♡12 女の子のあれこれ事情
野川秋 (16) 高一 女子高に通うイケメン女子、文武両道の秀才だが超絶マイペースにして隠れオタ
宮姫純恋 スミ (16) 高一 秋のクラスメイトで親友、妥協なきツッコみマシーン、すばらしEお山の持ち主
佐竹葵(16) 高一 秋たちとは別のクラスの子、先日秋にラブレターを渡した。純恋曰く、すげーかわいい
※本作品は不定期更新です。
(あぁ…… 何でこんなことになっているのだろう…… )
宮姫純恋は戸惑っていた。今いる場所はどうも落ち付けない。
新宿メロード2F、女性向けのファンション、小物、雑貨店が立ち並ぶテナントフロアの一角に純恋はいる。何度か一人で来たこともあるので知らない場所ではない。
しかし中には普段入らない店も当然ある。彼女が今いるところが正にそれ
店の名前は 『GreenRemmon』
お手頃価格でかわいい物からセクシーな物まで並ぶ若い女性に人気のランジェリーショップ
放課後、親友野川秋に付き合ったところ、いきなり想定外な店に連れてこられた。
「スミ…… ちゃんといる?」
「い、いるぞ」
「もうちょっと待っててね」
秋は店舗の一番奥、外からは絶対見えない位置に試着室はある。
店員による身体の採寸を終えた秋は、試着を行っているところだった。
純恋は試着室へと続く通路の手前で秋を待っている。周りには当然のように沢山のランジェリーで溢れている。
純恋のそばには高校生よりも大人向けの物が多く陳列されていた。
(うわっ生地の範囲狭くないか…… スケスケだし隠さないといけないところが全然隠れてない、こんなの誰にも見せられねーよ! あ、違うか…… 見せるために着るのか恋人に、アタシなら…… って何考えてんだ!?)
途中まで考えたところで考えるのを止め、振り払うように純恋は首を大きく振った。この空間にいるとどうも変な事を考えてしまう。
ランジェリーの他にも店内にはパジャマや部屋着、小物なども置いてあった。そちらを見る事で純恋は何とか気を紛らわそうとした。
(……秋、早く終わらせろよ)
女子同士で下着を買いに来ること自体に問題はない、洋服を買うのと変わらないはず、きっとこれからもこんな事があるかもしれない。
頭では分かっている。それでも慣れないものはどうしても慣れない。友人がちょっと先で裸になっていると思うとどうにも緊張する。
それに相手が……
「お連れ様、とてもかわいらしい方ですね。お友達? それとも彼女さん?」
「え、と、友達です!」
ローポニーにしっかりメイクをしたおしゃれ店員に突然声をかけられ、純恋は声が上ずってしまった。
「クスクス…… そうですか。ゆっくりしていってくださいね」
「はっはぁい」
(くぅうう…… アタシからかわれたのかぁ?)
湯気が出るくらい純恋の顔が真っ赤になった。
(……はぁ、もう疲れた帰りたい)
早くこの場を去りたい。純恋の頭の中はそれだけとなり、溜まっていたものを吐き出すようにため息をついた。
「ねぇスミ…… いる?」
「いるよ、どうかしたか?」
「ごめん ……ちょっと見てほしくて」
グレーのカーテンがもぞもぞと動き試着室の中から秋がひょっこり顔だけ出した。
「わかった。ちょっと待て」
「うん……」
純恋は試着室の前に移動するとゆっくりとカーテンを開けた。
試着はブラだけ、下は制服のスカートは履いたまま、純恋は視線は下から上とゆっくり向けていく
純恋は秋を見る。
細すぎる腰回り
余分な肉が全くない白いお腹
やや小ぶりだが形のいい胸は、かわいい花柄のレースのついた薄い青のブラに自然な丸みで形よく収まり、ほっそりとした肩のラインへと続く
秋は緊張した面持ちをしている。
「ど、どうかな?」
「よく似合ってし、その…… かわいいと思う」
「良かった…… 自分じゃよくわからなくて、変なとこない?」
「大丈夫 肌がとてもきれいだし、素敵だ」
「うぇえ…… さ、さすがにそれはちょっと照れるかも」
秋は両腕で胸を隠すように胸を組んで少し屈んだ。
「ご、ごめん、変な意味じゃないから」
「わかってるよ…… わかってる。平気、あはは…… 私が頼んだのに恥ずかしがっちゃ駄目だよね、こっちこそごめんスミ」
恥ずかしいという感情は伝播する、純恋も慌てて目を背け後ろを向く。
「謝られるようなことじゃねーよ」
「うん ……でもちょっとだけね、嬉しいかも」
秋はにっこり微笑む。
(くそ…… こいつかわいい、普段の見た目はともかく、中身はとことん女の子だし、胸のことを気にしてるみたいだけど、これはあれだ、小さいというより……)
無駄なところがない。均整のとれた身体は、まるで野生のネコ科動物のように速く走り、高く飛ぶのに最適な状態を維持している。それゆえ女の子特有の丸みより、しなやかさが際立ち、動くのに邪魔になる部位は控えめ、そんな感じだった。
(さすが元バスケ部、中学時代は県選抜だったらしいし…… うちの学校のバスケ部でもかなり期待されてたみたいだけど、どうしてこいつ急に辞めたんだろ?)
純恋は秋の鍛えられた身体に感心するとともに、秋の退部理由について疑問を感じた。
学年を問わない人気者が急に退部したことは学院内でもちょっとしたニュースになっていた。
(退部の件もどこかで聞きたいところだけど、今日は違うな…… さてと)
「秋、もうアタシが見るの大丈夫だよね? 店員さん呼ぼうか?」
「ううん、中に呼び出しボタンがあるから大丈夫」
「そうか、わかった」
純恋は秋が買い物が終わるのを引き続き待つことにした。
この後、秋は純恋が見たブルーのランジェリーの他にホワイトとピンクのノンワイヤーブラとショーツのセットを合わせて三セットを購入した。
手持ち無沙汰の純恋も待っている間に、紺のワンピースボアの部屋着を一枚購入し、二人は店を後にした。
◇◇◇◇
買い物が終わった後、連絡橋になっているメロード二階のデッキを通り外に出て、新宿サザンテラス方面に移動する際、純恋は思い切って聞いてみた。
「おい…… なんで急に下着を買ったんだよ?」
「しぃ―― スミ、声が大きい。運動部だと動きやすさとか透けないとかが優先で地味なのしか持ってなかったから、かわいいのも欲しいと思って、だけど一人で買いに来るのは勇気がいるからスミに一緒に来てほしかったの」
「なるほど…… それはわかる」
純恋も体育の日用や、プライベート用などで使い分けている。
またランジェリーショップはちょっと見てるだけで店員が寄ってきたり、どこの店も徹底してかわいい空間だったりするから一人で入るのは敷居が高い。
「でしょ、それに……」
「それに?」
・・・
「私の初めてはスミが良かったから」
「ちょ、お前何言ってるだよ!?」
「ん? 初めてお店に行くって意味だよ。あれれ…… スミちゃんは今、何考えたのかなにゃあ? 教えてほしいにゃ」
秋がいたずらっぽく笑った目で純恋を見ている。
「お、お前、今の絶対わざとだろ?」
「にししし、さぁどうでしょう、それより何を考えたのか早く教えて」
「知るか―― 次は西横ハンズだったな、アタシ先行くぞ!」
「え―― ちょっと待ってよスミ」
ずんずん進む純恋を、秋は慌てて追いかける。
日は既に沈んでおり、外は暗闇と芯から冷える寒さが辺りに広がっていた。
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