表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女装をした陰キャ、時給2000円でママになる  作者: 久遠ノト
1-4 小説家とVtuberと友達と:ただ友達と遊ぼうとしただけなのに
46/58

46 乳首丸見えの水着ってコト?



 みんなで昼食を取った後、二人は「ミオちゃんが終わるまで待ってるよ〜」と言って、本当に日が暮れるまで大学内で待ってた。イオさんは家の方向が違うから、また明日~と言って別れた。


「海、どこいくかな~」


 少し暗くなった道を歩きながら蒼央さんがスマホを取り出す。


 海の場所を調べようとした画面に『ペット 預ける さみしい 買主側の気持ち』って文字。どんな検索履歴なんですかね……見なかったことにしよう。


「千葉か茨城か! 高速乗っていけば余裕かな」


「え、テスト終わってそのまま行くつもりですか」


「当たり前よ~」


「ですよ~」


 テスト後に海で泳ぐ体力ないなあ……。


「そして、海から帰ったら配信ですよ!」


「ひぇ……」


 体力オバケすぎるかもソレは。

 

 それにしても二人と一緒に外を歩くのは何気に初めて……? 引越作業の時に歩いたけど、大学と家の道を歩くのは初めてか。


(なんか、自分の世界に二人が入ってきてくれたみたい)


 夕焼けにボクらの影が薄く伸ばされて、街頭もチカチカ点滅して点いて……エモい──って言葉で片付けるのは蒼央さんがいる手前、したくないけど……なんか、良いね。


「良いですね。こうやって歩くのも」


「みんなで歩いてるだけですけど、なんだか楽しいですよね!」


「外に出るって大事よね。分かってはいるけど、分かってるだけって感じ」


「たまには良いんじゃないんですか?」


「たまにはね~」


 なんて話しているとあっという間にマンションの前についた。

 

「じゃあ、ボクの家はあっちなので」


 そう言い、別れようとしたら、そのまま腕を組まれて蒼央さんの部屋にまで連れて来られた。


「あの……え?」


「提案をしたいんだ! 聞いてくれっ!」


 バンッと扉を開けて、蒼央さんが申し訳無さそうに頭を下げてきた。

 そして見えたのは、汚れた家の中。


「…………」


「私の家の方が大学まで近いから、勉強はうちでやってくれないかい……!」


 突然の申し出にビックリ。ましろくんも驚いてる。知らされてなかったらしい。それにしても「大学まで近いから」って理由で、ね〜?


「本音は?」


「…………ミオちゃんがいないとなにも出来ない……仕事も手につかなくて……」


「ボクになにをしてほしいんです?」


 ため息を吐きながらそういうと、びくんっと身体を跳ねさせた。なんか嬉しそうな反応だな……?


「料理と……掃除と……スケジュール管理と睡眠導入と癒やしを」


「はあ……ボクがいなくなってまだ数日ですよ?」


 でも、ましろくんがいる前で正直に言うなんて。そんなに追い詰められてるのか……? こんな部屋じゃあ集中もできないか。

 

「分かりました。でも、テストが始まったらでお願いします。テスト期間だけは実家で勉強させてください」


「それでも良い! それでお願いします! 来てくれた日は休日出勤として扱うよ!」


 うむ。それなら良しとしよう。


「じゃあ、今日は来たついでなので掃除をします。あと、せっかくなので三人でご飯を食べましょう」


「え、やった! おねーさんの手料理!」


「冷蔵庫の中身は空だと思うので、二人は買い出しをお願いしてもいいですか?」


「分かった!」


「分かりました!」


「なにが食べたいか二人で話し合って、それを調べて、人数分を買って来てください。お酒を飲みたいならお酒も買ってきていいですし。でも、惣菜が多めだとお金がかかっちゃうから──」


「うん! 任せて!」


「行ってきます!」


「じゃあ、帰って来るまでにある程度掃除しておきます」


 二人がダダダと駆けていったのを見て、一人でため息をついた。仕方ないなあっていう気持ちと、ボクがいないとダメなんだからという気持ち。


 綺麗な状態で畳まれてたエプロンを着て、きゅっと蝶々結びをして――

 

