三条大橋 二
※この物語はフィクションです。実在の人物や団体、寺社仏閣などとは関係ありません。
三条大橋 二
三条大橋の歴史はとても古く、最初に造営されたのは室町時代といわれている。
その後、戦国時代の末期には、豊臣秀吉が北条氏征伐を前に、臣下の増田長盛に命じて三条大橋の修復・架橋を行わせた。
三条大橋の周辺でも、特に歴史的に有名なのが「三条河原の処刑場」である。
かつて【三条河原】と呼ばれたこの地では、処刑やその後の晒し首が行われていた。
ここでは、歴史に名を残すさまざまな人物が処刑、あるいは晒し首にされた。
中でも有名なのが、朝廷に対立し、討たれた後に晒し首とされたオカルト界のレジェンド──現代でも「日本三大怨霊」の一人とされる平将門。
他にも、安土桃山時代に名を馳せた大盗賊で、現代ではゲームキャラにもなった石川五右衛門は、ここで釜茹での刑に処された。
さらに、天下人・秀吉の怒りを買い、謀反の罪を着せられた豊臣秀次。彼は切腹ののち晒し首にされ、その目前で一族も処刑された。
名のある武将・石田三成、新選組局長・近藤勇も、晒し首となったのはこの三条河原だった。
これほどの歴史が刻まれた場所だが、現代にその事実を知る人がどれほどいるだろうか。
今となっては、そんな物騒なイメージは薄れ、石碑だけが歴史を伝えている。観光地として賑わう今の姿からは想像もつかない。
そして──夏の三条大橋といえば、やはりこれだろう。
鴨川沿いに並ぶ納涼床。
五条から二条にかけて続くこのエリアでは、川を眺めながら、鴨川鮎や季節の天ぷら、京豆腐などが楽しめる。
日が暮れ始めると、納涼床にぶら下げられた提灯に明かりが灯り、夏の京都らしい風情がいっそう際立つ。
川辺では、カップルたちが“等間隔”に座るという、ある意味おなじみの光景も広がる。
──とはいえ、今は真夏の昼間。さすがにカップルの姿は見えず、観光客や散歩中の人々が歩いているだけだった。
「柿ピー、次どうする? 飲むにはまだちょっと早いやろ?」
スマホで時間を確認すると、15時32分。
空を見上げれば、太陽はまだ高く、容赦のない日差しが降り注いでいた。
「せやなぁ……とりあえず、河原町の商店街まで歩いてみよか。喉かわいたけどな」
「ええな。どっか途中に立ち飲み屋とか、ええとこないやろか」
「それもアリやなぁ。新しい店できてへんかなぁ」
「結局飲むんかいって話やけどな」
「せやな」
──ちなみに「柿ピー」とは、柿本司(かきもと つかさ/39歳・独身)こと、私のあだ名である。
もう20年以上呼ばれてるけど、慣れすぎてなんも感じへん。ただのつまみや。
「立ち飲み屋」のワードで少しテンションが上がり、河原町商店街へ向かって歩き出す。
三条大橋から鴨川を眺めながら歩いていると──そこで、気づいてしまった。
河原に、異様な存在が“見えて”しまったのだ。
「…………」
何も見ていない。見ていない、はず。
無理やりに視線を河原町商店街の方向にそらす。
……あれはきっと、暑さのせいで見えた幻覚。そう、きっとそう。
うんうん。さ、行こ行こ。
その時だった。
「……静夜様……」
少女の声が、頭の中に直接響いてくる。
思わず、畳んだ扇子でこめかみをペチンと叩き、ため息をついた。
「あぁ……わかってる」
ただ、それだけを口にして、足を止めた。
この度は、ご覧いただきありがとうございます。花月夜と申します。
初めての執筆作品となります。
当方執筆に関して、完全な素人な為、至らない点が数多くあると思います。
ですが、書き始めたからには、皆様に読んでよかったと思って頂けるような作品にして行きたいです。
これからも、随時更新して参りますので応援いただけると幸いです。
ありがとうございました。今後ともよろしくお願い致します。