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女装をした陰キャ、時給2000円でママになる  作者: 久遠ノト
1-4 小説家とVtuberと友達と:ただ友達と遊ぼうとしただけなのに
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45 友達の距離感じゃないだろそれはァッ!!



 講義が終わって建物の外に出ると蒼央さんとましろくんがいた。それで食堂の中で話し合いをすることになったんだけど……。


「……うぅ」


 チクチクと蒼央さんの視線が痛い。ボクなにかしたかな。

 外行きの姿の蒼央さんが睨んでくるの凄い高火力なんだけど。


「渋い男って格好いいですよね」


「分かります! ぼくもかっこいい男に憧れてて……でも身長が低くて」


「ましろくん。渋い男は身長じゃなくて、心だぜ?」


 イオとましろくんが意気投合してる。ほら、蒼央さんも会話に混ざ……痛い。


 なんで怒ってるんだろう。怒ってないですよみたいな表情してるけど。それなりに付き合ってるからこそ分かる。あれは不機嫌なときの顔だ。


「あの、イオさん……だっけ?」


「はい?」


「ミオちゃんとはどういうご関係なのかな」


「友達ですよ。な、ミオ」


「う、うん」


 この質問をする辺り、蒼央さんはイオさんが気になってるのかな。


 何か勘違いしてる……? 勘違い……んー……。あっ! もしかして、あの腕組みのことか!?


 ──ピロン。


 ポケットに入れてたスマホが鳴った。確認すると蒼央さんから。笑顔で取り繕いながら机の下でボクにメッセージを飛ばしてきたのか。


『しらはま)友達なら腕は組まないんじゃないかな!』


 ああ、やっぱり……ソレかあ。

 となるとイオさんが会った時に警戒した様子だったのも気になってそうだな。


「あの……イオ? この二人はその……ボクのこと色々知ってくれてるから大丈夫だからね?」


「おう。知り合いだから警戒してないぞ」


 よし、イオさんの口から『警戒』って単語を引き出した。あとは事情を話すだけ……なんだけど。これを話すのは正直、男の面目丸つぶれなんだけどなあ……。


 いや、仕方ない。言わないと誤解されたままになっちゃう。


「蒼央さん、イオはボクを守ってくれてるんです」


「へえ?」


 こわい……。女性が機嫌の悪いときの「へえ?」は怖い……。


「最近、男の人に声をかけられることが増えて、それでイオが毎回追い払ってくれてて。腕を組むのもソレで。話しかけられないようにって」


「最近すごいよな、2日に1回は来てる」


「いや、講義が被ってない時にもくるから……ほぼ毎日というか。でも、なんで最近増えてきたんだろ……テスト期間なのに……」


「な。だるいよなー」


「みんなグイグイ来るから、特にねー……」


 うーん、とイオさんと一緒に頭を捻る。

 すると、蒼央さんが生暖かい目を向けてきた。

 もう怒ってないみたいだけど、その目はなんなんだ。



      ◇◇◇


 

(最近男に絡まれる、か……)


 ミオちゃんが腕組みの説明をしてくれたんだけど、まさかそんなことになってたとは。


 いや、理由は分かるよ? 

 だって、目立つもん。


 大学にはじめて来た人が、人の入れ替わりが激しいタイミングでもミオちゃんを見つけられるくらい目立ってるんだもん。


 ピンク髪と金髪とギターバッグ。それに二人とも顔面が良い。


 ミオちゃんは男や女に好かれる優しい顔をしてるし、童顔だから声を掛けやすい。


 イオさんは声を掛けにくいけど、自分に自信がある男性層からは人気がありそうだ。


 言いにくいけど、まぁ、その内気づくはず。

 特にこれに関しては自分たちで気づいた方が良いだろう、うん。


「じゃあ、イオさんはミオちゃんを守ってくれてたんだ」


 腕を組んでいた理由も分かったし、それも納得できる理由だったし、良しとしよう。


「ありがとう、うちの子を守ってくれて」


「いいっすよ~。友達を守るのはとーぜんなので」


 ミオちゃんが一緒にいるんだから、良い子なんだろうな。


「ミオにこんな綺麗な上司がいたなんてな。あ、よく言ってたバイト先の人って蒼央さんのことか」


「そうだけど……」


 ん。


「伊尾さん。その話、詳しく」


「よく言ってたのは、バイト先の人が綺麗とかって話っすねー」


「ちょっ……イオ! ストップ!」


「料理を作るレパートリーを増やさないととか、女性の気持ち? とかも色々聞いてきてたんですよ~。だから、ミオにとって大事な人なんだろうな~って」


 あらあら!


「ミオちゃん~?」


「…………えーと、まぁ。そんな感じで」


 ミオちゃんは私のことを綺麗な人って言ってたんだ。そっかそっか、ふーん?


「バイト再開したら、楽しみにしといてね?」


「……はい……」


 恥じらうミオちゃんの顔でミオちゃん成分の充電が完了した。


「テスト期間っていつ終わるんでしたっけ? 早くおねーさんと遊びたいです」


「2週間後かな? イオもそのタイミングだっけ」


「そー。え、なんかする?」


「家でゲームを──」


「あ! 海行きません!? 夏だし! ミオと二人で行こうとしてたんですけど」


「初耳です、ちなみに」


 ミオちゃんは小さく挙手してそう言ってきた。


「大学生だし、夏休み満喫したいんで! どうせならみんなで行きません?」


 ミオちゃん、君の友だちは陽キャなんだね。

 ましろんもゲームしたいって言ってたけど、海も捨て難いようで悩んでる。


「絶対に楽しいと思うんですよ~。電車に乗ったらすぐに付きますし」


「行くならレンタカー借りるけど」


「わ! 名案〜。私も免許持ってるっす! 交代で高速乗って行けますね!」


「ましろくんもそれでいい?」


「……うーー、はい! 浮き輪とか持っていきますね!」


 うんうん。ましろくんも海派になったな。これでみんなで楽しめるようになった。


「やった~、楽しみできた~。実家に帰ってこいって言われてたんすけど、せっかくこっち来てるんで色々遊びたかったんですよね~」


「実家はちなみに?」


「岡山!」


 ほー、随分と遠いところから。


「岡山ってどこでしたっけ」


「分かんないよね~。左の方にあるフルーツがうまいとこ」


「ふるーつ! ぼく、フルーツ好きです!」


「じゃあ、実家に仕送りに頼んどくよ。連絡先って聞いても?」


「わーい! お願いします!」


 流れるように連絡先を交換してるのを見て、私もついでに交換しておいた。


「岡山で海に行くってなったらどこに行くの?」


「瀬戸内海っていう絶妙な海があるっす。くらげとかいっぱいいます」


 ドヤ顔でそう言われて、この子がミオちゃんの友達の理由が分かった。憎めないタイプの陽キャ。流れを持っていかれて、押し負けてる感じだ。

 

(弱気でもツッコミはできるミオちゃん、強気でグイグイ引っ張るイオさん。ふむ、いいコンビだ)


 距離感が近いのも別に恋愛感情とかではなさそうだし、この二人の関係もなんだか面白そうだ。大人の余裕で優しく見守っておこうじゃあないか。

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