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感謝状 一

※この物語はフィクションです。実在の人物や団体、寺社仏閣などとは関係ありません。



 窓から強烈に差し込む日差しで目を覚まし、ベッドの中から空を見上げる。

 今日も、腹が立つくらいの晴天のようだ。


 昨日は、しどろもどろで調書を取られたあと、親切にしてもらったホテルへ戻った。

 洗濯・乾燥済みの服に着替え、声をかけてくれたスタッフの方と支配人にお礼を伝える。


「次は普通にお客さんとして泊まりに来ます。お風呂、最高でした」

「はいっ! お待ちしていますっ!」


 はじめは断られたが、ほぼ強引にお礼の気持ちとして代金をスタッフの女性に渡した。

 再度頭を下げて、ホテルをあとにする。


 空はまだ明るかったが、河原を見ると納涼床の提灯(ちょうちん)の明かりが灯りつつあった。


「さて、ええ時間やし、そろそろ飲み行こか」


 どこで手に入れたのか、うちわで仰ぎながら康平が歩き出す。


「せやな。どこにしよ? 木屋町にする?」

「せやな」返事が返ってくる。


 すぐ近くの木屋町通りに入る。

 一軒目は予約なしで入れる納涼床、二軒目は京のおばんざい居酒屋。

 三軒目は鴨川が見えるショットバーと、はしご酒を楽しみ、いい気分で帰路についたのだった。


 上半身をベッドから起こし、背を伸ばす。

 私が住んでいるこの屋敷は、もともとは先代――祖父のものだ。


 両親は、私が中学三年のときに、ある事故で他界してしまった。

 私は母方の祖父に引き取られ、京都府の宮津市から、今の大阪府枚方市へ移り住んだ。


 祖父は、ある大社に属し、鬼祓いを生業としていた。

 あまり自分のことを話したがらない頑固者だったが、周囲からは重宝されていたらしい。

 だが、私が中学一年の頃──二十七年前に、ある事情で大社と対立し、一方的に辞したそうだ。


 そして、京都市内から生家である今の屋敷へ戻り、隠居するようになったらしい。

 そんな祖父も、私が二十六歳のときに眠るように逝ってしまった。


 今は、この屋敷に一人で住んでいる。

 敷地はかなり広く、正直、持て余している。


 屋敷には武道場もあり、よくここで祖父やサクヤに、暇があればしごかれたものだ。

 朝食を食べたら、WEB制作の案件でも探そうかとベッドから立ち上がったその時――


「チュルチュラーン♪ チュルチュラーン♪」


 スマホが、微妙な着信音を奏でていた。

 着信番号を見ると、市外局番が〇七五となっていたので、京都からの発信だとわかった。

 どこからの電話か大体察しがついたので、すぐに出ることにした。


「はい」

「あっ、もしもし?」女性の声だった。


「はい」

「朝早くに申し訳ありません。柿本さんのお電話でよろしいでしょうか?」


「はい……」


 なんか嫌な予感がビンビンする……。


「ありがとうございます。私、京都府警察本部の濱元と申します。今、お時間よろしいでしょうか?」

「大丈夫ですよ」トイレ行きたいけど……。


 京都府警がこんな朝一で連絡してくるなんて、なにか問題が発生したのだろうか?

 まさか、救助した男性になにかあったのだろうか?


「昨日は人命救助にご尽力いただき、誠にありがとうございました」

「いえいえ」

「早速ではございますが、昨日の功績に対して、市から感謝状が出ております」ん? 感謝状?


「本日、市役所にて感謝状の授与式を行いたいと思うのですが、ご予定はいかがでしょうか?」え? 今日?


 ん? 授与式? 昨日の今日で? そんな急に準備できるものなのか? いや、無理じゃない?

 聞き間違いの可能性があったので、念のために確認する。


「え? 今日?」冗談ですよね?

「今日ですっ!!」即答かよ……。


 なぜか電話の向こうの女性は、なにやら切羽詰まっているようだ。怪しすぎる。


「……え? あの……強制ですか?」


 任意ですよね?


「……ほぼ強制です」


 ほぼって何? ねぇ、ほぼって何?

 明らかに不自然な電話ではあったが、まあ特に予定もない。案件探せやって話やけど。

 功績を表彰されるというのは、悪い気分でもないので、とりあえず前向きに考えることにした。


「構わないのですが、また京都まで来てくださいってことですよね?」面倒くさい……

「いえ、こちらからお迎えにあがりますので、ご住所を教えていただけますか?」なんか怖い……。


「あと、そんな式に着ていくような大層なスーツとか、一式持ってないですよ?」貧乏なので……

「こちらでご用意いたしますので、問題ございません」やっぱりなんか怖い……。


「柿本さんは、裸一貫で大丈夫です」

 裸一貫って……女性の口から初めて聞いたかもしれない。


「はぁ……」


 結局このあと、不安になりながらも自宅の住所を伝えた。

 待っている間に、レンチンご飯とインスタントの味噌汁で簡単な朝食を食べる、

 シャワーを浴びて身支度を整え、外に出た。


 空を見上げると、雲ひとつない快晴だった。今日も暑くなりそうだ。

 自治会の掲示板を眺めながら数分も待つと、理解しがたい光景が目の前に現れた。


 最近では滅多に見かけない、黒塗りのセンチュリーが目の前に止まり、三人の男女が車から降りてきた。


「柿本さん、おはようございます」

「「おはようございます」」


 後部座席に座っていた女性が挨拶し、それに続くように他の二人も挨拶する。

 おそらく、電話をくれたのはこの女性だろう。


「お……おはようございます」怖い……

「ご挨拶が遅れました。京都府警察本部所属の濱元です」やっぱり……


「白井です」優しそうなお父様

「宮本です」絶対ラグビーやってたでしょ?


「どうもご丁寧に……」ドン引きモード、発動──


この度は、ご覧いただきありがとうございます。花月夜と申します。

初めての執筆作品となります。

当方執筆に関して、完全な素人な為、至らない点が数多くあると思います。

ですが、書き始めたからには、皆様に読んでよかったと思って頂けるような作品にして行きたいです。

これからも、随時更新して参りますので応援いただけると幸いです。

ありがとうございました。今後ともよろしくお願い致します。


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