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女装をした陰キャ、時給2000円でママになる  作者: 久遠ノト
1-4 小説家とVtuberと友達と:ただ友達と遊ぼうとしただけなのに
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52 同級生に素股される気分はどうだい


 お姫様だっこをしたこと、もしくはされたことはあるだろうか。ボクは妹や姉にしたことがある。女性は1度はされてみたいという願望があるらしい。


 その『お姫様抱っこ』というものは、持ち上げた時に胸辺りにが体が来るし、顔もそれなりに接近をする抱え方だ。


 つまり、えーと──持ち上げられた際、イオの胸にボクの身体が密着してる状況です。


「あのっ……イオっ……あのっ!」


 か細い声で訴えたら、イオは更に持ち上げてきた。むにっ、という感触が声にならない声をあげさせる。


「~っ!!」


 そして、蒼央さんが言ってた言葉を思い出した。

 

(たわわのわわわ……っ……!)


 感じたことない感触が押し当たられ、そこの感覚だけ冴えた。


 ほんと、男って! 男って!! 


 ああ、ごめんよ、さっきの男子中学生。ボクも一緒だ、所詮は男なんだ。そして、君が受け損ねたラッキースケベをボクが受けてしまっていることも謝罪させてくれ……。


「どうだ? ミオ。これなら私の顔しか見えないだろ?」


「……もっと……違うことがすごいことにっ、なってるよぅ……」


「ちがう?」


「胸がっ……あたって」


「あー、じゃあ、違う方がいいか。一旦降ろすぞ」


「なんでそんな普通にできるの……」


「え? 普通に? だって、ミオは女だし……」


(女じゃないよぉ……男だよぉ!!)なんて言える勇気もなく。


 ボクは下半身に集中し始めた血流を必死に押し留めた。こういう時、逆立ちしたら頭に血が登って落ち着くのかな……いや、落ち着け、木下心音。素数を数えろ……あんま知らんけど……あんま知らないならしなくていいか……。

 

「おんぶも違うし、肩車も違うしー……」

 

「もう……いいんじゃないかなー?」


「万が一のことがあった時に困るだろ?」


 するとイオはスマホを取り出して何やら検索し始めた。そして、動画を見始めて「お、あった」と。


「救助の担ぎ方って調べたら出てきた。消防士搬送ってのが良いんだと」 


「へー……」


「意識がある内はおんぶ……へー、おんぶでいいんだ! じゃあ、セクハラ(アレ)は避けられんってことか」


 自分がした運び方が正解だって言われ、ちょっとうれしい。


「でー? 意識がない時はこっちか。じゃあ、ミオは意識がない人をしてくれ。横になって」


「えっ……あ、うん?」


 どんな担ぎ方なのかは知らないまま、そのまま仰向けに倒れた。

 

「まず仰向けの人をうつ伏せにして、上体を起こす? ほおー」


 砂浜に置かれたスマホから次々指示が聞こえるのを一旦止め、ボクの体を転がし、うつ伏せ状態にもっていく。


(あー、じめんあつい……でも、これさえ乗り越えれば……)


 救助の担ぎ方なら変な担ぎ方じゃないだろうし、多分大丈夫なはず。さすがに同級生に変なとこ見られたら人生が終わるかもしれないからな!


「次、上体を起こすなー。びっくりするかも」


「うん、大丈夫だよー」


 うつ伏せからどうなるんだろうか。上体を起こすって、どうやって?


 しばらく動画と格闘して理解できたのか、イオは脇下に手を突っ込んできた。そして、文字通り上体を起こされた。


「おおっ……」


「割と力いるな……やっぱり大変かも」


 今、ボクの体勢はぶらーんと持ち上げられた猫。アサシンゲームをしたことがある人なら『気絶した人を引きずる時の姿勢』と言えば分かるだろうか。


「で、次は……ちょっとカットされてる。ええっと……」

 

 まぁ、この調子なら全然平気――


「前に来て……こうか?」


 後ろにいたはずのイオが前に来て、眼の前で屈んだ。突然視界に入ってきた綺麗なつむじに目を瞬かせた。


「次はミオの腕の間に入って……なるほど、こうか」


 前に投げてるボクの両腕の間にイオは入り――手を腰に回してきた。


 え、え、ちょっ。


「なんかアレみたいだな、プロレスのジャーマンだっけ?」


「いやっ、はぐっ……これっ」


 普通にハグだよ! 抱き合ってる状態だよ! プロレスとかじゃなくない!?  脱力状態のボクをイオが抱きしめてる絵面だよ!?


 イオの顔が腕の中に収まってるし、胸も当たってるし!! まずい、ちょっと、状況的にまずいっ!! 


「ここからどうすんだ? バックドロップをかましゃあいいのか?」


「イオ、その、あのっ、辞めにしな――」


「あ、分かった! こうだな!」


 屈んでたイオが立ち上がった反動で、ボクとイオの腰と腰がぶつかった。


 ──ぐいっ。


「んっ」


「……」


「…………」


 動きを止めたイオは、太ももの間に入り込んでしまったブツの正体を確かめるため、太ももをキュッと閉めた。


「っ〜!」


 何度も確かめ、横や前後に揺らしてみる。ゆさゆさと揺らされ、横からも上からも体重がかかって……もう、何も考えられない。


「…………いお……やめて、それ……おねがい……」


 これがぴっちりとした水着だったらこんなことにはなってなかったろう。しかし、柔らかい生地のスカートは進行方向を妨げることはしない。


 ただ、まっすぐに、ボクのそれが向かう先にそれを届けてしまうのだ。そして、これはいわゆる……"すまた"という奴でして。


「……ミオ、その……この硬いのって……」


「ごめんっ……ごめん……その……」


 一生懸命弁明をしようとしても、言葉が出てこないまま、ボクは半泣きの状態で。


「ごめんっ……」


 ただ、謝ることしか出来なかった。


 そんな、だって、イオが立ち上がった勢いで、すっぽりとハマるなんて思ってないんだもん……!!


 イオが仰け反りながら持ち上げたから、イオの方にボクの身体が寄って──いや、人のせいにするな! 


「……ほんとごめん……」


 ボクが気まずそうにしてることで、ようやくそれの正体に気付いたイオ。彼女も顔を真赤にして、ボクの手を引っ張った。


「ちょ、ここだったらさすがにアレだから!」


 そういって、イオはボクをシャワー室に連れ込んだ。

担ぎ方の参考にさせていただいた動画。

(URLを貼るのは規約的に良いのか不明だったため)


チャンネル名:自衛官募集チャンネル

タイトル:けが人の運び方② 一人で運ぶ編


この後書きを書かないと評価はいらないと思われると聞きましたので。


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