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新生鬼霊対策室 二

※この物語はフィクションです。実在の人物や団体、寺社仏閣などとは関係ありません。

もし、面白いと感じて頂ければ、ページ下部にある《投票!!》のクリックへのご協力お願いいたします。



「静夜殿、月季、他の面子との顔合わせに行くぞ」


 天鳳の爺さんに連れられて、廊下を歩く。どうやら別の部屋へ向かうようだ。

 そして、ある部屋の戸を開ける。そこには、四人の男女が立って並んでいた。


 見たことがある人物が二人いた。

 一人は今日迎えに来た濱元さん。

 そしてもう一人は、京都御苑に到着した時に出迎えてくれた女性である。


「とりあえず座ろうか? 燐、お茶と茶菓子もらってきてくれ」ん? 燐? 濱元さん?

「わかりました」濱元さんと、もう一人の女性が部屋を出ていく。


 先に五人で卓を囲み座布団に座る。知らない二人を見やる。この二人が新たな室長なのだろう。

 

 しばらくすると、二人がお茶と茶菓子を用意し戻ってきた。

 手際よく配膳し終わると、二人も座った。


「では、改めて紹介していこか。功徳こうとく


 功徳と呼ばれた男性がこちらへ向き直り頭を下げる。


「栄神静夜殿、お初にお目にかかります。九州沖縄方面鬼霊対策室 室長を拝命しました功徳心こうとくしんと申します」


 浅黒のほっそりしたお爺さんといった印象の、彫りの深い男性だった。


 ただ気になるのが、霊相の特異性だった。過去に一度だけ、宮古島で見たことがある。

 確認の為に聞いてみることにした。


「功徳さん、もしかしてユタの人ですか?」


「お? ……よく分かりましたな……だいぶ抑えていたのですが」やっぱり。


 ユタとは、沖縄地方に伝わる独自の霊祓師の集団である。


「昔、宮古島に行ったときに、同じ霊相の人に会ったことがあるんです」


 昔、道場での修行が辛すぎて、逃亡したのが宮古島だった。

 ユタの存在は聞き及んでいたので、会ってみたいと人伝に聞いた宮古島へ向かった。

 山をいくつか抜けて、ユタの修験地へ向かう獣道で、一人の男性とすれ違った。


 名は聞かなかったが、特異的な霊相だったのは覚えている。

 向こうも珍しかったのか、もしくは私の霊相に反応したのか、訝しげな目で私を見ていた。

それから宿に戻ると、爺さんがいてあっさり捕まった。地獄だったのは言うまでもない。


「そうでしたか。同じ霊相とおっしゃるのであれば、おそらくせがれでしょう。世間は狭いものですな」


 ほほほと、愉快そうに功徳さんは笑った。


「では、睡蓮」


 天鳳の爺さんが、もう一人の女性へ声を掛ける。

女性がこちらへ向き直り頭を下げる。


「静夜様、お初にお目にかかります。鬼戸睡蓮でございます。東北北海道方面鬼霊対策室・室長を拝命致しました」


 決して若いとは言えないが、とても綺麗で妖艶な女性だった。

 長い黒髪を後ろで簪で止め、睡蓮の柄をあしらった漆黒の着物に身を包んでいる。

 この方も、特殊な霊相をしていることは、すぐにわかった。


「睡蓮さん、キドカムイの人ですよね?」

「え?」

「東北地方の、呪術具一家ですよね?」


 鬼戸家は、かなり歴史の古い祓い屋一家だ。

 祓い屋とは別に、呪術具の制作を生業にしていたはずだ。


「……流石です。仰る通り、代々呪術具の制作を生業としているキドカムイでございます」


 やっぱり。多分、隣の女性もそうだろうな。酷似した霊相をしている。親子かな?


「御見逸れしました。さすが静夜様です」


 再び、睡蓮が頭を下げてくる。

 いやいや、様とか要りませんから……やめてください。

 目上の人に様付けで呼ばれるのはどうにも落ち着かない。


「隣の女性は、娘さんですか?」


 睡蓮さんに尋ねる。すると、睡蓮さんの隣に座っていた女性と濱元さんが立ち上がる。

 私の近くまで歩み寄り、並んで正座し頭を下げる。え? 何ですか?


「鬼戸睡蓮が娘、鬼戸蓮葉です。静夜様、これからよろしくお願い致します」どゆこと?

「四輝院燐です。本日は、色々と申し訳ありませんでした。これからどうぞよろしくお願い致します」


 ──え? 四輝院? しかも燐って……


「どゆこと?」


 意味が分からず動揺する私に、天鳳の爺さんが説明してくれた。


「二人には、統括鬼霊対策室長の補佐に入ってもらう」ほうほう。

「元々、儂と月季の補佐をしていた実力者だ」なるほどなるほど。


 何度か頷き納得して蓮葉へ向き直り、こちらも頭を下げる。蓮葉も再び頭を下げた。


「やっぱり親子だったんですね。よく似ていらっしゃる。これからよろしくお願いします」

「はいっ」


 次に濱元さんへ体を向ける。


「驚きました。濱元さん、四輝院の人だったんですね。どうりで震えるわけだ」


 四輝院家は四国を基盤にもつ、歴史の深い鬼祓いの一族である。

 武具の扱いに長けていて、霊具を使い霊相から武具を生成することができる。らしい。


「はいっ。その節は失礼致しました……」


 しかし疑問があった。四輝院燐という流名は当主名なのだ。

 濱元さんが当主というのは色々と若すぎる気がする。私が言うのもあれなんだが……


「でも、燐って当主名ですよね? 先代は? まだお若いですよね?」


 濱元さんの顔がみるみる曇る。あれ? やってしまったか。

 彼女は、俯き黙り込んでしまう。すると天鳳の爺さんが横から会話に入ってくる。


「燐の先代は、一昨年に羅刹に殺された」

「えっ!?」

「羅刹? 出現したんですか?」


 羅刹とは、鬼の階位において、最上位の童子に次ぐ上位の鬼である。私も未だに見たことはない。


「わからん。儂も見てないからな。ただこやつが見たそうだ」


 濱元さんを見る。濱元さんは肩を震わせ、目尻に涙を溜め、歯を食いしばり拳を握りしめている。

場に静寂と、重苦しい空気が広がる。


「わかりました。その話は後ほど詳しく。今は話を進めましょう」


 震える濱元さんの肩にそっと手を置く。

 溜まった涙を拭い、顔を上げる濱元さんに、私は静かに言い切った。


「適当なことあまり言いたくないけどな。濱元さん、俺にまかしとき。大丈夫や」



この度は、ご覧いただきありがとうございます。花月夜と申します。

初めての執筆作品となります。

当方執筆に関して、完全な素人な為、至らない点が数多くあると思います。

ですが、書き始めたからには、皆様に読んでよかったと思って頂けるような作品にして行きたいです。

これからも、随時更新して参りますので応援いただけると幸いです。

ありがとうございました。今後ともよろしくお願い致します。


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― 新着の感想 ―
久々に読んでて面白い小説に出会えました。それはそうと蓮葉って凄い名前ですね。調べたらあんまり良い印象が無い…
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