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女装をした陰キャ、時給2000円でママになる  作者: 久遠ノト
1-4 小説家とVtuberと友達と:ただ友達と遊ぼうとしただけなのに
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42 テスト範囲教えてよ〜という奴だ



 カフェから帰った後、蒼央さんに注意した。もはや叱ったと言ってもいい。


 ボクを飼いたいと言い出した時から倫理観には期待をしていなかったけど、他所様の迷惑になるようなことはしたらダメだ。それを伝えると口を富士山のように尖らせて、涙目で謝られた。本人も少し感情的になっていたことを自覚していたらしい。

 

 蒼央さん曰く、「小説のネタに困っててインスピレーションが欲しかった」のだと。ねこ餃子さんも言っていたけど、孤独で自分との戦いと言っていたから……色々と煮詰まってたのかもしれない。

 

 この前の「最近構ってくれてない」という事件然り、「オレンジジュース媚薬混入事件」然り、ずっと「小説のネタになる」って言ってたもんな~……。


(編集者さんとのミーティングも、ここ最近はいつにもまして唸ってる気がするし)


 もしや、上手く行ってないんだろうか。雇用主の仕事が上手く行ってないなら、ボクの生活にも影響があるんだよな。役に立ってるとは言われたけど。


 何か力になれるなら、なるべき……エッチなこと以外なら我慢できる。

 

「……テスト前の(この)休み明けで色々聞いてみるか」


 全部で15回ある授業が全て終了すれば、翌日からテスト期間が始まる。

 テスト期間は1週間から2週間程度あるらしい。高校よりもちょっと長めなんだなーと思った。


「──じゃあ、来週で講義が終わるけど五回休んだ奴いるならもう単位ないからな~。テストは頑張って作ったら受けてほしいが、100点でも単位は出ないんで。んじゃ、今日の講義は終わり」


「ええ〜」


「あと、テスト範囲は前の授業で言った。教授は1回しか言わん生き物だから、また来週な〜」


 そんなことを考えていたら講義が終わった。

 これが14回目の最後の講義。来週の講義は全部15回目の講義で、来週のが終わればテスト期間だ。


 バタバタと人がいなくなる中、もらったレジュメとメモ代わりのルーズリーフを教科ごとに分けているファイルに突っ込んでいく。ついでに全部あるかチェックしていくか。


「なあ、前回の講義出てない!?」


「頼むよ! 単位落としたくないんだよ〜!」


「あとレジュメのコピーしたいからさ、ちょっと時間ある?」


 前の方では講義で見たことない人達が前列の真面目そうな人たちに声をかけて回ってる。テスト範囲を聞いてるみたいだ。


(ああいう人たちはサークルの先輩から傾向やら過去問やらを受け取ってるんじゃないのか?)


 なんて邪推しているボク。

 大学あるある。サークルの先輩から過去問をもらった、という話。


 陰キャには関係ない話だ。うん。まぁ、そういうのに頼らずに、頑張ればいいだけだからな。本来はソレが正しい訳だし。過去問とか傾向とか……。


「……ぐぬ、羨ましい」


 ──ずもっ。

 

「なにが羨ましいんだ?」


「おはよう、イオ……」


 資料をまとめているとイオさんがバルバルタイガーのぬいぐるみを押し付けてきた。陽キャに声をかけられたのかとびっくりした。イオさんも陽キャではあるんだけど。

 

「この前さあ、ミオの取ってる講義を教えてもらったじゃんか」


「うん」なんでぬいぐるみ越しに喋ってくるんだろうか。「そうだね」

 

 少し前に好きなモノの話になって、最近はましろくんと一緒に見ている「バルバルタイガー」の話をしたら、イオさんがぬいぐるみやらキーホルダーやらを買って常備をするようになったのだ。


 フットワークが軽い。おすすめしたのをすぐ見て、グッズを買うなんて。興味を持ってくれるの嬉しいよね。


「結構被ってたからさー、一緒に勉強しね?」

 

「え」


 何の話だっけ。バルバルタイガーで全部記憶がないんだけど。えーと、講義が被ってるからテスト勉強をするって話だっけ。


「イヤか?」


「あ、いや……誰かと勉強したことなくて……」


「お、勉強会初めて? なら、尚更一緒にしよーぜ。今日暇?」


「きょう……」


 バイトは休みをもらってるから暇だけど、一人で図書館でするつもりで……。


「……はっ」


 まて、イオさんはサークルに入ってる。

 つまり、過去問を持ってる可能性がある。


「うん。一緒やろ」


「よしきた」


「なあ! そこにいる二人さ。前回の講義出てねぇ?」


 わ、声かけられた。陽キャの男の人達怖い……。

 

 するとイオさんに手をぐいと引っ張られて席を立った。後ろから声をかけられるが「無視しろ」と一言。男らしい。


「なあって! 教えてくれよ! そこのピンクの子も──」


 と、手を引っ張ってきた男の手をイオさんは引っ叩いた。


「私のに触んな。サボったやつに教える訳ねぇだろーが」


 行くぞ、ミオ。そう言ってイオさんはボクを連れて講義室を出た。わ、わあ……これが、男気……! 手を引っ張られる時にみたイオさんの横顔も……。


(……ボクが女の子だったら惚れてたかも……)


 なるほど……こういうのがボクに足らない部分か。

 

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