♡4 ラブレター♡
本作品は不定期更新です。
野川 秋さん
突然のお手紙申し訳ございません
直接伝えたいと思っておりましたが
いざあなたに会おうと思うと
胸が苦しくなりどうにもなりません
この想いは自分だけで抑える事ができません
ご迷惑になるのはわかっております
それでも気持ちを伝える事をお許しください
秋さんが抱きしめてくれたあの日
私の中で何かが変わりました
平凡な学校生活も秋さんを思うと
全てが愛おしく感じます
廊下ですれ違うとき
秋さんの声が聴こえたとき
掲示板に張り出された
あなたの名前を見つけたとき
私の心は幸せで満たされていきます
何よりも私にかけてくれた言葉を忘れられません
秋さんにとって何気ないものだったのかもしれませんが
それは私の小さな心に永遠の花を咲かせる魔法でした
野川 秋さん
私はあなたが好きです
返事は期待していません
もし少しでも気にかけてくださるなら連絡をください
一年E組 佐竹 葵
LIME ID:XXXXXXXX
◇◇◇◇
「とてもラブでラブなラブレターをもらってしまった。あわわわ、どうしよう……」
1月13日金曜日の夜、秋は頭を抱えていた。
机の中に入っていたラブレター、そわそわしながら帰宅後自室ベットに寝転んで何度か読んだが、中身は秋に対する好意で溢れているようにしか見えない。
ただ内容については腑に落ちないところが何か所かある。
「抱きしめてくれたあの日?いつのこと?私はこの子になんて声をかけたの?全然記憶にない……」
体育の時間や休み時間などに盛り上がりクラスメートと軽いハグぐらいはする。ただし仲の良い者同士の話で、秋は佐竹葵らしい子とハグをした記憶はない。
「佐竹さん?どちら様かしらん?E組だと移動教室でも一緒にならないし……」
秋のクラスは一年B組、移動教室で一緒になる可能性があるのはA組からC組まで、E組の佐竹と重なることはない。
「バスケ部にもいなかったよね。仮入部だけで辞めた子かな?でも多分違うな」
秋は先日までバスケ部だった。冬休み明けに退部届を出したため現在は帰宅部だが佐竹がいた記憶はない。
「あ――もうわからないよ!佐竹さん、ど、どうして私のこと好きなの――?あ――――――ぬぉおおおおおおおおお―――――うきゃ――――!まぁいっか……転ギョニでも見ようっと!」
悩める秋はベットの上で、奇声を発しながらゴロゴロ転げ回り最後に抱き枕の王様ペンギン、二階堂君に体当たりをかました後、むくりと起き上がりリモコンを操作する。
転ギョニは『転生したら魚肉ソーセージでした。でもでも私は幸せです!あべしっ!』の略、半年前に放送されていた深夜アニメで秋のお気に入り、もう何周も見ているので台詞は全部覚えている。
パリパリ……パリパリ……パリパリ……
ベットの上でコンソメパンチ味のポテチを食べながら、魚の死んだような目で転ギョニを見る秋
「あ……かい~~」
ポテチの油が手についたまま今度は横っ腹をボリボリかき今度は恍惚とした表情を浮かべる。その姿にイケメンJKの面影はない。
「ふぃ~気持ちいいにゃ……おっと角質が駄目になっちゃう。そういえばお風呂上がりの保湿クリーム塗ってなかったにゃ」
女子のケアは忙しい、髪、肌、顔、腕、足、etcetcあれこれやっているとあっという間に時間が過ぎる。
「ついでに柔軟もしておかないと……部活やめたし――太らないようにポテチほどほどしよっと」
結局転ギョニはほとんど見ておらずBGM状態、落ち着きがないのは言うまでもなくラブレターを気にしているから。
この後も突然勉強始めたり、積んでた漫画を読んだりと秋はやることを次々と変えた。
そして11時が近づいたころ、決心がついたらしくスマホを取り出し佐竹にLIMEで連絡した。
『こんばんは野川です。お手紙ありがとう。月曜日の昼休み話せないかな? 無理なら時間を合わせます』
秋が送ったメッセージに既読が付いた20分後、佐竹から返事が届いた。
――ピンポーン!
『はい。大丈夫です。それでは昼休み』
佐竹からの返事には絵文字もスタンプも付いていない。
ラブレターの感じから冗談でやっているとは思えない。だからと言ってLIMEで探りを入れられる雰囲気でもなかった。
秋はその夜、一睡もできなかった。
……ラブレター書いたことないです(笑)
お越しいただきありがとうございます。
お時間があるときに、いいね、評価、感想、誤字修正などを頂ければ幸いです。