ハンバーグとあたたかい味噌汁
眼鏡っ娘に召喚されたので後を付いていった
靴の無い状態で召喚された為にちょっと足が痛い
玄関に上がる前に軽く靴下を叩き家に上がる
ついて行くのは良いのだがこれだけは聞いておきたかった
「俺、あなたに召喚されたんだよね」
アイカは少し考えた様子を見せた後
「そうよ、私があなたをこの世界に召喚したの」
「理由は?」
そう問い詰めるがアイカは
「ん・・・理由はまた後で話すね」
とだけ答えた
何だか答えをはぐらかされた気がする
少し歩くとキッチンに案内された
テーブルにはハンバーグにライスにサラダにお新香、
それとマグカップには味噌汁らしい液体が温かそうな湯気を出した状態で入っている
二人分の食事だろうか
それらが2組用意されていた
それとなぜか箸とフォークとナイフとスプーンが用意されていた
「どうぞ」
アイカに言われて手前の椅子に座る
「じゃあ、いただきます」
そう言うとアイカは両手を合わせお辞儀をして
マグカップの液体を飲み始めた
少し迷いつつ
「えっと、これ頂いていいの?」
アイカに、そして自分に問うかのように聞いた
「御口に合わなそうですか?もしかして食事は必要なかったですか?」
アイカが少し困ったような表情で聞き返した
眼鏡っ娘にこんな食事を用意されて
「怪しいから食べない」
などと答える男がいるだろうか
もう少し理由を言えば
相手はすでに同じ料理に口を付けて食べ始めている
銃を所持し魔法が使える人間に悪意があるなら
もっと色々な対応があるだろう
呼び出された理由は聞きたいがあたたかそうな食事を前に
身体が食事をしながらでよいだろうと結論を出した
「いただきます」
手を合わせお辞儀をしたあと
少しだけ不安を持ちながらマグカップを手に取り口に運ぶ
中の液体を飲むとやっぱり味が味噌汁だ
あたたかくてしょっぱい
そのしょっぱさが更に水分を求めた
喉が潤うと次は食べ物が欲しくなる
あたたかくてやわらかいご飯、箸で指すと少し肉汁の出るハンバーグ
きれいに添えられたサラダ、口直しにお新香をつまむ
「おいしい」
ぽろりと口から素直な感想が出た
「それは良かった」
つぶやきが聞こえたのかアイカが答えた
その表情は安心したような少し喜んでるような表情だった
その顔を見たら何だかお腹以外もあたたかくなってきた気がした
あたたかい部屋にあたたかい食事
誰かとこんな感じで食事をするのは何年ぶりだろう
そんな事を考えていたら
なんだか泣きそうになってきた
昼間は仕事で張り詰め夜遅くに帰る
一人の部屋で食事をして酒を呑み寝る
起きて仕事に向かう日々
色々考えるべき事は沢山あるはずなのに今はただただ安堵に包まれていた
「ありがとう」
完全に気が抜けた自分の口からふと感謝の言葉が出た
今度は不意を突かれたのかアイカはキョトンとした顔をしてた
無意識にでた感謝の言葉に気恥ずかしさが出てきた
お腹がいっぱいになりすっかり緊張が解けてしまったのか
今度は強烈な睡魔が襲ってきた
手足に力が入らなくなりまぶたは重くなりアイカの顔もよく見えなくなってきた
「喜んでもらえたようなら良かった、たしか・・・
アイカが何かを話し始めた気がしたが
もう声は聞こえず顔も見えない
朦朧とした意識の中で
「これは夢かな、夢ならもう少し、もう少し・・・
そう呟いて自分は意識を無くしていた。