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僕はただ...  作者: とと丸
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プロローグ

僕の名前は、マリー・ヨーク。10歳。小さな村”マギック村”に暮らす孤児だ。両親の記憶はなく、孤児院で育った。両親は大罪を犯し、領主の街へ連行されたらしい。


僕は孤児院でいじめられ、食べ物を奪われていた。ガリガリで7歳くらいの見た目だ。村の大人たちには化物のように見られ、罵声を浴びせられる。子供たちには石を投げつけられる。


なぜ僕はこんな思いをしなくてはいけないのだろうか。僕に力があればと思うたびに、現実の辛さに悲しくなる。そんな日々を繰り返していた。


ただ、そんな僕にも楽しみがあった。村長の一人娘、べウティー・ウールを見たときだ。彼女は僕より3つ年上の13歳。日に焼けた小麦肌で、いつも笑顔が明るく、多くの人に好かれている。とても眩しく感じる。僕のような貧弱な孤児と村長の娘では身分が釣り合わず、話しかけるどころか視界に入れるだけで失礼だ。それくらい分かっているのだが、体が言うことを聞かない。つい、物陰に隠れてまで見てしまう。べウティー・ウール様を一目見たいという衝動を抑えられない。我ながら情けないと思うが、べウティー・ウール様を一目見ると胸の音が聞こえ、血が体内をどう動いているのかが頭に浮かんでくる。そんな僕の行動をなぜか村長のアスタルト・ウール様は気づいている。だが、何かを言われることもない。それどころか村長は、僕に唯一優しくしてくれる人だ。とても尊敬していて、あの人の役に立ちたいといつも思っている。


よく晴れた日、僕はいつものようにべウティー・ウール様を物陰から見ていた。その時、村の中心広場にあるベルが鳴った。避難と戦闘準備を知らせるベルだ。女子供は村役場の地下に避難し、男たちは武器を手に中心広場に集まらなければならない。子供であれ孤児の男ならば戦闘員として動かなければならない。


村人たちはベルが鳴った後、慌てふためいた。敵が攻めてくることなど、村ができて以来一度もないらしい。パニックになっているようだ。村は広く、端から中心に来るには大人が走っても15分はかかる。パニックになってすぐに行動できていないので時間がかかる。村人たちが避難や戦闘準備、情報共有を行う前に、地響きがしたと思ったら、数え切れないほどの敵が馬に乗ってやってくるのが見えた。大きな旗も見える。馬に乗る人たちは、上半身と頭部を金属で覆っているのが見えた。直後、空から無数の棒が飛来してきた。矢による攻撃だと気づいた。僕は戦わず、隠れる場所を探した。敵は東から攻めてきている。僕は、北側にある森に向かった。森の中には、僕しか知らない小さな洞穴がある。大人はおろか10歳ほどの子供でも入ることができないほど入り口が狭い。隠れるにはちょうどいい。僕は、そこで村の方からの悲鳴を聞きながら丸まって隠れていた。


一晩が経ち、僕は洞穴から出た。少し眠ってしまったみたいだ。村の家や孤児院などすべて燃やされていて、村人たちの死体が道に転がっている。僕はふとべウティー・ウール様のことが気になった。気づいたら役場へ向かって走っていた。道中にある建物などはすべて燃やされていて灰になっている。胸が締め付けられるような感じだ。とても苦しい。役場に到着したが、誰もいなかった。急いで地下の避難所へ行ったがべウティー・ウール様はいなかった。ただ、数名の女の遺体があった。斬り殺されたようだ。べウティー・ウール様が無事かどうかますます心配だ。自分の心がどんどん乱れている。その時、何か気配のようなものを感じた。急いで周囲を見渡したが、誰もいない。ただ、何かを感じる。感じるままに移動すると目の前には村長の家があった場所だった。灰になった崩れた瓦礫の中に白く光るモノと薄黒く光るモノがあった。正確には、脳みそが勝手に光らせているような感じだ。僕は、白く光るモノに吸い込まれるように動き、掘り出していった。白く光るのは、村長だった。掘り出した時の村長は、意識がなかったが、何度か呼びかけると意識が戻った。村長は弱りきり、今にも死にそうな状態で、僕に頼み事をしてきた。


「娘のべウティーが攫われた。救い出してほしい」

「攫われたのですか」


無理だ、何を言っているのだろうと思った。こんな貧弱な僕に救い出せるわけがないと。ただ、べウティー・ウール様には死んでほしくないとも思っている。どうにかして助け出せないかと考えていたところに村長が訳のわからないことを言ってきた。


「私たち代々の村長一族と君の一族は、魔人だ。人間ではない。魔人は魔人に魔力と知識の譲渡を行うことができる。私の魔力と知識をすべて君にあげる。君は知識を使って、魔力をうまく使うことができるようになるだろう。それから、君も勘付いていると思うがこの家には魔術書がある。それは、君とべウティー以外の者には、渡してはいけない。では、後のことは頼む」


村長は、そう言うと一層白光った。眩しくて目を瞑り、再び目を開けるとそこに村長の姿はなかった。

村長の姿がないと分かった瞬間、僕の体が急激に熱くなり、気を失ってしまった。


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