♡18 本当のこと
野川秋(16) 高一 女子高に通うイケメン女子、文武両道の秀才だが超絶マイペースにして隠れオタ
宮姫純恋 スミ(16) 高一 秋のクラスメイトで親友、妥協なきツッコみマシーン、すばらしEお山の持ち主
佐竹葵(16) 高一 秋たちとは別のクラスの子、先日秋にラブレターを渡した。純恋曰く、すげーかわいい
浅羽陽菜(17) 高二 純恋のバイト先の先輩、学校は別、髪型が変?
※本作品は不定期更新です。また登場する組織はフィクションです。
バイト先のオフィスの一角で浅羽陽菜は宮姫純恋の話を聞いている。
かわいい後輩の役に立ちたい、ついでに他人の恋路は面白そうな話なので興味はある。
そんなノリで聞き始めたものの、この後、陽菜は深いため息をつくことになる。
「友達をAとして、告白した方をSとします。
AもSも女の子でAは私と仲のいい友達、
Sはクラスが違うけど何度か話した事があります。
知人ですかね、そんなAとSが急に付き合うことになって」
「ふたりとも知ってる子なら純恋ちゃんからするとびっくりするわね」
「そうなんですよ。
うちの学校はご存知の通り女子高なので
たまにですが女子同士の恋の噂があります。
実際に友達より近いな?
って感じる子たちもいますけど
深追いしないのが校内の暗黙ルールですね
Aはモテるから何度か在校生に告白されるてるんですけど全部断ってました」
「凄いわね……そのAちゃん、そんな子って本当にいるんだね」
「顔も頭も良いし運動もできますからね、まさにイケメンですよ」
「そんなAちゃんに純恋ちゃんも恋をしてしまったと」
「違います! ただの仲のいい友達です!」
「そっかぁ、まぁ純恋ちゃんには気になる人が別にいるもんね」
「……そっちの話も後でさせてください、Aはカッコいいだけじゃなく
ちょっと大変なやつなんですよ、長い話になります」
………………
…………
……
Aは中学時代は全然モテなかったらしい
昔の写真を見せてもらったことがある
今と比べるとちょっと冴えない
Aの隣に映っている女子の方が輝いて見えた
でもAが全然ダメってほどでもなく
今より髪が長く女の子らしい雰囲気があるから
気になる男子がいても不思議じゃないかなって
アタシに男子の好みはよくわからないけど
そんなAが高校に入った途端、モテ出したから最初は戸惑ったらしい
確かに大変そうだとは思う
告白されることは嬉しいかもしれない
けど断るのは気持ちいいことじゃない
むしろ辛いこと
でもフラれる方はもっと辛い
告白したことが誰かにバレれば
変な噂が立つかもしれないし
そんなリスクまで背負って
勇気を出して告白する
でもやっぱりフラれてしまう
覚悟の上の告白だと思う
傷つくと思う
フラれたことは多分一生忘れない
もちろんAにだって相手を選ぶ権利はある
だからフった、フラれたは仕方ない
でもアタシはなんとなく面白くないと思った
告白されるだけでも凄いことなのに
高校の間は誰とも付き合わない
それだけを告げてAは相手をフる
我がままとは言わないが、自分ルールだけで終わらせる
事務的にフラれる
恋愛対象として考慮したように感じない
そんなの納得できるか?
まだ他に好きな人がいるとか、既に誰かと付き合っているとかなら
自分の想いが他の想いに敗れたなら諦めがつくと思う
アタシならそう思う
彩櫻祭の前日のこと
アタシとAは他のクラスメイトが帰宅した後もクラスの出し物の練習をしていた
そして購買の自販機で買ったジュースを片手にふたりだけの慰労会をした
思い切って聞いてみた
Aが恋愛をしない理由を
普段ならAは喋らなかったかもしれない
でも祭りの前の高揚感とか疲れもあったのか
Aは話してくれた
その答えは意外なものだった
――私ね、中学の頃は好きな人がいたの
――ううん幼なじみだから中学より前から好きだったと思う
――告白できずに一年また一年と過ごしているうちに
――彼に好きな人ができちゃって
――相手は当時私の親友だった女の子で
――気づいたら私と彼女の間が変な感じになって
――幼なじみの彼とも微妙な空気になって
――それっきり
――何もできなかった
――彼に告白することも
――フラれてることも
――彼女の気持ちに寄り添うことも
――何も
――本当はね、さっさと自分の気持ちに決着をつけて
――ふたりの恋を応援したかったの
――私にとって大切な人たちだからね
――でもできなかった
――今もその時が終わらないの
――失恋のキャンセル状態みたいな感じ
――だから次の恋に進めない
――女子高に行けば、前に進めない自分を忘れて他の事に集中できると思ってた
――でもなかなか難しいね
――彼と彼女は地元の高校に通ってるよ
――もう会うこともできないけどね
Aは寂しそうに笑っていた
アタシはただそんなAを見つめる事しかできなかった
◇◇◇◇
純恋はその後、秋が葵の告白された日に秋とふたりで新宿で遊んだこと、その日以降なんとなく秋との関係がおかしいことを陽菜に包み隠さず話した。
陽菜は静かに純恋の話を聞いていた。
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