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女装をした陰キャ、時給2000円でママになる  作者: 久遠ノト
1-4 小説家とVtuberと友達と:ただ友達と遊ぼうとしただけなのに
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51 二郎系ラーメンとお姫様だっこ


 飲み物を買って帰ると蒼央さんが溶けてた。耐えられないほど暑かったらしい。水分補給に戻ってきたましろくんが蒼央さんを誘ってたけど、本気で嫌がってた。


 そして、なにか思い出したのかましろくんが車に戻っていった。取ってきたのはなんと浮き輪。

 

「これならおねーさんも遊べますね!!」


 この子は本当に可愛い。眩しすぎる。なんでもうんうんと受け入れたくなる。そうだよね、海に来たんだから1回くらい泳いでおかないとね。


 てな感じで、海でぷかぷか浮いてる訳です。周りの人にチラチラ見られてるの気まずいね~。


「ミオ、きょろきょろしすぎ~。都会キョロキョロは田舎民だと思われるぞ〜」


「だって、2人用の浮き輪だよ?」


 ボクとイオが乗ってるのは8の字の浮き輪。周りにいない形だからチラチラ見られてる。


 ちなみに蒼央さんは荷物番。パラソルの下から動きたくないって叫んでた。ましろくんも休憩するって言って、蒼央さんと一緒にお留守番してる。後から来るって言ってたけど、どーなんだろうか。


「んー……なんか、時間がゆっくり過ぎる感じがする」


「なー……のんびり雑談でもすっかー」


「いい天気ですね〜」


「合コンかよ〜。もっと広げれそうな話題で頼むわー」


「好きな食べ物ってあるー?」


「ラーメン。いつかは二郎系を一人で食べれるようになりたい」


「あー、わかるー。一人で行くの怖いよねー」


「たろーは一人でも行けるらしいんだよー」


 たろー、たろー?


「あの金髪でメガネの人だっけ……?」


「そー。たろー。可愛いだろー、たろー」


「葉加瀬さんだよね、たしか」


「そー」


 葉加瀬さんは、イオや蒼央さんと比べて肉付きが良い女性だ。丸顔で、男性ウケが良さそう。ああいうアイドルとかいそうだもんな。大食いタレント路線で。


「アイツ誘ってどっか二郎系チャレンジしてみるのもあり」


「余ったら食べてもらう感じ? 二郎系ってダメなんじゃない?」


「ダメなんかなー。じゃあ、ラーメン系の動画投稿者に依頼して、初めての二郎を案内してもらうとか」


「えー? いけんのかなー、それ」


「企画持ち込んでさ、現役大学生初めての二郎っつって」


「企画として面白いのかな?」


「それを面白くすんのがあっちの技量よ」


「そりゃあそうか」


 なんか暑さと海水の心地よさと浮き輪の安心感で眠たくなってきた。返事もふわふわしてる気がする。


「って、あそこの子ども溺れてね?」


「んー?」


 ジッと目を凝らしてみると、浅瀬でジタバタしてる中学生くらいの子がいた。ボクとイオは顔を見合わせる。緊急性はなさそうだが、周りも気づいていないし……。


「様子を見に行こう」


「だな」


 ボクは浮き輪に乗ったまま、イオが浮き輪を押してくれて前進。


 中学生くらいの男の子が片足を痛めたのか、ジタバタしてる。溺れてる訳ではなさそうだけど。


「大丈夫?」

 

「あぶっ、あっ、うっ、うえっ」


「大丈夫か、落ち着け」


「ひぅっ、ふっ、うぐっ」


 浅瀬でもパニックになったら溺れるって聞いた気がする。


 でも、助けようとしたらしがみつかれて一緒に溺れるとも聞いた。対処法は……えーと、掴める物を投げ込んで、それにしがみついてもらう……だっけ?


「あ、浮き輪に乗せよう」


 イオが乗ってた所を近づけるとしがみついた。


 話を聞いていると、どうやら足を攣ったらしい。すぐに砂浜まで連れていき、足をぐいーっと伸ばす。


「まだ若いのにつっちゃったんだ。痛いよねー」


「これっ……なんなんですっ……?」


「初めて? 力入れすぎたり、水分不足だったら攣るみたいだよ」


 人生初の攣りは怖いよなー。びっくりするし、痛い。ボクもお風呂場でふくらはぎに力を込め続けたら攣って、普通に天罰かと思ってひたすら謝った記憶がある。


「今日は一人で来てるの? お母さんとかお友達とか?」


「家族で来てて……」


「じゃあ、落ち着いたら連れてくよ。痛みは大丈夫?」


「はい……」


「じゃあ、おいで」


 男の子に背を向けて座ると、ゆっくりと体重がかかってきた。


「じゃあ、前に手を出して。足痛かったら言ってね?」


「……はい……」


「イオはどうする?」


「ついてくよ」


 二人で子どもの家族を探すことにしたんだけど、案外すぐに見つかった。すごく謝られた。


「気を付けて遊べよ~」


「遊ぶんだよ~」


 手を振ってお別れした。うん、人助けってのは良いもんだ。


「あのガキ、エロいこと考えてたな」


「え? そう?」


「ミオの胸とかお尻をチラチラとな。おんぶしてた時、さりげなく触ってたぞ」


「あー……? そう? なんも思わなかった」


 まぁ、そういうお年頃なんだし、いいんじゃないとは思うけど。というか当たってた? この胸の水着がふっくらしてるから分からなかった。


「まぁ、ボクで良かったよ。イオにされなくて良かった」


「……」


 ふっふっふ。少年、ラッキースケベなんてないのだよ。現実はそんなに甘くないのだ。君は男にセクハラをしたんだ、残念だったね。


「私は……ミオにされてもいい気分はしないけどな」


「なんで? だってボク──」


 男だよ? といいかけて辞めた。


「……そうだね。触られるのはさすがにアレか。引きずればよかったかな?」


 なんて冗談っぽく言ってみる。さすがに子どもを引きずって保護者のとこまで持って行ったら怒られそうだ。


「引きずるべきだったのかなー、うーん……悩むなー」


「……なに悩んでるの?」


「人を運ぶ時の最適な方法。引きずるのはさすがに怒られるだろ? かといっておんぶも……」


「そんな真剣に悩むことじゃないと思うけど……」


「いや、今後のために考えておくべきじゃないか?」


 イオは本当に真面目だなー。引きずれば〜? なんて言った自分が恥ずかしい。


「密着する面積を少なくすればいいんだったら……あれならイケるか? ミオ、ちょっといいか?」


「え?」


 ぐいっ。


「へっ」


 背中と膝裏に手を回されて、そのまま持ち上げられた。ぐいんっと視点が変わり、イオの顔がすごく近くに寄ってきて。


「お姫様だっこなら触られないな!」


 唐突のお姫様抱っこに脳みそが追いつかなかった。

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