♡6 嵐の前の静けさ
野川秋 アキ(16)高1 女子高に通うイケメン女子、文武両道の秀才だが超絶マイペース
宮姫純恋 スミ(16)高1 秋のクラスメイトで親友、妥協なきツッコみマシーン
佐竹葵 (16)高1 秋たちとは別のクラスの子、先日秋にラブレターを渡した
スミ「タイトルに変わったな~」
アキ「変わりましたね~」
スミ「イケメンJKのひとりゴト ♡~華が狂い咲く少女達の園で野川秋♀は眠る~♡」
アキ「……タイトル長っ!」
スミ「ちなみにこうなる予定でした。『イケメンJKのひとりゴト ♡~華が狂い咲く少女の園で野川秋♀は無双する~♡』」
アキ「無双するって…… バトル展開にでもするつもりかねぇ……」
スミ「じゃねぇ? 女子高でバトル展開ってことは…… 女をめぐる女の争いだな」
アキ「御意! じゃあ早速、鉄球持って行動する、話しかけてきた子は容赦なく攻撃すべし!」
スミ「世紀末過ぎる…… なんてデンジャラス」
アキ「あと……なんか響きがエロくない? 少女の園」
スミ「そう思ったヤツが一番エロい~!」
アキ「確かに…… さて話もまとまったことだし本編入ります~」
スミ「全然まとまってないわ~ あと鉄球とエロなしで入れよ!」
四時間目の終わりのこと
「おい秋~ いい加減起きろ! もう昼飯の時間だぞ」
「うへぇ~!?」
教科書を枕代わりに眠る秋の頭を、純恋が軽く叩いた。
寝ぼけた表情の秋は、うっすら涙を浮かべ、まだ眠そうにしている。
秋は午前中の授業のほとんどを意識がないまま終えた。
「変な声出してるんじゃねーよ おまえなぁ~ 学校はホテルじゃねーぞ」
純恋のツッコみは続く
「うん、でも大田急線の座席と学校の自席が一番よく眠れる~」
「電車の中で寝たら目的地過ぎるぞ! 学校の机と椅子だって固いし寝にくくないか?」
「そうなんだけど、この席に座ってるとなんか落ち着くんだよね~」
「教室全体で見ると端だし、先生の位置から目立たないから視線を気にしないですむしな」
「それもあるけど、隣にスミがいるから」
秋は純恋にそう伝えるとニコっと無邪気に笑う。秋には無防備なところがあり言葉以上の意味はない、純恋はこれまでの付き合いで分かっている。
分かっていても……なぜか今日はドキッとする。
「そ、そうかよ、てかお前体調大丈夫か?」
自分が隣いること……秋にとってどんな意味があるのか掘り下げたいが、こそばゆい気もするので、純恋は話題を変えることにした。
「ん~どうして? いつも通りだけど」
「うそつけ、顔色良くないし目の下にクマがなぁ、それにいつにも増して爆睡」
「あれ~ わかっちゃったか…… 上手く隠せたと思ったのに…… はははぁ ……まだメイク下手かも」
秋は苦笑いしている。
顔色の悪さを隠すために、秋はわずかだがメイクをしている。秋は通学時は普段メイクをしていない。今しているメイクもベースのみだが上手くできてはいる。
秋は色白のため調子が悪い時と顔に出やすい。いつも秋を見ている純恋からは違いは一目瞭然だった。
「おまえ、ずっと悩んでたのか?」
「悩んでってほどじゃないけどね。土日の間、一人になると気になっちゃって…… 頭に浮かぶっていうか、そうなると中々眠れなくて…… あ、でも大丈夫だよ、それよりお昼、お昼、ご飯食べよ!」
「お、おう、そうだな……」
秋は机の上にレモンティーのペットボトルとカロリーメイトチョコレート味の二本入り、純恋も同じように自分で作ってきたお弁当を開けとお茶の入ったステンレスマグと一緒に机の上に広げた。
「スミのお弁当今日もおいしそうにゃ~」
秋は目をキラキラさせる。まるで子犬のように……語尾は『にゃ~』だが
「秋は随分少食だな。アタシの少し食べるか?」
「その衣が美味しそうな色をした唐揚げと安心のスミちゃん特製玉子焼きも、ほうれん草のお浸しも、ものすごぉおおおく魅かれるけど今日は大丈夫!」
「そうか~気が変わったら言えよ。アタシが一人で食べるにはちょっと多いくらいだし」
「ありがとう。今日あんまりお腹減ってないのと、部活辞めたからね…… 今まで通り食べてたらプニプニになっちゃうかなって~ それともスミ皇太子殿下はプニプニ悪役令嬢アキがお好みですか?」
「プニプニはいいけど、アキ令嬢は寝てばかりでやる気のない怠け者だからな、この場を持って婚約破棄とさせていただく!」
「が――ん! まさかの婚約破棄キタ――! ネットでは女子は少しくらいプニプニしてる方がモテるって書いてあったよ!」
「ネットの情報を全てを鵜呑みするな。変なのもあるからな。てかお前全然プニプニしてないじゃん。肝心なところも含めて」
「がが――ん! 肝心なところはまだ成長中なだけだよ~~ ぶ~~スミがいじわるする」
秋が途端に頬を膨らませて、今度は拗ねた表情を浮かべる。あざといと言われかねないその仕草も顔の造りが良いせいか、嫌味にならないどころかかわいい。美人ってヤツはつくづく得だなと純恋は思う。
(しかし…… 笑ったり、拗ねたり忙しいヤツだな…… まったく)
秋を見ていると飽きないし純恋はいつも苦笑してしまう
「いじわる、いじわる、いいなぁ……Eの人はい~よね!」
「ば、ばかっ、おまえ突然変な事をデカい声で言うなよ!」
余裕をもって秋を見ていたはずが手痛いカウンターパンチをもらい、純恋はたじろぎ、あげく声を荒げてしまった。
「ふふん~♪ 私はギターコードのことを言ってただけだよ、C、D、E、F、G、A、B♪ でも大当たりだったみたい~にゃ、うししっ」
「こ、このヤローぅ!」
「あぁ午後はスミのお胸で眠りたい……あの丘で死するなら拙者一点の悔いなし」
「やっぱギターコード関係ねーじゃん! あと発想がおっさんくさいわ!」
「ダイブできるなら……おっさんでもいいや、……でもその前にやることがあるんだよね…… この後、あの子に会ってくるよ」
秋からふにゃふにゃした雰囲気がなくなり、わずかな微笑を浮かべている。いつもと変わらないように見えるが、少し緊張しているようにも見える。
「頑張れっていうのも変だけど、無理のない程度にな」
純恋は何となく落ち着かない。
「ありがと。話すだけだし全然大丈夫。でも知ってたら教えてほしいな、佐竹さんってどんな子か」
「アタシも大したことは知らないよ、美化委員で一緒だから少し話すくらい。真面目で大人しい子、問題とか起こすタイプじゃないあとは……」
腕を組んだ純恋がやや斜め上を見上げながら答えた。
「あとは?」
「小さくて、すげ~かわいい女子」
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