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女装をした陰キャ、時給2000円でママになる  作者: 久遠ノト
1-4 小説家とVtuberと友達と:ただ友達と遊ぼうとしただけなのに
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48 行くぞ! 海!



 残りのテストも順調に終わらせていった。


 図書館の閉まるギリギリまで勉強して、閉館したら蒼央さんの家に戻って、日付が変わるくらいまで勉強。イオとも通話をしたり、家にお邪魔したり。

 

 テストの日が別れてる方が1教科に集中できるからすごいやりやすい。高校もこのシステム導入してくれないかな~。


 でも、人によってはテストがギチッとまとまってるらしいから、教科の取り方が良かったのか……? うーむ、秋季に期待。


 そして、最終日の地域経済史。


「テスト開始ッ」


 配られた用紙をひっくり返して、テストを解いていく。歴史的な内容だから暗記系だ。うむ、問題は解きやすい。


 というか、テスト特有のペンの音が重なって聞こえる現象、あまり好きじゃないんだよなー。え、みんなそんな解けてるの……!? って焦るからさ。


「どーだー。問題解けてるかー」


 テスト開始から30分が経った頃、小柄な女性教授がやってきた。目立つ髪色だよなー。美味しそうなさつまいもみたいな色してる。皮の方だ。


『なんか、私、学生から挨拶されねぇんだよなー。なんでか考えようぜ』


 って講義中に愚痴ってたっけ。多分、体型と髪色のせいだろうけど、誰もそんなこと言えずに濁した思い出。


「講義中にもいったが、私のは出席点がデカイからな。五回来てないやつはもうアウトで、四回休んだ奴はテストの具合次第。二回くらいならまあ大丈夫だろーって感じ」


 学生の様子を見ながら教授はそういう。


「基礎が出来てりゃ単位はあるぞ。応用まで行けたらオッケーみたいな感じ。テスト内容以外の質問がありゃ聞くけど、なんかないかー。なんもないなー?」


「……」


「秋学期が始まりゃあ、ゼミの選考が始まっから。だよな? たしかそうだよな?」


 テストの試験官(他の講義の教授)に聞いて、頷かれていた。


「選考だけだけどな。ゼミは二年生からな。教授の部屋に行って色々アピールしたり面接したりするのが秋学期からで。その時に私らは点数とかで評価するから、頑張って取っとけよ。分かったな!」


(凄い喋る……気が散る……)


「分かった? 分かった?? 返事しろよ、オイ」


「あの、テスト中ですので」


「あ、そっか。悪い。どうせ暇だからもうちょっとゆっくりしていくわ。質問ありゃなんでも聞いてくれなー」


 居座った……。


 この人、GW終わりの初授業でも「人少ないから小テストします~」ってやってた人だから人気ないのかなー。講義は面白いのに。


「時間が来ましたので、終わった方は退出可能です。戻ることはできませんので」


 よし、見直しも出来たし……出るか。

 鞄に筆記用具を突っ込んで、立ち上がると前の方の人も立ち上がった。

 

「……!」


 イオだ。ちょっと笑ってきた。出来たんだな。


 階段を降りて女性教授が座ってるところに紙を置いて。


「もう終わったのか~? ピンクちゃん」


(ぴんくちゃん?)


 え、ボクのこと? ボクしかいないか。


「終わりました。せんせーの授業、面白かったので」


「ふーん? なら、良かったよ。来季もよろしくね」


 なんでボクにだけ言うんだろう。いや、一番最初に立ち上がったから……?


「わ、分かりました」


「フフ」


 不思議な人だ。

 イオが外で待ってるから、教授に頭を下げて外に出た。


「どだった?」


「ばっちり。イオは?」


「見落としがなけりゃ満点な気がする」


 二人で笑いながら建物の外に出た。

 テスト期間も終盤だからか、道という道に人があまりいない。

 

「もう今日から夏休みに突入か……9月の中旬まで休みは長いなー」


「でも、期間でいうとぶっちゃけ中高と変わらねーよな」


「だけど、夏休みの宿題がないのはでかい……」


「たしかになー。サークルも夏休みはあんまって言ってたし。知り合いは海外旅行やらリゾートバイトとかするって言ってたなー」


 わあ、なんか想像つくけど、硬派な陽キャなんだ。金の出どころが分からないくらい頻繁にBBQしてるイメージあった。

 

「ボクはバイトと……」


 VTuberを始めるってのは伏せておくか。


「まぁ、バイトかな」


「ぶっちゃけ私もそんな感じだなー。でも、今日だけは一味違うぜ」


 大学の校門が見えると、ヌッと車が現れた。え、結構デカ目の車。SUVか。


 助手席の窓が下がっていくと、サングラスをかけた二人が見えた。


「乗りな、お嬢さん方。砂浜行き白濱号、発進するぜ」


「発進するぜ」


 すごい浮かれよう。ましろくんが楽しそうで良かったよ。


「やったー、お迎えありがとございます~」


「蒼央さん、安全運転でお願いしますね」


 後部座席に乗り込むと、後ろに色々と積み込まれてるのが見えた。


 あー……だから、デカい車を……。


「よっしゃ、シートベルトの着用をお願いします。あと、命の危険を感じた時に被るヘルメットも用意したぞー」


「あ、ほんとだ」


 なんで?


「なんせこんなデカい車、運転したことないからよ~! しっかり捕まってな!」


「ちょっ──」


 カーレイスばりの動きでチェンジを動かし、急発進をした蒼央さん。


「安全運転って言いましたよねー!!」


「ケハハハハ! おもれ~!! あー!! アオさんサイコーす!」


「だろー! このまま行くぜ!!」


 ダメだ、イオもテンション上がっちゃった。

 ましろくんも平然としてるし。アメリカの方が荒波だぜ、みたいな顔してる。


『大学生を含む車が事故に遭って──』


 みたいなニュースになりませんように、とシートベルトとヘルメットを被って身を縮こませた。

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