①減らず口
「話をしよう。」
「嫌です。」
「おいおい君はつれないなあ。君と私の仲だろう?」
「だからこそ嫌と言っているんです。」
「いーやそれが嫌だね。部長命令だ。私と話せ。」
「どんな拘束力があるんですか。」
「これでも部の長だよ。部長権限舐めんな。」
「日本国憲法って知ってます?基本的人権の尊重はされるべきなんですよ。」
「人権侵害レベルの苦痛なんて伴わないから安心したまえ。」
「お菓子もゲームもない部屋に拘束させられるこの環境だけで人権侵害にリーチがかかるんですよ。」
「教室にまで文句を言い出すなんて生意気だね。私は君をそんな捻くれた子に育てた覚えはないよ。」
「育てられた覚えもありません。」
「…君はあれだね、目上の人に対する言葉遣いをいい加減に覚えた方がいいよ。」
「返答に困ったからって話題を逸らして悦に浸るポジショニングするのやめた方がいいですよ。」
「君はロクな大人にならないね。」
「その言葉、そっくりそのままお返しします。」
「暇を持て余している君にささやかなひと時を提供しているんだよ?むしろ感謝してほしいくらいだね。」
「はいはいそーですかありがとうございます。先輩のご好意により有意義ひと時を過ごすことができました。」
「気のせいかな、気持ちがこもっていないよ。」
「それは先輩の感受性が欠けている証です。」
「はいー傷ついた。その言葉のナイフで私の純情で繊細な乙女心はズタズタに引き裂かれたよ。」
「自分から純情だの繊細だのと言う方の大半は大概傷ついたフリをしただけなので信じるなと、遠いところにいってしまった母が言ってました。」
「そうか。それは辛い事を思い出させたね。すまないことをしたよ。」
「あ、いえ母ピンピンなので。旅行行ってるだけなので。」
「…少しでも君が傷ついたんじゃないかって配慮した私が馬鹿だったよ。」
「ご配慮ありがとうございました。ではちょうど部活終了の時間になったので今日はここで。」
「来週はそのへらず口を矯正してやるよ。」
「おーおーそれはとても楽しみにしています。」