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咲耶 一

※この物語はフィクションです。実在の人物や団体、寺社仏閣などとは関係ありません。

もし、面白いと感じて頂ければ、ページ下部にある《投票!!》のクリックへのご協力お願いいたします。




「はぁ……はぁ……」

「くっ……」


 燐と蓮葉が、満身創痍の状態で芝生の上に倒れている。

起きあがる事も難しいのか、息を荒げるのみで動かない。


 まわりを見わたすと、芝生が広がっている。

それを囲むように木々が茂り、そこから寒蝉の唄が聞こえてくる。

夏の終わりが近いことをつげていた。


 再び、二人へ視線を戻す。


 まだ、しばらくは動けないのだろう、どちらも倒れたままだ。

二人の前には、一人の女性が立っていた。


「ふふ……まぁこんなものですかね」と微笑みながら、二人を見おろしている。

「原石としては悪くはないですが、まだまだ荒削りですね。精進しなさい」



◇◆◇◆



 早朝、目覚ましのアラームが鳴り目を覚ます。

窓を見ると、空がうっすらと紫色に明けはじめていた。

目覚ましのアラームを止め、起き上がり背を伸ばす。


 こちらで共同生活を始めてから、既に三日が経とうとしていた。

就業にあたっての諸手続や、対策室の準備作業などで、バタバタと時間が過ぎていた。


 立ちあがり、冷蔵庫から無糖の炭酸水を取りだす。グラスに注ぎ一気に飲みほした。

動きやすい服装に着替え、出かけるために身支度を整える。


 対策室に入るまえに、体をある程度整えておきたいと考えていた。

爺さんが亡くなって、道場も使わずに自室に引きこもって、自堕落な生活や仕事をするようになった。

たまに、無理やり呆れた表情のサクヤに、道場へ引きづられる事もあったけど。

それでも、明らかな運動不足に陥っていたのだ。


部屋をでて、階段を降り玄関へむかう。


 リビングの前をとおると、燐が既に起床しソファに腰掛けてテレビをみていた。

「静夜様、おはようございます」

燐が私に気づき、こちらへ向きなおる。


「おはようございます。燐さん、朝はやいですね」

時計を確認すると、五時を少し過ぎたぐらいだった。


「目が覚めてしまいまして。静夜様は、今からどちらへ?」

首をかしげて、燐が尋ねてくる。


「少し体を動かしてこようとおもって、ずっと運動不足でしたので」

燐が私の姿を下から上へ見やる。え? なにか変ですか……?


「では、わたしもご一緒してよろしいでしょうか?」

どうやら時間を持て余しているのか、一緒に行きたいようだ。

拒否する理由も特にない。ご一緒してもらうことにした。


「ええ、もちろん構いませんよ」

「では準備してきます。あと蓮葉さんにも声かけてみます」と燐が階段をあがっていく。


 朝のニュースを眺めながら、しばらく待っていると、ふたりが動きやすそうな服装で二階から降りてきた。

「静夜様、おはようございます。私もご一緒させてください」

蓮葉が、まだすこし眠そうに挨拶し頭をさげる。朝は苦手なのかな?

ロングの黒髪を団子状に纏めてサンバイザーを付けている。


 燐は髪を首の後ろで纏めて、白いキャップを被っていた。

服装は共に、ジョギング女子と言ったような印象だった。

「おはようございます。もちろんです。では行きましょうか」


「「はいっ」」


 三人で玄関をでる。見あげると、空は先程より明るくなっていた。

「どちらまで行かれるんですか?」

燐が屈伸しながら尋ねてきた。


「ここから二十分程走ると、運動公園があるみたいなので、そちらへ向かおうかと」


 昨夜、自室のPCで走って行ける大きな公園を調べておいた。

「わかりました。では、私達はついていきます」

皆で軽く柔軟をおこない、体をほぐしてから、走りだす。


 走りだすと、燐と蓮葉の顔色がかわる。

軽いジョギング程度だと思っていたのだろう。二人と差がひらいてゆく。


「えぇ?」燐の驚いた声を上げる。

「速い」蓮葉が表情をかえずにつぶやく。


 予想外のペースに、二人は必死に後を追う。

二人共、運動神経は良い方なのだろう、ピタリと私の後ろに並ぶ。

一キロメートルを、三分三十秒程度のペースで、京都の街並みを駆け抜けてゆく。

まだ早朝なので、歩道を歩いている人はまばらだった。


 だが、こんなペースで街中を走る人も珍しいのだろう。

こちらを、物珍しげに見る人は多かった。


 一〇分程走ると、二人のペースが少しおちてきたので、私もペースをおとす。

既に二人は、だいぶ息が上がっているようだった。


「大丈夫ですか?」

丁度、歩道の信号が赤になったので、信号で止まり振りかえる。


「大丈夫です」燐が、ハッキリとした声でこたえる。

「私も大丈夫です」蓮葉もハッキリとこたえる。


 息こそ上がってはいるが、まだ余裕があるみたいだ。

基礎体力は問題ないなと頷き、再び走り出す。

さらに一〇分ほど走ると、目的地の公園に到着した。


 ペースを落とさず、そのまま公園内にある芝生広場へむかう。

芝生広場へ到着後、ベンチで休憩をとることにした。


 近くの自販機で購入したお茶を、二人に渡す。

息の上がった二人が、ありがとうございますと礼をのべる。


「静夜様、本当に三十九歳なんですか? 信じられません。あまり息も上がっておられませんし……」

蓮葉が、肩で息をしながら問いかけてくる。


「ん? そうですよ? 昔は、大体一キロを三分位のペースで、一〇キロぐらい走れてたんやけどなぁ」


 先代の爺さんとサクヤにしごかれていた全盛期は、実際にそれぐらい走らされていた。

まあ、式達と契約したからこそ走れた、という理由もあるんやけどな。

契約してからは、明らかに身体能力が向上していた。


「元気すぎます……プロのアスリートレベルじゃないですか……」

燐が、呆れているのか、何とも言えない表情でこちらを見ていた。

呼吸は既に整っているようだった。体幹は燐の方が優れているようだ。


 しばらく休憩してから私は立ちあがり、少しドヤ顔でふたりの前に立つ。

「走っているときに、思いついたんですけど……」ふっふっふっ

以前に京都御所でふたりから、指導してくれと頼まれたのを思いだしたのだ。


「折角三人が揃っているんだし、ここで戦闘訓練をしましょうか」

「「!?」」

ふたりが、驚いた表情でこちらを見あげる。


「お二方の、今の実力も知っておきたいですし」二人が立ち上がる。


「お願いしますっ!!」

「是非、ご指導ください」



この度は、当作品をお読み頂きありがとうございます。花月夜と申します。

当作品は、初めての執筆作品となります。

当方執筆に関して、完全な素人な為、至らない点が数多くあると思います。

ですが、書き始めたからには、皆様に読んでよかったと思って頂けるような作品にして行きたいです。

これからも、随時更新して参りますので応援いただけると幸いです。

ありがとうございました。今後とも応援よろしくお願い致します。


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