「……本当にママみたいになってるな、ボク」


 陰キャの大学生がママになるって……どんなだよ。


 

     ◇◇◇



 二人が帰ってくる頃には、掃除をあらかた終わらせた。


 数日ぽっちではそこまで汚れはしないのだ。ただ、物を適当に投げてるからこうなってるだけで、水回りとかは比較的綺麗。シンクはまぁ、汚かったけど。


 で、二人が買ってきた食材を調理しながら、ゴミ出しも頼んで、食器の用意もしてもらって……。


「よーし、行きますよ~」


 鍋ごと持っていき、食卓の中心に置いた。


 どうやら鍋が食べたいという意見にまとまったらしい。夏なのにね。エアコンがぶつくさいいながら冷やしてくれてるのが聞こえるよ。


「鍋って良いよねー……いつ食べても美味しい」


「味噌の鍋はあったかいし、〆になに入れても美味しいですよね」


「〆は買ってきたラーメンです! チャーシューも買ってきました」


 美味しいけど、さすがに暑いな……汗かいてきた。


「はい、全部食べてくださいね。第二陣行きますから」


 二人に食べてもらってからまた具材を突っ込んで調理していく……ん。


「……どーりで美味しい訳だ」


 買ってきた食材を見てみると値段が高かった。どこのスーパーに行ったんだか、肉も見たことない包装されてたし、鍋の素も見たことないメーカーのだ。


 二人に買い物を任せるの辞めておこう。食費が凄いことになっちゃう。


「最近、ましろくんの元気が無かったからみんなに心配されてたんだよ」


 調理をしていると蒼央さんがそんな話をしだした。


「コメント送ってましたけど、全然普通に見えましたよ?」


「ミオちゃんがコメントしたときだけ元気になってたの!」


「そんなに態度に出てました?」


「もう露骨に」


「そっかぁ……テスト期間も相まって、ちょっと忙しくて」


「無理してない? 大丈夫?」


「大丈夫です! でも、お姉さんがいてくれた方がもっと大丈夫です!」


「ましろくんにそう言われると弱いなあ」


「私もミオちゃんがいたほうがもっと大丈夫だぞ!」


「あはは」


「笑い事じゃなくてだな」


 鍋の第二陣目も持っていき、すぐになくなって、〆のラーメンを作ることに。


「そういえばさー、ミオちゃんって水着持ってるの?」


「え、持ってないですよ? 高校の時の奴も……捨てた気がしますし」


「男子高校生の水着ってあの乳首が丸見えの奴?」


「男性が着る水着は全部丸見えですよ」


「お姉さんのも丸見えだったんです?」


「まぁ、学校指定だったから……」


「…………やば」


 ましろくんの語彙力がなくなってる。蒼央さんもニヤニヤしてるし。そう言われたら恥ずかしく思えてきた。いや、別に良いと思うけどさ。


「スク水とかはないの?」


「あるわけないでしょ」


「みおってひらがなで名前が入ってる」


「ないですって」


 小学生でもないよそんなの。昭和とかの話じゃないのかな。


「じゃあ、ママの寸法知ってるから私が買っとくよ」


 とうとうママって言い出したよ。


「いや、べつに……自分でかいますから」


「だーめ! そうだ、ましろんも一緒に選びに行く?」


「はい! ぼくも水着持ってないので助かります」


 ああ、また話が勝手に進んでる……。


「じゃあ、テスト終わってからそのまま海に直行ね。持って行く物は全部用意しておくよ! ミオちゃんはテストを受けに行って、そのまま車に乗ったらそれで良し!」


「……拒否権は」


「ないよ~」


「ですよね……」


 ましろくんが同伴だから、変なのは買ってこないと信じたい……。いや、ましろくんは最近蒼央さんに変な影響受けてるから……ううう。


 テストに集中したいのに、色々と考えることが多いぞ、くそお……!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