表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女装をした陰キャ、時給2000円でママになる  作者: 久遠ノト
1-3 小説家とVtuberと友達と:ただゲームしてただけなのに
36/58

36 これが、恋心……!?


 蒼央さんが何かいい出した。正直、怖い。

 最近構ってなかったって、構ってなかった……? 嘘だろ……? アレで?


『ミオちゃああん、肩を揉んでっ! バキバキでさあー。んッ” お”っ……ああ”』


『いい湯かーい!? 一緒入る!? 背中流す!?』


『たまには添い寝はどうだい? わたし、体温高いぜ? どだい?』


『瓶の牛乳買ったからさ、漫画とかの腕をクロスさせて飲むやつやりたい!』


『メイド服似合ってんじゃあん。じゃあ、今からましろくんの家にレッツゴー! 性癖を捻じ曲げるんだ! おら、突撃じゃあ!』

 

「──ミオちゃん! どうなのさ! 興味ないのっ!?」


 アレで構ってないって言われたら……なにをしたらいいんだ……。

 あと、蒼央さんって自分の魅力をご存知ないのか?


「どうなんだい!?」


 ぐいぐいと身体を押し当てて聞いてくる。色んな所が密着して仕方がない。オフの姿であっても魅力は衰えない。


 それに──興味がない訳がない。なぜなら男子大学生だから。


(だが……これは、蒼央さんの暴走である。そして、ボクは……蒼央さんのママだ)


 蒼央さんと接する時にはママであるべし。


 額縁に入れて飾って毎日復唱して仕事に望むレベルで、ボクは『二度と、変な気を起こさない』と誓ってる。仕事中に性的興奮を感じたら仕事にならないんだよ! 


 で、こういう時はなんて返答したらいいんだ……?


 興味がありません──うん、嘘だ。男だし。興味がありすぎて困る。

 興味があります──うーん、これも返答として間違ってる気がする。

 

「ミオちゃんー! エッチなこと!」 

 

 蒼央さんは男性のことが良く分からないと言っていた。


 つまり、男の部分を見せたら……引いてくれるのでは? 初日は耳元で話しかけただけで、びっくりされたもんな。


「エッチしよ! エッチしよっ!」


 クイクイと引っ張ってきていた蒼央さんの手を握った。

 

「蒼央さん、ボクも男ですよ?」


 片手でエプロンをほどいて、ニヒルに笑った。


「そういうことになる覚悟ってあります?」


「は、はわ……」


 顔を真赤にして目を泳がせてる。うん、作戦成功だ。

 これでいいはずだ。怖がらせたかもしれないけど、仕方あるまい。

 ん、抱きついてきた。やりすぎたかな。

 

「これで懲りましたか? エッチなんてしなくても、ボクは蒼央さんから離れようと思わないですから安心して……」


「いまの……すごい……やばかった」


 あー、やりすぎたみたい。そうだよな……怖いって言ってるのにやっちゃうのはさすがにダメだったよな。


「ごめんなさい。怖がらせるつもりは」


 なくて……といいかけると、ガバッと上がった顔は非常に嬉しそうな顔をしていた。


「女の子の気分になったよ! いまのがメス堕ちって奴かな!?」


「はっ?」


「それに、謎の感情の正体がわかった!」


 感心したように胸あたりを押さえて、蒼央さんは目を輝かせた。


「独占欲、またの名をヤキモチ。つまり、恋心って奴じゃないのか!?」


「こいっ……」

 

「胸にもやもやとした不安がある……。でも、穴と捉えるのは……なるほど、誰かと一緒にいたら埋まるから、そこがポッカリと空いたようにという比喩だな。ただ、穴というよりモヤに近いな。視野が狭まる感じ、息が詰まる感じが……。となれば、何か変なことをした後に謝る描写があるのは、頭が冷静になれないからか。字面では分かっていたが……実際に体験してみると、こうも感情に支配されるのか。つまり、わたしはミオちゃんに恋をしているということで、私だけを特別扱いしてほしかったってこと……」


「え、あ、えーと、蒼央さん?」


 全部声に出てますけど……その……。


「なるほど……なるほど? これは、作品の幅が広がるぞ!」


 蒼央さん……もしかして、気づいてないのか?


「ン、どうしたんだい? 顔が赤いぞ? 体調には気をつけるんだぞ? ちょっと、この気持ちを文字に起こしたいから部屋に行ってくる! また声かけるから好きにしてて!」


「はい……」


 バタバタと部屋に入っていった蒼央さんを見送り、はぁ、と椅子に座った。

 疲れもあるけど、それ以上に……。


 ──恋心って奴じゃないのか!

 ──わたしはミオちゃんに恋をしている

 ──私だけを特別扱いしてほしかった


「勢いで、すごいこと言ったよ……あの人……」


 それって、そういうことだよな。


 木下心音、18歳。

 異性から初めて好意を向けられ、困惑中。


「さりげなく言われただけで……こんなに刺さるんだ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