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♡22 眠れない夜

野川秋(のがわあき)(16) 高一 女子高に通うイケメン女子、文武両道の秀才だが超絶マイペースにして隠れオタ


宮姫純恋(みやみめすみれ) スミ(16) 高一 秋のクラスメイトで親友、妥協なきツッコみマシーン、すばらし()お山の持ち主


佐竹葵(さたけあおい)(16) 高一 秋たちとは別のクラスの子、先日秋にラブレターを渡した。純恋曰く、すげーかわいい


浅羽陽菜あさばひな(17) 高二 純恋のバイト先の先輩、学校は別、髪型が変? いい仕事します!


※本作品は不定期更新です。また登場する組織はフィクションです。

(神様……ワタシは何か悪いことをしたでしょうか……全く眠れないのですが)


 佐竹葵さたけあおいは天を仰ぐ。

 

 彼女は今とても柔らかく反発力があり「ぷるるん」とするもの、具体的には宮姫純恋の胸が顔にぐいぐい押しけられている。

 

 純恋は睡眠時、どうやら抱き癖があるらしい。


(く、苦しいし、なんともエロい)

 

 純恋の口からたまに漏れる「やん…」とか「ダメ」とか「あん…」がいちいちなまめかしい

 

 葵の家に急遽泊まることになった純恋は当然お泊りの準備などしてきておらず、葵が貸したパジャマの下はナイトブラもなければキャミソールでもない。


 要するに何もつけていない。

 

 薄い布越しのその感触は生々しく、形から先端の位置まで全部分かってしまう。

 

(……これは、メロンどころか大玉スイカですね)

 

 困ったことに病人の葵に抱きついて寝る不届き者がもう一人いる。

 

「むにゃむにゃ……もう食べれないにゃ」


 背中越しに葵に抱きつく野川秋のがわあき、もにょもにょ動かす口から早くもよだれが出ている。

 

 こちらもルームウェアの下は何も付けていないが純恋と比べるとかなりささやかなものを葵は背中に感じた。


(秋ちゃん……かわいい! リアル天使! 好き! 大好き! ちょっと宮姫さん離してください! 秋ちゃんの寝顔見させて!) 


 声無き叫びは夢の中の純恋に届かない、むしろ抱きつく力がより強くなっている気がする。


(ああ神様、ワタシは今天国と地獄が同時にいるように思えます

 ……それともワタシは高熱の末に昨晩天寿を全うし、ハーレム系主人公に転生したのでしょうか)


 もちろんそんなことはない。


 ここは葵の家で、なおかつ葵の自室であり一緒に床に就くふたりは高校の同級生


 たまたま一人は学校でやれスパダリだの、やれイケメンなどと云われ廊下を歩くだけで羨望の眼差しを向けられる最強のモテ女で、もう一人はボンドガールを彷彿させるグラマラスな少女だということ


 ただそれだけである。


 それだけなのだが全然普通の状況ではない。


 まさに両手に花、それも超特大な花がふたつ


 秋と純恋にがっつり抱きつかれた全く動くことができない。


 葵は現在も調子は完全に戻ったわけではなく、微熱は続いている。


 ただし本当に調子が悪かったのは学校を早退した前日であり、すでにピークは過ぎている


 早退後、家のそばの内科で診察を受け、早めに対処したのが良かったようだ。


 今日学校を欠席したのも周囲への感染予防と念のためであり、無理をすれば登校することも可能だった。


 心配した秋が家まで看病に来たことは完全に想定外、嬉しい反面、困惑した。


 ただ秋が来ると連絡があってから、到着までには十分な時間があったので、部屋を片すこともできたし、前日は控えたシャワーも浴びることができた。


 万全とは云えないまでも、ある程度態勢整えてから秋を迎えることができた。


 体調が悪い時はどうしても弱気になりがちだが、好きな人に逢えたことで葵の心はすぐに全快した。


 わざわざ来てもらったのに、体調が良さそうにしているのも何となく申し訳ないので調子の悪いをふりをしたところ、母性本能が目覚めたのだろうか、秋は葵のために過保護とも云えるくらい献身的な看病を始めた。  


