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女装をした陰キャ、時給2000円でママになる  作者: 久遠ノト
1-4 小説家とVtuberと友達と:ただ友達と遊ぼうとしただけなのに
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54 モヤモヤする



 シャワーをして外に出たら、イオが浮き輪の空気を抜いていた。


 ボクに気づくと「もう平気かー」と作業をしながら声をかけてきた。


(……やっぱりボクだけが気にしてたみたいだ)


 切り替えよう。あれは事故だ。仕方ない仕方ない……。


「手伝うよ」


「ん」


 二人用の浮き輪だから反対側の空気も抜くことにして、やっとこさぺこぺこになった。その間に会話はほとんどゼロなんだけどね。


「あー! ふたりともいたー! どこにいたんですか!」


 すると、ましろくんがスイカを両手に抱えて迎えに来た。

 どうやらスイカ割りをしたいと蒼央さんが言い出して、海の家で買ったのだと。 


「高かったんじゃないの、ソレ」


「スイカ割り動画に出たら無料で、ドリンクももらえるみたいです」


 海の家が動画投稿をしてるみたいで、それに出演してくれたら無料でいいのだと。そこで、ナンパを退けたイオとボクにもぜひ出演してほしいと言ってきたらしく、お呼びがかかったみたいだ。


「スイカ割りしたことないなー」


「私もないなー。高いし」


「ぼくもないです」


 海の家に向かうと動画の前振りが済んでたみたいで、動画で簡単な挨拶をした。撮影前に名前の頭文字と年齢と好きな食べ物を事前に伝えた。編集の時に下にテロップを出すのだと。

 

「じゃあ、さっそくスイカ割り行っちゃいましょう! 目隠しはこれ使ってね」


 渡されたのが芸能人の格付けチェックで付ける変な顔が描かれてるアイマスク。みんなでつけて、似合ってる? みたいな話もした。


 最初にするのは蒼央さん。一番したいって言ってたからだ。


「っしゃあー!」


「いけいけー、もっと右だぞー」


 ──とか、平気な感じに日常を送ろうとしてるけどさあー!


(すっごいモヤモヤするっ……!!)


 切り替えれるかあ! 無理に決まってんだろ!! 

 イオはよく普通に過ごせるなあ……。

 ほんとに気にしてないんだろうなあ……ボクだけがもやもやして……ぐぬぅ……なんか悔しい。


 結局、スイカ割りはましろくんがヒビを入れて、イオの一撃で粉砕してた。破片が飛び散って、カメラのレンズにもついてた。強すぎ。


 塩も貸してくれてもぐもぐと食べてたらナンパしてた人が来て、謝ってきた。多分、海の家の人がネタとして出演依頼を頼んだんだろうなー。


「海の家マルガリタにみんな来てね~」


 動画の〆も終わり、もらったドリンクを片手に砂落としに向かった。



      ◇◇◇



 海って海遊時間なるものがあるらしい。


 この時間までしか遊んだらダメだよー、という奴。暗くなったら帰れっていうのは公園も海も変わらないんだなー……なんて思いながら窓の外を眺めてます。


「いやー! 海はどうだったー! 満喫したかーい!」


「楽しかったでーす!」


「楽しかったー!」


「そんな運転手のテンションで。楽しかったですけど」


 助手席に蒼央さん、運転席にイオ。後部座席にボクとましろくん。パーキングエリアで交代するらしいので、しばらくはイオが運転手だ。


「ましろくん、そういえば動画に出ても良かったの?」


「ほとんど喋ってませんし、バレたりしないですよ、多分……」


 聞こえないように小声でやり取り。さすがに配信してるってのを公言するわけにもいかないからな。


「お姉さんも良かったんです? 帰ってから配信するのに」


「まぁ……まだ、なんていうか、そういう危機感みたいなのないから」


 取らぬ狸の皮算用ならぬ、始めぬ配信の身バレ回避というべきか。


「そういえばさー、あの浮き輪楽しかった?」


「ああいう浮き輪があるんだなーって思いました」


「ちなみにましろんチョイスね」


「すごく楽しかったです」


「ホントです!? 買ってよかった~」


「でも途中でどっか行ってたけど、何かあったの?」


 ギクッ。なんて説明をしたら良いの……?


「あの後は足攣った子どもを助けたり~って感じです」


 イオが運転しながら説明してくれた。


「その子どもがミオのことをいやらしい目で見るんすよ」


「ミオちゃんが魅力的だからね~。性癖ブレーカーだし」


「中学生くらいの子は仕方ないよ。あとは普通にナンパされたりー……くらい?」


「え、お姉さんナンパされたんですか! 大丈夫でした……?」


「イオが守ってくれたから」


 というと、運転中のイオとましろくんがルームミラー越しに何かアイコンタクトを交わしていた。二人はいつの間にそんな仲良くなったんだって。


「私もナンパされた! 暇なの~って。無視してたらどっか行ったけど」


「アオさん魅力的過ぎるんで、その男は見る目あるっす」


「いやいや、伊尾さんには負けるよ。モデルですかって感じで」


「いやいや! こんなガサツな奴を狙う男なんておらんす」


 なんだこれは。女子特有の会話か? 私ほんとブサイクって言ってそれ否定してもらいたいみたいな奴か。じゃあ、ボクは……えーと。


「二人ともかわいいですよ。少なくともボクなんかより」


「「いやいや、それはない」」


 二人から否定されて驚いていると、ようやくパーキングエリアに到着。


 集合時間を適当に決めてトイレやら飲み物を買うことになった。


 ボクは真っ先にトイレに入って、遅れて入ってきたましろくんに鏡越しに驚かせて、反応を面白がったりした。我ながらクソガキみたいだ。


 そんなこんなで飲み物を買いに自販機の群れの元へ。


「なに買おう……わっ、なんか野球選手とお茶がコラボしてる」


 コーヒーもいいし、炭酸もいいし、でもちょっと身体冷えてるから温かいのでもいいかも。というか、みんな飲み物買うかな。お金持ってるのかな。気にしなくていいか。


 あ、ましろくんが好きなジュース、蒼央さんが好きな紅茶もあるし。で、こっちにはイオがいつも飲むコーヒー……。


(ってか、イオと話せないの気まずいんだよなー……)


 色々話せそうと思ったら話せれるハズなのに、それを先に片してから話さないともやもやする状況というかなんというか。メインミッションがあるのにサブミッションやってるみたいな……ちょっと違うか。


「コレを奢って仲直り~とか……いや、仲悪くなった訳じゃないけど──」


「なにが?」


「ピッ!?」


 ──ぴっ。がごん、がこんっ……。

 ビックリしすぎて鳥みたいな声出た……。

 

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