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女装をした陰キャ、時給2000円でママになる  作者: 久遠ノト
1-2 小説家とVtuberと友達と:ただお隣に挨拶をしただけなのに
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28 大会運営者からプレゼントもらった


「プレゼントです。色々お世話になったので」


「だっ、でっ、ど……うぇっ……ぱ、パソコンだよ!?」


「ぼく、パソコンありますもん。買ったばかりですし」


「でも……えっ、ぱそっ……」


 金銭感覚どころの話じゃない!

 ちょっと、感覚がアレだ! 庶民には分からないやつだ! 

 なんだ、なんだ? ボクがおかしいのか……!?


「最多キル賞の人にはパソコンって……ハイスペックなヤツだし、最多キルしたのはましろくんだし、もらえるわけないよ!」


「そうですか……?」


「そうだよ! それに、その、他のメンバーにも申し訳ないし、大会の参加者さんたちにもっ」


 なにもしてないヤツが、そんなに美味しい汁を吸っていい訳がない!

 吸うどころか、お椀を持ち上げて一気に飲み干すレベルだ。


「それに関しては大丈夫です。みんなには許可を取ってるので!」


「許可……?」


「大会運営者さんにも言ったし、モココさんとセカイさんにもお姉さんにパソコンをプレゼントするって言いました。みんな、ぼくのモノだから好きにしたら良いって言ってくれました」


 この日ばかりは、ましろくんの笑顔が恐ろしく思った。

 なんでそこまでしてくれるんだろう。こわい。


「あと、リスナーさん達にも……「勝ったのはコーチのおかげっていうくらいなら、なんかプレゼントしたら?」って言われたので、することにしました」


 そのリスナーも最多キル賞のパソコンをプレゼントするとは思ってないよ。

 やっぱりダメだ。ボクはこんな凄いのを受け取れない!


「ましろくんね、聞いて? ボクはこのパソコンを受け取れるほど何かをした訳じゃないんです。あと、炎上しちゃうかもだし」


 ね、と蒼央さんにも促すと、うんうん、と頷いて同意してくれた。


「だから、受け取れない。気持ちはありがたいけど」


「ふふふ」


 なんで笑ってるんだこの子は。

 って……あれ、ましろくんの胸ポケットにあるのって……スマホか? 上下逆に入ってるから分からなかった。


「お姉さんならそう言ってくれると思いました」


「は、はい。え、うん。え?」


「じゃあ、パソコンの梱包箱の横に貼ってあるカードを見てください」


 言われた通りにパソコンを持ち上げてみると、横に何か貼ってあった。

 蒼央さんに取ってもらうと、目を大きくしていた。

 スッと渡されたので、受け取る。


「えー……、っと? 拝啓、お姉さん殿。この度は弊社の大会を盛り上げてくださり、まことにありがとうございます。チーム『ラーメンよりうどん派』のコーチとして、プロや元プロが大勢いる中、プロが在籍していないチームを優勝に導いた手腕、見事なものでした。その手腕を称えると共に、チームメンバーの要望でお姉さん殿には、最多キル賞と同じパソコンを贈呈することに致しました──」


「そーです! このパソコンは最多キル賞のパソコンじゃなくて、大会のスポンサーさんからのプレゼントなんです」


「へっ……いや、でも、そんな」


 そう言うと、蒼央さんに肩をぽんぽんと叩かれ、裏を見てみて、と。

 裏返しにすると、まだメッセージが続いていた。


「また、優勝チームのインタビュー動画をコーチ陣も含めて撮影を行うため、詳細なご連絡は追ってさせていただきます…………」


「その撮影会は要望があれば、顔とかもちろんそういうのは映さないらしいです」


 いや、別にそれはどうでもいいんだ。

 分かるよ? 注目度が高まってる状況で優勝チームを優勝に導いた方法とか、そういうのを深堀りするんだよね?

 視聴者はライト層が多いから、競技人口の増加とかも狙ってるんだろうけど。

 そこじゃないのだ。


「え、ほんとにパソコンもらうの……え? 親戚のおじさんのお古をもらうのですら断ったのに……」


 ハイスペックと言ってたから、月に20万もらう社会人の給料の2.5ヶ月分くらいだろう、きっと。

 結婚指輪の話してる……?

 え、ボク結婚するの?


「なんで、こんなことになったんだぁ……」


 訳が分からなくなって、その場に屈み込んだ。


「お姉さん、嫌なんですか?……その嫌だったら、ぼくから断ることも」


「いや……その、なんというか、嫌じゃないんだけどさ」


 両足を両手で抱きかかえながら、ましろくんを見上げた。


「ほんとに……パソコン……?」


「運営会社がくれたんですから、受け取っちゃいましょう!」


「嬉しい反面、嬉しいことが起き続けて怖い反面って感じだぁ……」


 また顔を伏せて、はぁ、とため息を付いた。足に自分の息の暖かさが伝わる。


「……ボク、貧乏だから、もらっちゃうよ。いいんだね、それで」


「はい! じ、じゃあ! 撮影会の方も……」


「いくよぉ……断る理由もないし、ただ、ボクなんかが良いのかなって感じ」


 苦笑いを浮かべると、またましろくんはニヤと笑った。


「ということです! 大会運営者さん」


『はい、了解しました』


「…………?」


 スマホから声が聞こえた。

 えっと、え?


『実は、サプライズ企画の一環として一連の流れを録音してまして。公式チャンネルの方で動画化したいと思っております』


「は、はぁ……」


『動画にしてもよろしいでしょうか』


 いや、急にそんなこと言われても。


「プライバシーな部分を確認したいので、動画を投稿前にましろくん宛に共有してもらってもいいですか? 問題があれば修正をしていただくことを条件に」


『もちろんです』


「だってさ、心音ちゃん、それで良い?」


 蒼央さんに言われて、声が出ずに首を傾げながら頷いた。


「問題ないそうです」


『では、動画制作班に依頼します。またご連絡いたします』


「は〜い」


 大人の間で話が進んでいった。


「もう……怖いよぉ……」


 もうボクは人を信じれなくなりそう。

 ただ、お隣さんを訪問して、悩みを聞いただけなのに……こんなことになる?


「うううう……っ」


「ここまで使ってもらう?」


「お姉さんの反応かわいいので、ぜひ」


『承知致しました』


 承知しないでください……。

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