妄想と現実
頭で考えるだけで、文字入力や操作のできるvr端末。
想ったことをすべて実行してしまうために、実行するか否かは結局物理的なボタンで選択することになった。
結局そのシステムは再構築され、別の方法で操作インターフェースが作り直され、この実験はプロトタイプの実験として破棄された。
その技術が、妄想と現実の区別がつかない人間に利用されることになるとは初め誰も考えていなかった。
重度の幻覚を見る患者に対してそれは利用される事になる。
現実と仮想現実、夢と現実を区別するときに“現実でない場合には、実行するか否かボタン入力をしなければならない”
それを覚えておく事で徐々に現実と非現実の区別を頭で理解できるようになった。
だがこれも悪用されることもある。この端末が使用者のデータを記録していたために、盗まれ違法改造されたそれは、ボタンでの入力が排除され、思ったことがすべて実行される幻覚を見るための装置として、一部の犯罪者に利用されることになった。
犯罪者はいう。
『だって変じゃないか、夢こそ何の縛りもうけるべきではない、思い描いたことすべてを実行できる幻覚なんて最高じゃないか』