もう一人の私
今日も、靴の中に、給食の残りが流し込まれている。
今日の給食のメニューはシチュー。
まっ白いはずなのに、灰色に見えるのは気のせいか。
でももうそんなの慣れてしまった。
そう、慣れてしまった。
私は醜いアヒルの子。
今はクラスの端っこにしかいられないけど、いつかは必ず表舞台に立ってやる。
そんな私の唯一の楽しみ。
それは『アバター』だった。
携帯の中で綺麗な顔をして、自由に服を着せかえて、全く知らない他人の日記に遊びに行く。
まさに理想の姿。
仮想世界の私は絶世の美女。
もう、現実の世界には興味は無い。
私には、『アバター』がある。
今日もコンビニでネット上のお金を買う。
今日はチャイナに決めちゃいましょうか。
何千円もするネット上のお金を買いながら、理想の私を想像する。
男から一日に何通もメールが来る。
もちろん相手も自分の理想を築いているブ男だろう。
それでもいいの。現実の姿なんかに興味ないから。
家に帰ると、早速パスワードを入力して、さっきのを所持金に加える。
これで三万円貯まった。
一気におしゃれアイテムでも買おうかしら。
一番高いキラキラのチャイナ服と扇子を買い、早速着替える。
そして、日記で発表会。
『着替えたよ~。
どうかにゃ?』
ネット上の私は絶世の美女。
猫みたいに甘えた口調で日記を書くと、すぐにコメントが返ってくる。
『可愛い』
『萌え~』
『抱きたい』
私の本当の姿も知らないで。
こんな人たちに囲まれて、私の地位はもっと上がる。
そんな生活が、何年も続いた。