京都御所 三
※この物語はフィクションです。実在の人物や団体、寺社仏閣などとは関係ありません。
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-愛宕日丿舞大社-
平安時代に建立された、歴史ある格式高き神社である。
都の守護を目的として、多くの鬼と対峙し、滅してきた。葬った鬼の数はもはや数え切れない。
鬼祓いの家系で構成される寄り合いの総本山でもあり、重要人物の近衛として多くの鬼祓いを抱えている。
その大社内には、絶大な権力を持つ人物がいる。
神職の最高階位にあたる浄階を持つ、宇野大納言。
鬼祓いを生業とする者にとっては、決して逆らえない存在だ。
なぜ今も「大納言」(かつての官職)を名乗っているのかは不明である。
◆◇◆◇
皆を乗せた車が、京都御苑の敷地内へと入る。
御苑を警備する宮内警察に案内された指定場所で停車し、私たちは車を降りた。
観光以外でここを訪れるのは初めてだったが、改めてその広さに驚かされる。
どうやら今いる場所は、一般観光が禁止されている区域のようだ。
目の前には、既に迎えの者が一人立っており、深々と頭を下げた。
濃紺のスーツを着た女性。黒髪のストレートに睡蓮の花飾りをつけている。
「お待ちしておりました」
「おう」天鳳室長が手を軽く上げる。
「皆様、お揃いです」
「そうか、急がなあかんな」
どうやら、他の出席者はすでに到着しているようだ。大臣を待たせるのはさすがにまずい。
私たちは女性の案内に従い、京都御苑内にある京都御所へと足を踏み入れる。
雅な意匠が施された廊下を進み、ある部屋の手前で女性が足を止めた。
「天鳳荒原様、栄神静夜様、ご到着なさいました」
「どうぞ」
そう言って、女性が扉を開く。
部屋には大きなテーブルがあり、着席していた四人の男女が立ち上がった。
壁際には数名の人物が控えていた。おそらく秘書や付き人たちだろう。
「お待たせして申し訳ない」
天鳳室長が一礼する。
私も隣に並び、同じく頭を下げた。出席者として当然の礼儀だ。
私と天鳳室長は指定された席へと案内され、皆が着席する。
控えていた付き人たちが静かに部屋を出ていく。濱元さんの姿も見えなくなっていた。
「では、全員お揃いのようですので、始めましょう」
初老の男性が立ち上がる。どうやらこの人物が進行役らしい。
「改めて皆様をご紹介いたします。私は宮内庁長官、清水です」
ああ、そうだった。京都御所は宮内庁の管轄だったな、と今さら思い出す。
「お隣におられるのが、防衛省防衛大臣、大橋甚二様」
渋い六十代の男性が静かに頭を下げる。テレビで見たことのある顔だ。
「続きまして、愛宕日丿舞大社浄階、宇野大納言様」
彼女は立ち上がり、深々と一礼する。
初対面だったが、私の予想とはまったく違う人物だった。
目の前に座っているのは、前髪を眉下に揃えた黒髪ストレートの、三十前後の若い女性だった。
爺さんから「大社の長は宇野だ」と聞いていたが、まさかこんなに若いとは。
最初は代理人かと思ったが、どうやら本人のようだ。
服装も、黒留袖とごく一般的。もっと威厳ある装束かと思っていたのだが。
「反対側へ移りまして、現東方鬼霊対策室室長、堂上月季様」
「よろしく」と頭を下げた。彼は中部地方から北海道を担当している室長ということか。
見た感じ、三十代のエリート証券マンといった印象を受ける。
天鳳家と並び、堂上家も名門であることは知っていた。代々徳川家に仕えてきた由緒ある家系だ。
詳細な歴史は知らないが、相当な実力者だろう。
「続いて、現西方鬼霊対策室室長、天鳳荒原様」
彼は無言で軽く頭を下げた。さっきまで「ノォーゥ!!」とか叫んでいたのに、今はすっかり渋い。
「最後に、栄神流 当主、栄神静夜様」
私は立ち上がり、一礼する。
この中では一番立場が低いのだから、礼を尽くすべきだと判断した。
「それでは、早速本題に入りましょう。宇野浄階様、お願いいたします」
この度は、ご覧いただきありがとうございます。花月夜と申します。
初めての執筆作品となります。
当方執筆に関して、完全な素人な為、至らない点が数多くあると思います。
ですが、書き始めたからには、皆様に読んでよかったと思って頂けるような作品にして行きたいです。
これからも、随時更新して参りますので応援いただけると幸いです。
ありがとうございました。今後ともよろしくお願い致します。