ジャケットの行方
リュウイチは召喚された理由を聞く前に寝落ちした
目を覚ますと自分は布団に包まれた状態で寝ていた
どうやらあのままスーツ姿で寝てしまったらしい
部屋は外からの光で明るくなっていて
日はまだ低くちょっと遅い朝ぐらいのようだ
周りを見るとこの部屋にも本棚があり他に何か道具らしい物も置いてあった
この部屋の物はどれも整備されているのでどうやら普段使いされている物が置かれている部屋のようだ
身体を起こし顔を洗う為に洗面所を探す
木造でかなり古い家の様だがそれなりに広く
キッチンにトイレに風呂が整備されていて生活に困る事はなさそうだ
洗面所で顔を洗いキッチンを覗くと
テーブルの上には一人分らしい食事が置いてあった
目玉焼きにハムに食パンにサラダ
あとは牛乳でもあれば豪華な朝食と言えるだろう
もしかしたら自分の分を用意してくれたのかと思ったが
それでも勝手に食べる訳にはいかないだろう
まずはアイカを探すことにした
キッチンから廊下に出て目の前のドアを開ける
そこは客間なのか大きなテーブルが一つあり
その隣でアイカが倒れて、いや
すうすうと小さな寝息をたてて寝ていた
眼鏡は寝ている間に外れてしまったのか床に落ち
おそらく読んでいたのであろうと思われる本が彼女の隣に落ちていた
銃も今は持っていないようだった
眼鏡がはずれ陽気な日差しが差す部屋ですやすやと眠ってる彼女は
昨日の夜の神秘的で優しいイメージとは違い
ただの可愛らしい女の子のようだった
「おじいちゃん・・・」
祖父がいるのか
それともいたのか
ぼそりとそんな寝言が聞こえてきた
そんな可愛らしい寝顔とは対照的に
露出したお腹と足はなかなか目に毒だし
少し寒そうに見えた
「とりあえずこれをかけておくか」
スーツのジャケットを脱いで寝ているアイカのお腹にかけた
あとは自分が使ってた布団でも持ってくるかと
自分の起きた部屋に戻った
部屋に戻り布団を持って戻るとアイカがジャケットを抱きしめる形で寝ていたので
そのままそっと掛け布団をかけた
彼女が起きるまでの暇潰しになるかなとアイカの隣に落ちている本を手に取る
表紙には「ティムさんちの今日のごはん」と書かれていた
うん、これなら読んでも問題ないだろうと思いペラペラとページをめくる
中には昨日頂いたハンバーグの作り方から鶏肉を使った料理
魚料理に鍋料理まで色々な料理のレシピが書いてあった
部屋は日当たりが良く自分もまた寝てしまいそうだ
うとうととしながら本を読んでいると
もそもそとアイカが身体を起こしてきた
「おはよー」
起きたアイカの言葉に
「おはよう」
と返す
「さっきをかんじないからねちゃってたー」
まだ眠そうな顔で彼女は答えた
殺気とかを感じる生活をしているのか
そんなツッコミを心の中でした
「あ、朝ご飯ならできてるよー」
寝ぼけて抱きかかえてたジャケットをそのまま羽織るアイカ
彼女のラフな格好に一回り大きい男物の黒いジャケットはなかなか違和感があるが
まあかわいいから良いかと黙っていた