3話 希望なもの
3話
私は異様に早く駅へと向かった。
いつも通り、その時はまだ、電車は来てなかった。
午前5時15分
少し待ったら、電車がやっと来た。
電車に乗ると、私はそのまま深い眠りに入った。
結果は当然、遅刻。その後、先生に怒られた、これも当然のことである。
今日は体育で持久走がある。
私は持久走が嫌いだ。普通に走れないこともあるが、他の人が速くて、焦らされることの方が嫌いだ。
人に焦らされても、突然体力がつく訳でないので、当然、、、うん、そんな感じ。
「一緒に走ろうね!アイちゃん!」
「ん〜、ユイちゃんごめんね。私遅いから、着いていけないかもしれない。」
「大丈夫、大丈夫!ゆっくり走ってあげるから。」
「う〜ん、そういう問題じゃな〜」
「別に記録とか狙ってる訳じゃないから!全然いいよ!」
「あ、ありがとう。」
季節は冬に入りかけ、夏じゃない分、汗が出なくて走りやすい。
でも寒いから、水分が奪われて、辛くなりそうだ。
自分を傷つけないために。
「はぁ、、、でも、、、頑張ろう。」
アイは決意した。
私は思うんだ、どんな理由でも、本気でやったら何かいいことが起きるんじゃないか、ってね。
それがどんな結末になろうとも、悔やむことはしたくないしね。
「パン!」
先生の銃の音がなり、持久走は始まった。
まずは最後尾。
「がんばれ〜」
ユイは横で一緒に歩いてくれてる。
惨めなものだ、集団から離されて、横で友達が全く本気を出てない状態で、応援をしてくれる。
しかもこれで、本人は本気。足が痛い。腹が痛い。口の中の水分がどんどんと奪われていく。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。」
ユイ*あ、アイちゃんの呼吸が荒くなってる。大丈夫かな。かなりキツそうだ。
ユイ「アイちゃん、ちょっと、、、休憩する?」
アイ「いや、いいよ、、ユイちゃん。私は走るって決めたから。」
ユイ「え?」
アイ「私は走るよ。頑張るから、、ユイ、見ていてね。」
ユイは気付いた。アイが、いつも全く頑張ることをしないアイがいつになく本気であり、辛いこと、苦しいこと、投げ出したいことを彼女は初めて、向き合っているという事実に。
「あの日とは、違うということも、ね」
ユイ*アイ………
ユイ「応援するよ。」
その言葉はアイに届いているのか、その事は定かでは無い。
しかし、そんなことはどうでもいいことだ。
アイ*全く安定して走れてない。体がぐらぐらする。頭が回る!辛い。きつい。やめたい!
アイはほとんど頭が回っていない。ただただ、やめたいと切実に願っている。
しかし、彼女は諦めることは無かった。
それは彼女自身の気持ちであり、心の強さを表していた。
焼けるような痛みの中、アイの意識は宙に舞った。
ーーー
ある男の子が遠くの方にいる。
走って、その男の子の元へスカートを弾ませながら、駆け寄る。
その男の子は髪がボサボサで、白い服を着ており、少し大人しそうで、右手には本を持っていた。
「何してるの?」
「本読んでるんだよ。」
「面白い?」
「まぁまぁだね。」
「じゃあなんで本を読んでるの?」
「それはね、僕にとって、本というのは"現実を忘れ、自分に希望をもたらしてくれるもの"だからだよ。」
「へ〜私にもそんなもの出来るかな?」
「できていいものじゃないよ。、、、でも、、君は、君が壊れた時に出来そう。」
「ん、1冊だけ、貸してあげる。」
「いいの?ありがとう!!」
ーーー
目を開ける。
「ん、んあ、、、し、知らない天井。」
「保健室だよ。安心して、休んでて。」
「うん。ありがと、ユイ。」
「あはは。どういたしまして、アイ。」
「ガララララ。」
保健室の先生がドアから入ってきた。
「ごめんなさい、アイちゃんのご両親に電話が繋がらなくて、、何か知らない?」
「あー、私の両親は医者で、今日手術だから出られないんだと思います。」
「そうだったのね。」
「自分、1人で帰れるので、呼ばなくていいですよ、倒れた件は私が直接お父さんと、お母さんに伝えておきます。」
「で、でも。」
「ありがとうございました。」
「ガララララ。」
私はそそくさと帰って行った。
電車に揺られ、1人で帰る。
窓に移る私の目には少し光が灯っていた。
家に着いた。
無口で家に入り、食事をさっさと済ませる。
すぐにベッドに入った。
「あれ?、、寝不足を感じない。」
私は起き上がり、ひとつの事を調べ始めた。
調べていくうちに笑顔になってしまう。
「あと1ヶ月後」
列車が次来る日は1ヶ月後の午後17時。
それは真冬の、雪の積もった日の出来事である。
持久走の話、不自然になるのがどうしても悔しい。
不自然にならないようにしたいので補足入れときます。
補足
アイは過去、何度も逃げることを行っている。そして、アイが今、やりたい事というのは何かに向き合うこと。
その何かに向き合うんだから、この持久走ごときで逃げてはダメだという気持ちがあります。
アイというキャラクターは思ったよりも情熱的です。普段は冷静でも、土壇場になると気持ちを何度も曲げることが多々あり、そこが1番不自然になることが多い理由です。
アイというキャラクターを知ってもらえればその部分の理解も高まって、この物語も面白くなると思ったので書いときました。