♡3 野川秋と宮姫純恋
本作品は不定期更新です。
世界史の授業後、野川秋は所要を済ませ教室に戻ると隣の席で、眼鏡の黒髪ロング少女がつまらなそうな顔で勉強していた。
彼女の名前は宮姫純恋、野川秋は彼女の事を親友だと思っている。
「やっほースミちゃん、アタチ秋、あーそーぼ」
「やだ!」
「やっほースミちゃん、アタチ秋、あーそーぼ」
「やだって言ってるだろ!」
「つれない事言うなよ~友達だろ~親友だろ~世界平和のために釘バット持ったヤンキー500人と戦った仲だろ~」
「お前と一緒にヤンキー500人と戦ったことはない!変な武勇伝捏造すんな!」
「にゃふん~友達と親友のところは否定しないのね~」
「……ったく、うるせーやつだな。なんか用か秋?」
純恋は面倒くさそうに秋に答えた。秋は休み時間の度に純恋に絡んでくる。嫌いじゃないが勉強の邪魔をするので、少々うんざりしていた。
「ん~用は得にない、フローラル空間から愛しのスミちゃんの下に馳せ参じただけでござります~!」
「お前はどっかの武将か、トイレから戻ってきただけだろ、よくわからんオブラートで包むな!」
「流石スミちゃん、私のことを分かっている、アタチのこと大好きなのね。わかったよ嫁は君に決めた!スミちゃんゲットだぜ!」
「悪いけどパス、アタシ好きな人がいるから……」
「ガーン!!!!!!!」
(こうして私、野川秋は宮姫純恋にあっさりフラれ恋は終わった。普段はイケメンって呼ばれてるけどカッコいいところなんてあった? 世界史の授業中にブツブツ能書きたれて、よだれ白目で寝て、あげくトイレに行っただけの気がする。ねぇイケメンって何? 主人公って何? 恋って何? 多分私はそれを知りたくて生きているのだろう、でももう知ることもない、失恋したし、これで私の話は終わりなのだから……)
~イケメンJKのひとりゴト 完~
……
…………
………………
「ちょ待てよ~スミやん」
「なんだよ?秋、うるせーな」
「好きな女が別にいるとは聞いてないぜ? アタチの事は遊びだったの?」
「好きな相手は女じゃないし、秋と遊んだ憶えもない!」
「酷いわ……男なんて皆そう、都合の良い時だけ、いらなくなったらポイ、ふふっ……いいのよ、この長い髪を切り全国津々浦々私より強いヤツに会いに行くツアーに旅立つわ! ヒャッハー!」
「はぁ……アタシ男じゃね~女だし、あと秋、元々ベリーショートだろ、お前より強いヤツがいるか知らんけど、お前より変なヤツはそうはいないから」
「ぐはっ……切れ味抜群のツッコミ、眼鏡っこ巨乳クラス委員長タイプSSRは伊達じゃない、さてはニュータイプ?」
「お前本当に16歳か? あとアタシの属性長くない? それより秋、お前の妄言で言い忘れてたけど、さっき客が来て机に手紙を入れていったぞ」
秋の机の中の一番上に若草色の綺麗な封筒が置いてあった。封筒には少女が記したと思われる柔らかく綺麗な字で「野川秋さんへ」と記されていた。
秋は先ほどまでと変わらず笑みを湛えている。ただその瞳はどこか悲しそうにだった。
「ありがとうスミ、確認する」
「お前大変だな……大丈夫か?」
「うん、でも、ちょっと気が重いかな……友達になりたいとか、帰りに遊びに行きませんかとかなら良いんだけどね」
野川秋にその日、恋文を受け取った。
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