にリミッターをかけてしまう。

 そのため、本来の力を出すことができない。


「……はい」燐が素直に頭を下げる。自身も思い当たる事があるのだろう。


「そして、あなた」蓮葉をみやる。

「はい」蓮葉が答える。


「その呪具は、あなたが作ったそうですね?」

 サクヤが蓮葉の呪具をみやる。


「そうです」蓮葉は、素直に頷く。

「用途としては、鬼の殲滅ですか?」


 蓮葉は、少し不思議そうな顔をして、首をかしげる。

「はい……そのつもりで作りました」

 サクヤは、それを聞くと、ため息をつき蓮葉へ問う。


「なぜ共に戦っている者に対して、補助の札がないのですか?」

「え?」


「本来、鬼退治は個人で行うものではありません」

「!?」


 蓮葉が、サクヤの言葉に固まり俯く。

「共に協力し鬼を殲滅するのが、本来の祓い屋ではないのですか?」

「はい……その通りだと思います」


「ならば、攻撃のみに徹するのではなく、補助の札も作りなさい」

「あなたなら、防壁解除の札や、共に戦う祓い屋の霊相を、増幅させる札ぐらい作ることは可能でしょう」

「…………」


「あ、しかしあの重力柱は、なかなか良かったと思いますよ。あれには少々驚きました」

 いや、普通に腕上げてなかったか? 右手一本で破壊してたし。


「ありがとうございます……」

 蓮葉が、素直にサクヤに対して頭を下げる。サクヤもそれに対してうなずく。


「次からは私も攻撃します。覚悟してください」


この度は、当作品をお読み頂きありがとうございます。花月夜と申します。

当作品は、初めての執筆作品となります。

当方執筆に関して、完全な素人な為、至らない点が数多くあると思います。

ですが、書き始めたからには、皆様に読んでよかったと思って頂けるような作品にして行きたいです。

これからも、随時更新して参りますので応援いただけると幸いです。

ありがとうございました。今後とも応援よろしくお願い致します。


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