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復縁は絶対に受け入れません ~婚約破棄された有能令嬢は、幸せな日々を満喫しています~  作者: 水空 葵


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39. 王宮パーティー③

「――クラリス、大丈夫か?」


 ふと、隣からシリル様に声をかけられる。

 いつ助けにきてくれたのかは分からないけれど、ずっと私のことを見てくれていたのだと思う。


「ええ、今は大丈夫です。でも、次は何をされるか分かりませんわ」

「何があっても守れるように、絶対に目は離さない」


 シリル様もあの嫌な笑みを見ているはずだから、この言葉だけで伝わると思う。

 それくらい、ネイサン様からは得体の知れない恐怖を感じた。


 今分かっているのは、ネイサン様が私との復縁を狙っているということと、クルヴェット家の使用人を買収しようとしていたこと。

 一度は消そうとしていた相手に復縁を求めるのは不思議だけれど、私が倒れなかったことで利用することを考えていると思えば納得は出来てしまう。


 買収にやって来た人物は牢の中で自ら命を絶っていて、これ以上のことは分からない。

 けれども、買収しようとしていた人数から、ある程度のことは予想がつく。


「ありがとうございます。一つ、私に考えがあるのですけれど……」


 だから、シリル様に屈んでもらい、予想していることと対策の計画について伝えることにした。

 少し危険な賭けになるかもしれないが、この計画を実行する時までにしっかりと体力をつけていれば怪我もしないで済むと思う。


「――分かった。確かに確実な方法だと思うが、クラリスの身を危険に晒したくはない。だから、俺が変装して身代わりになろう」


 彼は気が乗らないのか、私の言葉に渋い顔をしている。

 珍しく現実味の無いことまで口にするなんて、かなり同様しているらしい。


「寝言は寝ておっしゃってください」

「良い案だと思ったが、難しいか。他に方法が思いつかないから、あまり気は乗らないがクラリスの案にしよう」


 けれど他に良い案が思い浮かばなかったようで、すんなりと受け入れられた。

 正直、私もあまり気は乗らないけれど、ネイサン様を止めないと快適な社交界にはならないと思う。


 だから、すぐに動けることに安堵した。


「受け入れて下さってありがとうございます」

「こちらこそ、無理を強いて申し訳ない」


 短く言葉を交わし、私達はダンスのために会場の目立つ場所へと移動する。

 計画はパーティーがお開きになる頃に実行に移すから、今は招待を受けた身として、パーティーを盛り上げたい。


「――普段通りに踊れるか?」

「ええ。これくらいなら気になりませんもの」

「それなら良いが、あまり無理はしないように」


 そんな言葉を交わしながら、舞踏曲に合わせてステップを踏む。

 まだ二曲目だけれど、今流れているのは難しいと言われているものだ。


 それでもシリル様は表情を一切崩さず、私をリードしてくれる。

 私も笑顔を浮かべ、余裕を持って彼の動きに合わせた。


「――もう一曲、どうだろうか?」

「シリル様となら、何曲でも踊れますわ」


 この曲はミス一つせずに踊り切り、拍手を送られている間に次の曲も踊ることに決める。

 もっとも、これはネイサン様が近付けない時間を作るためで、決してずっとダンスをしていたいわけではない。


 シリル様とのダンスは楽しいとはいえ、運動に変わりは無いから、踊った分だけ疲れるのだ。


「分かった。食事も楽しみたいから、あと三曲にしよう」


 こうして私達は四曲続けて踊ることになったのだけど……。



 ――残りの三曲も全て難しい曲で、最後に踊った一曲は私達以外に三組しか踊り切れなかったらしい。

 お陰で拍手は盛大で、今までで一番注目されている気がする。


「この感じ、質問攻めが待っていそうだな」

「もう覚悟は出来ていますわ」


 そんな言葉を交わしてから料理が並んでいる壁際に下がると、あっという間に私達の周りに人だかりが出来た。

 話しかける順番は爵位順という暗黙の決まりがあるから同時に声をかけられることは無いものの、一人一人対応していると時間がかかってしまう。


 けれど無碍にすることなんて出来ないから、私達はパーティーがお開きになるまで人脈づくりに勤しんだ。

 ネイサン様の対策に考えていた計画のために体力を残しておきたかったけれど、今はすぐにでもベッドに飛び込みたい。


「……お疲れ様。例のことだが、出来そうか?」

「ええ」

「分かった。先に馬車に戻っているよ」

「分かりましたわ。ティアナ様とのお話が終わったら、すぐに向かいますわ」


 そう口にし、私はティアナ様に向き直る。

 これからお話するのは、次のお茶会の約束だ。


 当然、シリル様が計画のために準備する時間も兼ねている。


「ティアナ様、お待たせしました。お茶会の日程なのですけれど……」

「……私は来週ならいつでも大丈夫ですわ」

「では、来週末にしましょう。皆さまも、これで宜しいでしょうか?」

「良いと思いますわ」

「お茶会、楽しみにしておりますわ」

「ティアナ様、今回も主催を受けてくださって本当にありがとうございます」


 今回のお茶会は、今日知り合った二人のご令嬢もお招きすることになっている。

 だから、全員が頷くのを待ってから、私達も会場を後にすることにした。


「皆さま、今日は本当にありがとうございました」

「こちらこそ、楽しい時間をありがとうございました」

「またシリル様とのダンスを見せてください!」

「パーティーでご一緒する機会があれば、ぜひお願いしますわ。また来週、お会いしましょう!」


 その言葉に続けて会釈をし、クルヴェット家の馬車が待っている場所へと足を向けた。

 離れたところからネイサン様がずっと私の様子を伺っているところが見えて、恐怖で鼓動が早くなる。


 そして……。


「騒ぐな。暴れたら命は無いと思え」


 見覚えのある荷物用の馬車から、クルヴェット家の使用人が四人飛び出してきて、私は一瞬で囲まれてしまった。

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