 買ってきたプリンを食べさせてくれるし、調子が悪いと言えば手を握ってくれる。あげくトイレにまでついてこようとする。


 さすがにそれは断ったが……


 とにかく無限に葵を甘やかしてくれる。


 葵のとって人生の絶頂ともいうべきパラダイスタイムだった。


 しかも夕暮れ時、一人にするのは心配だからと泊まっていくと言い出す。


 秋とふたりのだけの濃密な夜……


 佐竹葵の大勝利は目前だった。


 しかし幸せは長続きしない、赤き果実を貪る前に楽園から追放される。


 秋のことを心配し、純恋が飛んできた。


 もちろんこれも想定外だが、なってしまったものは仕方ない。


 むしろチャンスととらえ利用しない手はない。


 葵の時間は限られているのだ。


 秋との関係を永続的絶対的なものにするために、あまり猶予がない。


 そのため矢継ぎ早に次の手を打つことにした。


 体調が悪いと理由を付けダイニングに秋と純恋のふたりを残し、自室で休むふりをしてドアの隙間からふたりのやりとりを盗み聞き、いや見守った。


 秋に逢うため駆けつけてきたモチベーションの高い純恋と秋をふたりきりにすることはもちろんリスクがあるし、自ら仕向けたとしても好きな人が恋敵と話をしている姿を見るのは辛い。


 だが背に腹は代えられない。


 心の痛みに必死に耐える。


 互いの想いをぶつけ合い良い雰囲気になりそうだった秋と純恋だが、秋が「純恋は友達」と線を引くことで、純恋はそれ以上踏み込めなくなってしまった。


 一見、恋敵の純恋の停滞は葵からすれば悪いことではないように思える。


 しかし葵がしたためる未来図を描くためには、純恋には「ただの友達」より深いところ進んでもらわなければならない。


(……まだ足りないみたいですね


 とはいえ、どうしましょうか?)


 葵の中で複雑な感情と思惑が渦巻いていた。


◇◇◇◇


 純恋がお風呂から上がった後、ふたりは少し話し秋は葵が心配だからベッドの隣で寝ると言い出した。


 すると純恋も葵の部屋で寝るという。 

  

 どうやら純恋は秋と葵をふたりきりにしたくないらしい。


(……まぁ今の宮姫さんならそう言いますよね)


 ふたりが部屋に入ってくる前に慌ててベッドに潜りこむ葵、部屋に入ってところで起きたふりをした。


 自分と同じ部屋で寝ることで秋と純恋に風邪をうつすのは忍びないので一度は断ろうとしたが、ダイニングで秋と純恋がふたりきりで眠る。


 なんだかんだ言っても真面目な秋と純恋のふたりが間違いなど起きない事は分かっている。


 だかどうしても「秋と純恋がふたりで眠る」が葵には許容できない。


 結局、三人で同じ部屋で寝る事を受け入れ、どうやって寝るか決めることにした。 


 まず純恋案は、葵がベッドでそのまま寝る、秋と純恋はワンセットしかない来客用敷布団で一緒に寝るというもの、これは葵が反対した。

 

 続いて葵案、葵と秋がベッド、純恋が来客用敷布団で一人寝る。こちらも純恋が当然のように反対した。


 最後に秋案は、敷布団が大きめなので三人で川の字になり一緒に寝るといったもの。


 さすがに三人だと布団が狭いように思えたが、純恋も葵も秋とふたりきりの状況を作れない、痛み分けの状況となる、かくして純恋、葵の利害の一致によりこの案が採用された。


 寝る位置は真ん中を一番小柄な葵にして秋と純恋が両サイドとなった。


 恋のライバルと愛しい相手が一つの布団で眠る。


 緊張すべき状況のはずなのに、秋も純恋も十分も経たないうちにさっさと寝落ちした。  


 そして夢の世界に旅立ったふたりを横目に葵は一人とり残され現在に至る。

     

(さて、どうしたものでしょうか、この現状も含めて……)


 相変わらずふたりに抱きつかれているため葵はほとんど動けない。


「むにゃむにゃ……弾幕薄いよ、どーなってるにゃ~」


「もう、いゃあん……くふぅん♡」


 片方から厨二的な寝言が、もう片方からは檄エロボイスが聞こえてくる。


(まったく……ふたりともこの状況でよく熟睡できますね)


 ふたりとも葵から離れる気配がない。


 まるで大事なものを守る様にしっかり包んでくる。


(……でも悪くないかもしれませんね。


 誰かと一緒に寝るのなんていつ以来でしょうか……)


 いつも孤独だった少女は心にとても温かいものを感じている


 そして彼女に抱きつくふたりのやっかいものを見ながら、嬉しく微笑む…… 


「おやすみなさい秋ちゃん、宮姫さん」


 やすらぎを感じながら葵はゆっくりと目を閉じる……

お越しいただき誠にありがとうございます。


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― 新着の感想 ―
[良い点]  今回はサービス回ですね♡  大玉スイカ……。  小ぶりはわかりますので(え?)、スイカを体験してみたい。笑  折衷案ですよね。しょうがないです。うん。  人肌はあったかいし、なんだか…
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